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隣
言葉がなくても、距離が変わることがあります。
理由の分からないまま隣にいられる時間を、今回は書きました。
夕方のベンチに座る。
彼女はいつもと同じ位置に座って、鞄を膝に置いたまま動かない。
しばらくして、少しだけ体をずらす。
端を空けるでもなく、近づくでもない、中途半端な幅。
理由は分からないが、そこに座ってもいい気がした。
言葉は交わさないまま、距離だけが変わる。
電車が一本、通り過ぎる。
次の電車も、同じように音だけを残していく。
彼女は時々、ホームの時刻表を見ている。
乗るわけではないのに、時間を確認するように。
沈黙は続く。
けれど今日は、そこに居づらさがなかった。
ただ隣にいるだけで、ここにいていいと思える。
そんな感覚が、少しだけ当たり前に近づいていた。
立ち上がるタイミングは、また少しだけ重なった。
読んでくれてありがとうございます。
この章は、会話ではなく距離の変化を書いた回です。
隣にいることが自然になっていく、その途中の時間を描きました。




