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王族の懸念

――帰還した間者


深夜。

王宮の地下回廊を、

一人の男がよろめきながら進んでいた。


衣服は裂け、

血と煤にまみれている。


「……っ、殿下……!」


衛兵が気づき、

即座に通路を封鎖する。


男は、

王宮諜報部所属の間者——

ただ一人生き残った者だった。


彼は、

玉座の間へと引き立てられる。


――報告


王太子アルディウスと、

王女セリア。


その前に跪いた瞬間、

男は崩れ落ちた。


「……レイベルン領、

 侵入作戦……失敗しました」


喉が震え、

言葉が途切れる。


「我々は……

 侵入直後から

 監視されていたと考えられます」


王太子アルディウスの眉が、

ぴくりと動く。


「どういうことだ」


「街に入った時点で……

 “何か”に

 触れられた感覚がありました」


「次の瞬間……

 仲間たちが、

 剣を抜き……」


男は、

唇を噛みしめる。


「……自分の意思で、

 人を斬っているようで……

 違った」


「理性はあった。

 だが、止められなかった」


重い沈黙。


「そして……

 エレノア・レイベルンが現れました」


その名を聞いた瞬間、

王女セリアの視線が鋭くなる。


「彼女は……

 魔法で、

 我々を制圧しました」


「王族級……

 いえ、

 それ以上の出力です」


男は、

震える声で付け加える。


「一人の仲間が……

 突如不良債務者になり……

 怪物に変わり……

 雷で……消されました」


「その場で、

 王家への宣戦布告がなされました」


報告の後、

魔導水晶が起動される。


映し出されるのは——

商店街。


剣を振るう間者。


逃げ惑う領民。


現れるエレノア。


白く輝く雷。


そして——

宣戦の言葉。


玉座の間に、

誰一人として

声を発する者はいなかった。


――怒りではなく、疑念


セリアは、

静かに水晶から目を離した。


「……おかしいわ」


その声は、

怒りではなかった。


冷たい疑念だった。


「兄上。

 あれは……

 “偶発”ではありません」


王太子アルディウスが、

重く頷く。


「間者が暴走したように見せかけ、

 領民殺害の“証拠”を作った」


「その上で、

 自ら討ち、

 正義の側に立つ」


セリアは、

拳を握りしめる。


「……あまりにも、

 用意周到すぎます」


「まるで、

 最初から

 王家を敵に回す

 覚悟があったかのように」


彼女は、

ふと呟く。


「……それに」


「人間が、

 あの規模の魔法を

 “自分のマナだけで”

 使えるはずがない」


王太子アルディウスの目が、

鋭く細まる。


「……魔族か」


セリアは、

静かに首を振る。


「まだ断定はできません。

 でも……」


彼女は、

映像の中の

エレノアを見つめる。


「彼女は、

 王家より先に“何か”と契約している」


「そしてそれは……

 王国という枠組みを

 完全に無視できる存在です」


王太子アルディウスは、

深く息を吐いた。


「……事態は、

 内乱の域を越えた」


王女セリアは、

静かに言う。


「兄上。

 レイベルン家だけを

 見ていては、

 遅れます」


「私たちは……

 国家に相当するもの、

 いえ、それ以上のものと

 向き合う準備を

 しなければなりません」


玉座の間に、

重苦しい沈黙が落ちる。


王国は今、

企業的支配・貴族の野心に

挟まれようとしていた。

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