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24.侵入者

読んで頂きありがとうございます。

この章から読まれた方は、是非【ユキア・サガ 航海① ネフシュタンの魔片 第一巻 第1章】から読んで頂けますと、幸甚です。

続きの方は★★★からとなります。

 銀の匙のオレ達が滞留している部屋に謎の男が侵入していた、

 時間はまだ夜の8時前のこと。

 ソッジョルノ(リビング)の開け放たれた高窓から、夜風が流れ込み、テンダ(カーテン)がはためく。

 男はその窓から侵入したのだ。

 夜闇から届いた涼風は、闘技場で激闘を勝ち抜いたオレの熱を、心地よく冷ましてくれる。

 「ロック! 久方振りでござる!

 一体レムスのどこに隠れていたのでござるか?

 ずっと所在を探していたでござるよ?」

 ザザは唐突な驚異に目をピッコロみたいに丸くして、自分の定位置に座る。

 それに続いてオレも自分のディヴァーノ(ソファー)に身を沈める。

 レイとキョウはカリーノの土産を台所に運び入れてから、自分達の定位置に腰かけた。

 が、キョウの妖美な双瞳は心なしか厳しい。

 ロックは「ん? お前等こそどこを探してたんだ?」こっちが訊きたいという声調で「オレは毎日闘技場の地下にいたぜ」

「そか。ロック元気そうで何より」ユキアはチュチュを腰の道具入れから出して、左膝の上に座らせた。

「色々大変らしいけど大丈夫なのか?

「ん?」ロックは左眉をあげてオレを観た。

「もうある程度情報収集はしてるって訳か。

 大丈夫さ。

 心配しなくてもいい」

「散々苦労して探したが」レイはキョウと顔を合わせて苦笑い。「まさか円形闘技場の地下に住んでいたとは……」

「ところでユキア」ロックは興味津々と面貌に書いて「その観たことのない翼の生えた生き物は、キョウと同じく幻獣なのか?

 だとしたらおめでとうと言うべきだが、何の幻獣なんだ?」

 ロックもオレが口寄せノ術を会得してないことを知っていた。

「や、オレが教えてもらいたいくらいなんだ」

 どう話せばいいかオレも困却している。

「突然、何の前触れもなく、オレの目の前に現れたんだから。

 名前はチュチュ。

 でも人語は話せないから幻獣きゃない。

 けど、人語を理解してるんだよな……」

 ロックは「そうなのか。珍しい話だな。

 呼びやすくて、覚えやすい名前だな。

 ユキアが名付けたのか?」と訊く。

「オレはロック。チュチュよろしくな」

 モノマキアの格東王は、頭を下げてから手を差し伸べた。

 その挨拶に、チュチュは尻尾を振ることで答え、ロックの掌に乗る。

 抱き上げられても尻尾を大きく振り、少し口を開け舌を見せている表情は、やっぱり笑っているとしか思えない。

「雌か。美人だなチュチュは」

 ロックは気持ちよさそうにチュチュの右足のに肉球を揉んでいる。

 キョウが警戒心を顕に「ロック、いつからここに妾達がいることを存じていたのでしょうか?」

 オレ達一行が、ナーヌス山から宿の戻る前にロックはこの部屋で待っていた。

 ということは、今夜よりも前にオレ達がいる場所を、ロックが知っていた。

 という事実を示している。

 では、なに故今に至るまで現れず、今夜訪問してきたのか?

