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王宮内・見えない通信路
――間者の即時報告
王宮魔術観測塔・地下三層。
通常、王族以外の立ち入りは禁じられている
魔力循環管理区画。
先ほどまで
「記録補佐官」として立っていた男は、
誰にも気づかれぬまま、
壁面の影へと身を滑り込ませていた。
彼は、
声を出さない。
代わりに、
左手の指先を、
空中にわずかに走らせる。
——そこには、
王宮のどの魔術体系にも
登録されていない
歪んだ起動式が描かれた。
「……接続確認」
音ではない。
思考でもない。
**“権限照合”**という概念が、
脳裏をかすめる。
瞬間、
彼の視界が、
王宮ではなく——
レイベルン領・中枢管理室の座標に
重なった。
《報告》
感情の混じらない
圧縮された情報が、
一括で送信される。
王族、異常魔力を観測
発生源:レイベルン領
観測値:王族行使限界を超過
王太子、間者派遣を決定
それだけ。
返答は、
即座だった。
《受領》
《追加監視:王宮内》
《現地対応:不要》
男は、
何事もなかったかのように
指を下ろす。
壁の影から一歩踏み出し、
再び
“王宮の歯車”として
歩き出した。




