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レイベルン領・中央商店街

石畳に、午後の光が落ちる。

活気ある商店街では、

商人の呼び声と、子どもたちの笑い声が

交錯していた。


その中を、

数人の男たちが歩いている。


装いは、

旅人。

傭兵。

行商の護衛。


——だが、

その足取りには、

王宮仕込みの警戒が滲んでいた。


彼らの視線の先、

人混みの陰。


青いローブを纏った人物が、

静かに立っていた。


フードの奥、

澄んだ碧の瞳が、

間者たち一人一人を

数値として把握する。


(……侵入確認。

 王宮所属、六名)


エレノア・レイベルンは、

小さく息を吸い——

囁く。


「――LV5魔法

 《コントローラブル・バーサク》」


空気が、

わずかに歪んだ。


理性を装った狂気


最初は、

誰も気づかなかった。


間者の一人が、

ゆっくりと剣を抜く。


次の瞬間、

隣にいた果物商の男の胸を

迷いなく貫いた。


悲鳴。


血。


混乱。


「な……何を――!」


だが、

間者たちの顔は、

正気そのものだった。


理性を保ったまま、

発狂している。


「レイベルン家は王家の敵なり!」


「レイベルン領を、

 滅ぼすべし!」


叫びながら、

彼らは次々と剣を振るい、

逃げ惑う領民を斬り捨てていく。


——これは、

ただの殺戮ではない。


王家による侵略の証拠として

成立する舞台だった。


その時。


青いローブが、

地に落ちた。


現れたのは、

金髪碧眼、

緑のドレスを纏う

一人の貴族令嬢。


その背後には、

剣を抜いた

老執事。


「……私の愛する領民を

 手にかけるなんて」


エレノア・レイベルンは、

怒りを込めて告げる。


「これ以上の狼藉、

 許せるはずがないでしょう?」


次の瞬間、

彼女の手から

白く輝く電撃が奔る。


——バリィッ!


雷光が、

間者の身体を貫き、

一人、また一人と

倒れていく。


執事も、

無言で踏み込み、

剣閃を走らせる。


老練な動きで、

逃げ場を断ち、

確実に仕留めていく。


奪われるマナ、堕ちる人間


混戦の最中。


エレノアは、

一人の間者に近づき、

小声で呟いた。


「――LV5魔法

 《ドレイン・マナ》」


見えない力が、

男の身体を締め付ける。


「……ぐ、ぁ……?」


彼の体内から、

マナが強制的に引き剥がされ、

吸い上げられていく。


数値が、

ゼロへ。


——不良債務者。


その瞬間。


〈アーガスノルン社 広域実験場自動管理プログラム ノルンシステム

 マナ残量0を確認 遠隔実験処置コマンド:送信〉


男の身体が、

内側から裂けた。


背中、腹、首。

肉を突き破り、

無数の触手が

生え広がる。


人の形を失った

実験体。


だが——


「……醜いわ」


エレノアは、

一歩も引かない。


両手を掲げ、

宣告する。


「王族に匹敵する魔法を

 見せてあげる」


白く輝く雷が、

天から落ちた。


「――《ホーリー・サンダー》」


眩光。


爆音。


怪物は、

跡形もなく

消滅した。


沈黙。


血に染まった商店街に、

エレノアの声が

はっきりと響く。


「王家による

 独善的な支配に、

 私は立ち向かうわ」


彼女は、

王宮の方角を見据え、

告げる。


「この日をもって、

 レイベルン領は

 王家に宣戦布告します」


「あなたたちを

 玉座から

 引き摺り下ろす日を……

 楽しみにしているわ」


逃げ延びた者、拡散される真実


ただ一人。


発狂を免れていた

間者が、

震える足で

街を離れた。


——王宮へ。


そして、その一方。


この一連の光景は、

エレノアの息がかかった商人たちによって、

魔導水晶を通じて

各地の貴族領へと

即座に拡散された。


王家の間者が、

領民を斬り殺す映像。


それを討ち、

宣戦を告げる

レイベルン公爵。


——もはや、

後戻りはできない。


世界は、

企業的管理と王権の衝突へと

確実に踏み出した。

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