 キョウはその点に疑心を抱いているのだと言外に匂わせている。

「第1回予選大会の日だ」ロックは悪びれることもなく答えた。

「我等の跡をつけたのか?」レイが、キッと睨む。

「そう怒るな」ロックは悠然と構えている。

「つけたのは俺じゃない。鳥人族を眸術で操った。

 腕利きの忍者達も空からの尾行には、さすがに気付けなかったようだな」

 黒蒼眼で眸術を駆使するロックを、皆知っていたから何も言い返せない。

「うん。全っ然気付けなかったよ」オレが、ガハハハッと笑ったら、レイが怒った。

「笑っている場合ではありませぬっ!」

 キョウはレイの主張に、如何にも、と言った体で首肯する。

「だけどさー、一本取られたって事実は認めるべきだろう」

 ロックに親指を立てて、オレはやっぱり笑い飛ばす。

「成程でござる」ザザも素直に感服している。「オイラももっと頭を使って、術の応用ができるようにならないと駄目でござるな」

「お前らも相変わらずだな」ロックも笑ったが、レイとキョウの怒気を感知したのか「そう怒るなって。

 オレの立場も考えてくれ。

 そもそもユキアが何故俺と闘おうとしているのか?

 その目的が不明だろう。

 それがはっきりしないから、まずはユキアの闘いを確り見せてもらった」

「それで?」と続きを促すキョウ。

「あー、今は分かってるよ」ロックは明るい声色で「モノマキアに出場したのは、俺に会う為の方便だろう。

 お前らがパークスの刺客なら、ユキアが堂々と闘う必要はないことに気付いた」

 ロックの推断は正しい。

 俺は心中で認めた。

 もしオレ達が刺客なら、モノマキアに出豹するなんてことは有り得ない。

 ロックが間違いなく現れる王者大会の日を待ち、オレと、レイ、ザザの3人で確実に仕留める作戦を取っていただろう。

 「だから、今日こうして会いに来たんだ」ロックは腹を摩り「お陰ではらぺこになったが」

 するとザザが、台所からカリーノ手作りの丸いパン、生ハムやサルスィチョ(ソーセージ)を持って来て卓子に並べ始める。キョウは漸く警戒を解いたようだ。

 自らの血盟者レイとその仲間達を守る為、キョウはロックの言動を厳しく精察していた。

 でも、その言葉に偽りはないと判断したのだろう。

 レイと共に、マーメリアータ(ジャム)や、飲み物、トゥルケット、取り皿を用意して運んできた。  

 ロックは無造作に丸いパンを手に取り、マーメリアータを塗る。

 ザザは、グリッシーニに生ハムを巻ってく。

 レイは、一同にトゥルケットを給仕した。

 オレは、ロックの結論を笑顔で認める。

「うん。ロックに会うには手っ取り早いしさ。

 それに、モノマキアで腕試ししたいとずっと思っていたから、丁度良かったんだ」

 オレが食事に手を伸ばさないことを、レイは気付いたらしい。

 何かおかしいという目顔で、オレを観ている。

 オレはサルスィッチャに手を伸ばしたが、チュチュを呼び寄せ手ずから食べさせた。

 レイは「ユキア様お疲れですか? どうかされましたか?」眉宇を顰め心配顔だ。

「ん? どーもしないよ」

 ロックはレイの問いかけとオレの答えを、気にする素振りも見せない。

「今のモノマキアには、油断しなければユキアに勝てる格闘士は1人もいない。

 俺が格闘士として闘っているくらいだからな。

 剣闘士の方も同じくらいの水準(レベル)だ。

 今の時代本物は、武人も術士も殆どが海か山か海軍、陸軍にいる。

 今日の決勝を棄権したカルターゴーの海将超人ハンニバルは正に海の武人だ

 楽しみにしていたんだがな」

「確かに」ザザが納得顔で「あやつは強いでござる。

 奴の闘いを観たでござるか?」

「オレは第2回予選大会の決勝しか観ない。

 対戦相手が誰になるのかがわかればそれでいい」

 ロックは否定したが「だが今回は、第1回予選大会からユキアの試合に限り観た。最後まで勝ち残るのは、確実だったからな」

 ハンニバルに対するレイの評価は高い。

「そうか、奴は海将なのか。

 海で常に闘っていることだろう。

 確かにあの男は強い。

 巨体の割にその動きは俊敏で、拳の骨折も奴の一撃の重さに拳の方が耐えられないからだ。

 まだ底を見せていない余裕があった」

「闘りたかったなぁー。おれもあいつは強いと思う」オレは残念だった。「一人でも多くの強者、猛者と闘いたかったのにぃー。

 でも、レントゥスは強かったよ。

 多分ロックと闘う度に、強くなっているんじゃないかな」

「その通りだ」ロックは認め何気なく話題を変える。「それより何かあったんだろ? 

 食いながら聞くから話してくれ」

「ゆっくり食べるといいよ。それにもう結果はもうわかっているから」

 オレの貌に暗影が過ぎった瞬間を、レイは見逃しtrなっようだ。

「まぁそうだろうな」ロックにはオレの言葉の意味するところが理解できているらしい。

「だがそう言わずに話してくれ。食ってるところをジーッと見られてちゃオレが落ち着かん。

 それにお互い情報を共有しておいた方がいいだろ?」

 オレの方を見抜きもせず、ロックは食事を続けた。

 腹が減ってたのは冗談ではなかったようで、ガツガツと荒々しく喰らう。

 淡々と話したロックだったが、オレの微妙な心の動きを繊細に捉えている風情だ。

 然し、何かを判断する時可能な限り己の感情を含めないよう、俺達は忍者として鍛えられている。

 時にそれが、非常に難しいことも何度となく経験していたが……。

「わかった。ありがとう」オレは心持ちを緋隻眼に滲ませ「すまない。あの時の約束は守れなかった。

 もう気付いているだろうけど、オレはまた国抜けしたんだ。

 レイとザザもオレを追跡する形で国抜けすることになって……」

 その経緯についてオレはロックに語って聞かせた。

 時折、レイとザザも口を挟む。

 国抜けしてから今日までの日々の、同様に2人の言葉も交え、ありのままに話した。

 話を聞いても、ロックは然もありなんという様相で、特別驚きはしなかった。

 が、寂莫とした目色でぽろりと一言詫びる。

「すまんな」と。

「や、謝る必要なんてないだろ」自分自身に言い聞かせながら言うオレ。

 レイとザザはまだ話が見ていない。

 オレとロックを交互に観ている。

 チュチュはオレの左膝の上で目を閉じている。

 オレの手をペロペロ舐めながら。

 キョウは少し俯き、物静かに成り行きを見守っている……という雰囲気。

「で、いくらなんだ?」とオレ。

「あー、保釈金だけで8億ドエルン。

 モノマキアに参戦して、3億8千万ドエルンは返済させた」

「もっと早く知ってたら、オレもその位持ってたのになぁー。

 でも、第1回予選大会の勝者報酬が全部で1.0000万ドエルン。

 優勝賞金2.000万ドエルン。

 第2回予選大会の出場者報酬が2.000万ドエルン。

 優勝者賞金3.000万ドエルン。

 合計8.000万ドエルンオレに協力させてくれないか?」

 オレは惜しげもなく申し入れた。

「何時返せるかわからないぞ?」とため息交じりのロック。

「うん。問題ない」自信満々にオレは「これからラガンガン稼ぐから。

 オレ達は海賊だから」 

 2人の会話を耳にして、レイとザザはオレがロックを仲間にすることは無理だと判断していることに気付いたのだろう。

 思いがけないロックの突然の来訪に少々動揺して、うっかり忘れていた肝心なことを思い出したらしい。

 そもそも、その為にロックを捜していたのではなかったか?

 ロックの人間性を考慮すれば、恋人とその家族の苦境を放り投げたりしないことに想到するのは難しくない。

 だからこそ、オレがモノマキアへの出場を決めたこともそれを思えば、当然の帰結。

 オレが、仲間の苦しい状況を無頓着で至れるわけがない。

 たとえ結果がわかっていても、ロックに会おうと考えていたに違いない、ということにも2人は思い至った面付きだ。

 2人はオレとロックにかけられる言葉を探して、悲し気な暗い空気を漂わせている。

 然し、2人よりも、もっともっとロックの方が辛そうだった。

 国抜けしてからも、危険は承知の上でオレとの結びつき、絆を立っていない。

 オレとの信頼関係は揺ぎ無く強いのだ。

 オレは、ロックの国抜け前に絆を持ち合っている。

 できることならともに海に出て、自分を頼りにするオレの力になってやりたいとロックは思ってくれているだろう。

 ロックが国抜けすることを、俺に打ち明けたあの日。

「耐え忍んでくれ。

 そして次の国主になって欲しい。

 その日まで俺は、ユキア、お前の片腕になれるよう、刻苦勉励、奮励努力して、(まつりごと)にも(いくさ)にも役に立つ者になる為、力をつけておく」

 と約束をして絆を待ちあったのだから。

 でもオレは今、ロックの苦難を少しでも軽くしてやりたいと思う。

 できることは何でもしてやりたい。

 方やロックも「オレも話しておこう。

 知っておいて欲しいこともある」国抜けしてからの日々を述懐した。

 新たな事実として、闘牛マンゾが離婚し、家族と距離を置いたのは、キョウの推量通り、元妻や娘たちを愛するが故の苦悶の選択だったこと。

 ロックはヴィオーラと婚約はしていないこと。

 マンゾは国を裏切るような男ではないこと。

 マンゾから極秘任務を命じられていたこと。

 等等本人の話だけあって真実が溢れていた。

 マンゾは、いつどんな災いが降りかかてくるかもしれない、そんな立場になってしまった自分の所為で、家族を犠牲にするより、、自由にしようと考えていたらしい。

 家族への愛情は人並み以上に深く、年に数回ひそかに会う日をいつも指折り楽しみにしていたという。

「不幸中の幸いで」ロックの貌が複雑に歪む「もし、マンゾが離婚してなかったらその家族の保釈は、どんなに金貨を積み上げても有り得ない。

 罪がなくとも、それこそモノマキアの王者大会で、公開死刑されていただろう」

 マンゾの先見の明が功を奏したと言える。

「ヴィオーラは恋人だが……」ロックは沈痛さに染まった聲で「マンゾの愛情や考え方を思うと、結婚の話はヴィオーラもしなかったし、俺にはユキアとの約束があるから丁度良かった。

 マンゾもヴィオーラも他の家族も、オレがパークスの人間だとは誰も知らない。

 オレは「オレの方がその約束を破ってしまった。

 オレがパークスの国主になることは、もう有り得ない。

 保釈金の問題を解決して、結婚すればいい」

 が、ロックはその言葉を無視(スルー)

「闘牛マンゾは神聖ロムルス皇国を囲む海原を他国海軍や海軍賊、海賊達から長年守護してきた海軍の、いやこの国の英雄だ。

 そんな男が、オレの知っているマンゾが、家族や仲間を裏切って、海帝に与するなど考えられない。

 あの事件には、必ず裏がある」

 言葉を紡ぐごとにロックの語勢は強くなる。

「当時マンゾは、海軍にはびこる金権体質的構造を真っ向から破壊しようとしていた。

 マンゾが家族から離れる決断をしたのは、それが最大の理由、要因だろう」

 ロックの推断に、一同点頭した。

「オレはマンゾの密命を受け、海軍内部の諜報活動をしていた。

 だからマンゾと別行動だった訳だが、このことも万が一を逆賭したが故だろう。

 マンゾの家族を守る為に……。

 結果的にオレは釈放され、おそらくマンゾの推測通りの流れになっている」

オレはロックの述懐の全てを信じていた。

「ロックがそれ程までに信頼している人物なら、その事件には何か裏がありそうだな」

 ロックは煙草に火を点けて吸い、重そうに煙を吐き出す。

「マンゾは海軍内の対立一派の罠に陥ちた。

 オレはそう考えている。

 事件以降、正規海運を率いていたマンゾ達の一派は壊滅状態に近い。

 結果、金のなる木……海軍賊の後援一派に表立って逆らえる者はいなくなった。

 マンゾは奴等の目の上のたん瘤だったんだよ」

 どっかで似たような話があったな。

 とオレはクレブリナ海賊団船長カルロス・ファルカンの悲嘆が聞こえた。

 「思うに、それはそう難しいことではない」

 ロックは苦々し気に佩き捨てる。

「闘牛マンゾに与えられた世界最強の戦艦が、いつどこを航海するか、その情報を海帝に漏洩すれば事足りる。

 海帝は適当な場所で、マンゾの船を囲めばいい。

 部下を無駄死にさせることを最も嫌悪しているマンゾは、降伏せざるを得ない。

 マンゾはそういう(おとこ)だ」 

 ロックはにあるものが映った。

 それは、オレの左側、紫檀の小卓子の上に飾られているルム酒の酒瓶(ボトル)

 他方オレの右側、紫檀の小卓子の上には、新聞とパン菓子やビスコットが盛られた籠がある。

 その酒瓶は、海賊が酒絵お持ち運ぶために使う革袋の形をしていて珍しい。

「それ一緒に飲まないか?」と指さすロック。

「うん、いいよ」オレはあっさり同意して、酒瓶をロックに渡す。

「おい、ユキア」ロックは手にしたそれに見惚れながら「これは超高級酒じゃねぇか。

 値段の想像がつかないぞ。

 いいのか、本当に?」

 それは、モンテ、ピッコロ、カリーノからオレの誕生日祝いとして贈られたものだった。

 オールド・ブリガントの1世紀ものの超珍重なルム酒。

「うん。ずっと飾っておくのももったいないしー。

 ロックとの再会を祝してみんなで飲もう!」

 このルム酒を飲むのに最高に機会だとオレは思う。

 ロックも含めて気の置けない仲間達とこのルム酒を飲めるなんて、オレは幸福者だ。

 モンテ、ピッコロ、カリーノに感謝しなくちゃ。

「よし! じゃあ遠慮なく」ロックは酒瓶を開栓して、トゥルケットを半分飲んでいた洋杯(マグカップ)に、コッコッコッ小気味よい音をさせて注ぐ。

 レイは直ぐ様、銀虎の獣人に変化。

 ロックは匙でかき混ぜてから、喉を鳴らして一気に飲み干す。

「くぅーっ! こりゃ美味い!!」

 と破顔一笑。

 横目でチラチラ見ていたオレも、トゥルケットにルム酒を流し込む。

 レイ、キョウ、ザザの順で酒瓶は回され、全員トゥルケットにルム酒を加えた。

 ロックは珈琲瓶からトゥルケットを洋杯に半分入れ、ルム酒を満たし先刻と同じくかき混ぜながら、途絶えたいた話を再開する。

「おそらくマンゾは海帝に与せ虜囚になっているだろう。

 最強の戦艦を手放す条件として、部下の命の安全を条件にしてな。

 実際、事件後最強の戦艦は目撃されているが、マンゾの姿を見たものは1人もいない」

「かーっ! すげぇ美味いっ!」オレは感動していた。「この飲み方だと、甘味が少し増して、馨がいい感じになってコクが倍になるし、喉越しも良くて最高!

 これ、トゥルケットのルム酒割? 

 ルム酒のトゥルケット割?

 どっちが正解かな?

 というか、ルムトゥルケットと名付けるべきか?」

 それからもう一口飲んで「これこそオレ達海賊に相応しいルム酒の飲み方だ」とオレはご満悦。

 ロックは本題そっちのけでボケ倒すオレに微かな笑みを浮かべた。

「ユキア様」透かさずレイが窘める。「重要な話をしている時に、話題を横道に持って行ってはなりませぬっ!」

「ロックも笑っている場合っ!ではないっ!」

 レイが真顔で怒ったものだから、ロックは話をオレに降った。

「お、おう、ユキア話を本題に戻してくれ」

「や、オレ? オレが?」

 チュチュはオレの膝の上で大きな欠伸をする。

 が、その後はいつものように口を少し開き舌を見せ笑顔。

「全く……えぇ、レイが戻しますとも」

 ごほん、とレイは一つ咳習いをして「ロックの推断が正しいとすれば、マンゾは海帝に抵抗しているということか。

 元々海帝の目的は、ピッコロやモンテさんの一件を考察すれば、親子が建造した最強の戦艦だったのかもしれぬ……」

「ヴィオーラ達の保釈金」ロックは聲を押さえているが、憤怒の形相で「大金、8億ドエルンを、ポンッと出したのは、海軍賊を支援する一派の一員だ。

 名は、ドロース・フェリクス。

 貴族で海軍中佐でもある。

 奴はヴィオーラもに、自分と結婚するなら保釈金は構わないと言い寄っている」

 それについてはオレ達も知っていたが、その姑息な手段に厭悪の念を抱いていた。

「だが、貴族で確かに富裕層にいるとは言え、8億もの大金を簡単に出せるものではない。

 奴は私有地を売り捌いた金だと、美談にしているが……」

 キョウがロックの跡を引き取り論断する。

「その男が出した金貨は、マンゾの最新戦艦を売った報酬かもしれせん。

 そう考えればマンゾ事件の背景の辻褄が会いますね」

「キョウの言う通りだ」ロックは顎を引く。「正確には、マンゾの航路情報を売った報酬だ。

 オレがマンゾの密命を受けて内偵任務に就いていた時、奴は調査対象の一人だった。

 そして奴が特に支援していた海軍賊、ウィル・フライ率いるウルティオー海賊団の幹部、コールド、グリンヴィール、ミッチ、コンディー達は、元々海軍に在籍していた時、フェリクスの部下だった。

 この一味は、クィーンズティアラからの移民者だ。

 荒くれ者許りで素行が悪く、海軍内で問題視されていた。

 然し、フェリクスの支援で海軍賊に。

 俺は、奴等が海帝と結びつきがあるという情報を幾つか掴んでた。

 オレは2杯目のルムトゥルケットを擁して「そういうことなら、10億ドエルン以上の報酬を手にした筈だ」洋杯を口に運ぶ。ロックもルムトゥルケット」の2杯目を飲みながらオレの推量を肯定した。

「正解だ、あの最新戦艦は当時10億ドエルン以上の予算を組んだ建造されている」

 キョウが確たる様態で、断言する。

「海帝は最新戦艦手に入れた。

 神聖ロムルス皇国の戦力を、艦、将、兵を一気に削るという、一石二鳥、三鳥の策を成功させている。

 その報酬は相当な額だったでしょう」

 ロックが「だが、確かな証拠を入手する前に俺は獄に叩き込また。

 釈放されてあらは海軍を離れた。

 闘技場地下の守り人をしながら格闘士としてモノマキアで闘うことになった。

 奴等の尻尾は結局つかめていない」

 その無念さがオレ達にも強く伝わってくる。

 ロックの横顔と聲が、慨嘆に深く沈んでいた。

 オレには闘技場で闘うことしかできない己自身を責め苛立って観える。

「信じてくれ」ロックは歯軋りした。「マンゾは安い男じゃない。会えばわかる」

 ロックが揺ぎ無い信頼を抱いている。

 事件後2年たった現在(いま)でも、闘牛と呼ばれた英雄を信じているものは少なくない。

 然し、ティターン海でいま最も暴れて何時海賊船が、奪われた最新戦艦だおいう現実は、マンゾに信頼を寄せる人達の心を少しずつ砕き始めているという。

 実際、痛烈な批判も上がっているらしい。

ーーもし、仮に海帝の罠に嵌められたとしても、海帝に最強の戦艦を奪われ後の被害、損害を熟慮して、艦もろとも玉砕すべきだった、と。

 そうした情報を、オレはレイやキョウから得ていた。

「マンゾはオレの恩人だ」ロックは悲壮な決断をする。「マンゾが不在である以上、その愛する家族の足枷くらいはせめて外してやりたい。

 何れはマンゾの潔白を証明する!」

 オレは十字架をきった。

「ロックのその思いが遂げられるように、オレは祈っているから」

 レイとザザは、そんなオレの心魂が突き刺さり暗い眼をしている。

 ロックを仲間にできなかったことは2人にとっても残念な痛みを生んだようだ。

 でも、オレの心中はそれ以上だろうと2人が思っているのも、ありありと窺えた。

 オレはチュチュを方の上に乗せ、自分の部屋に入り既に換金していた第1回予選大会の全報酬3.000万ドエルンを両腕に抱えて、ロックに渡した。

 更に今日手にした第2回予選大会の報酬5.000万ドエルンのサンクトゥス銀行の小切手を渡す。

 ロックは頭を下げ、溜息と肩を落とす。

「保釈金だけじゃなく、つい最近亡くなったヴィオーラの母親の医療費も、かなりの金額になっていたから、本当に助かる。

 また借りができたな」

「気にすんなよ」オレは恬然としている。

「母親がお亡くなりになったのなら、ヴィオーラ姉妹も気を落としてるだろうから、ロックが支えてあげないとさ」

 気づかうオレに、ロックは深く冷たい孤独を黒蒼眼に閉じ込めている。

 ロックはディヴァーノに身を沈め、両腕を組んで瞑目した。


 ※※※※※ 


 この約2年間、俺はヴィオーラとたった5回しか合ってない。

 モノマキアで闘って得た金貨を手渡した時。

 先日のヴィオーラ姉妹の母親を天に送る葬儀の時だけだった。

 それも10分以下だった。

 だから、ユキアが言ったようにヴィオーラ姉妹の心の支えになれてない。

 なれるとも思えないが……。

 フェリクスに保釈金の返済をすることは出来ない。

 俺が代わりに返済方法について、話し合いに赴いた。

 会談が行われたのは奴に豪邸の一室。

 総大理石の部屋の中央には、磨き上げられた黒檀の大卓子。

 左右に10脚、部屋の手前と奥側に1脚ずつ椅子があった。

 フェリクスは奥側の椅子に座った、

 オレは執事の指示で手前側のそれに腰かけた。

 30フィートも離れた相手と話すことは、俺にとって気分の良いものではない。

 だが、俺達忍者は精神的な苦痛や様々な感情を封じる術が身についてる。

 だから問題は無し。

 その時、フェリクスは俺に海軍を辞し、円形闘技場で闘うことを勧めてきた。

 奴は一見して整った貌だが、どこか警戒心を抱かせる。

 細目で吊り上がった三白眼が一因だろう。

 おまけに奴の眸は、死人宛らに光がなく不気味に黒い、

「マレノ中尉、君ならば円形闘技場で王座に就き、高額な報酬を手にするのは難しくない。

 格闘士でも剣闘士でもいけるだろう。

 出場報酬や賞金は、一番人気の格闘士が高額だ。

 それが、今の君にとって必要ではないかね?

 それを手にすれば、月日がかかっても、ヴィオーラ嬢を救ってやれるだろう。

 然し、我が海軍がそれを赦さないだろうが。

 出場するなら、これまでの海軍における経歴の全てを棄てるしかない……」

 奴の言葉には同情の欠片もなかった。

(もっと)も」奴は勝ち誇り耳障りな甲高い声で「君が敢えてヴィオーラ嬢を救うべくそうするなら、私は君の願いについて考える余地が無い訳ではない」

 奴は俺との交渉に応じる姿勢をちらつかせ、その条件を加えてきやがった。「闘技場の運営には元老議員の私の父が関与してるのだが、現在闘技場の地下で死刑囚や猛獣を管理する屈強の守り人を探している。

 君にはうってつけの仕事じゃないだろうか?」

 クックックッと喉の奥で笑い、断れない条件を提示して結論へと話を進めてきた。

「君が海軍を辞し、闘技場で闘い、地下での仕事を引き受けるなら、保釈金の返済は不定期で、無利息でも構わないが、如何かな?」

 フェリクスは探るような貌付きだった。

 それは、ヴィオーラへの横恋慕だけじゃない。

 海帝との結びつきという疑惑。

 自分の近辺を嗅ぎ回られることに対して追い払うことができる。

 そう計算してるのも、見え見えだった。

 ヴィオーラを軟禁状態に置かれていること。

 それを耐え忍ぶしかない俺に奴は追い打ちをかけてくる。

「君もヴィオーラ嬢も、今は会う時間を惜しんで返済の努力をして頂きたい。

 それが、誠意というものだろう。

 できないなら、彼女達は再び獄へと戻り、母親は命を縮めることになるーー悲劇だな」

 オレは、マンゾの事件の絵を描いたのが、間違いなくこの男だと断定した。

 海帝との結びつきを隠しその対価として大金を得ていること。

 ヴィオーラを手元に置き、俺との距離を作ること。

 権謀術数に長けた、なかなかの策士だと俺も認めるしかなかった。

 が、こうした事実をユキア達には話せない。

 言えば、ユキア達は憤激するだろう。

 そうなると事態が思わぬ方向へ走ってしまうことになりかねない。

 それを俺は、危惧する。

 ★★★久し振りに再会した気の置けない仲間達。

 一緒にいても、それ故に感じる孤独。

 オレは決してそれを周囲に悟らせることはしない……。


 ※※※※※


「よーしっ!」オレは沈黙を破った。「今日は飲もう! このルム酒どうやって飲むのが一番うまいのかな?」

 オレは、ロックが隠してもその様子が尋常ではないと察知していた。

 けど、オレがそれを問い質したところでロックは上手くはぐらかすだろう。

 今はロックを見守りながら、俺にできることを手探りしていくしかない。

 そう思いながら、オレはちらりとレイの顔色を窺う。

「レイもお付き合いいたします」

「ござるっ!」

 レイとザザが同町した。

「では妾も」 

 ずっと悲し気に俯いていたキョウの姿は、4人の行く末を案じているようあった。

 神にご加護をと、願いっている風でもあった。

 チュチュはいつも笑い顔でオレの左足の上で、ゆっくりと尻尾を振っている。

「こういう時の一番うまい飲み方は、ロックが断言した。「氷を入れてそのまま飲む」

 レイとキョウが台所から、酒杯と氷を持ってきた。

 全員氷塊を入れ、ルム酒を注いでいく。

「そう言えば」ロックは何か思い出したらしく「西の大国ウーサでこういう飲み方をオン・ザ・ロゥク、略してロックって言うんだってよ」

 「え? それ駄洒落か?」オレがぼけツッコミを入れると「ロックがロックで飲む!」

「くだらねぇぞ。つか寒いぞ?」微かだがロックは口許を緩めた。

 礼は、小さく顎を引いて「乾杯っ!」酒杯を掲げ音頭を取る。

 次々とその酒杯に、他の者の手が伸び「乾杯っ!」と唱和して1世紀もののルム酒を楽しむ。

 緋地域に飲み干したロックは、

「すまない。勝手を言って悪いが、俺も心魂ではユキアの仲間だと言うことを忘れないで欲しい。

 いつか必ずこの借りは返す」

 本音を吐露しつつ、心魂から感謝しているのだろう。

 静かに頭を下げた。

 それから両肘を両膝の上に置き、両手を組んで黒蒼眼を閉じる。

 丸で神への祈りを捧げているかのように……。

読んで頂きありがとうございます。

駄作ですが、批評も含め、ご感想を頂けると喜びます!

評価✩✩✩✩✩やブクマをして頂けると更に喜びます!

長い物語ですが、様々な要素で楽しんで頂けるよう努力してます。

これからの物語も是非読んで頂けますように・・・。 m(_ _)m

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