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王都アストラ・王宮中枢 魔術観測塔

高い天井。

水晶と魔導円盤が幾重にも配置された

王宮魔術師たちの中枢。


突如として、

探知水晶が不穏な光を放った。


「……これは」


年配の魔術師が、

震える声で呟く。


「殿下、

 王女殿下——」


王太子と、

王女セリアは、

同時に振り向いた。


複数の魔術師が、

慌ただしく水晶盤を操作する。


「殿下、つい先ほど、

 王都郊外にて

 大規模な魔力反応を確認しました」


「探知魔法によると、

 レイベルン領が該当します」


一瞬、

空気が張り詰める。


「……魔導実験を行うとの通知が、

 王宮には届いておりましたが」


報告役の魔術師は、

言葉を選びながら続けた。


「それにしては……

 あまりにも規模が大きい」


王太子アルディウスは、

険しい表情で腕を組む。


「また、

 エレノア・レイベルンか?」


低い声。


「何を考えている……」


「長年、

 王家に仕えてきた貴族だ」


「だが、

 最近の行動は——

 度を過ぎている」


別の王宮魔術師が、

一歩前に出る。


「殿下」


「たびたび行っている

 **犯罪者の捕縛訓練**とは、

 比べものにならない規模ですぞ」


王女セリアは、

眉をひそめる。


「……どういうことなの?」


その問いに、

魔術師は

一瞬、喉を鳴らしてから答えた。


「——人間が行使できる範囲を超えています」


場が、

静まり返る。


「それも……」


「王族が行使できる

 マナ量以上の魔法反応を、

 確かに観測しました」


王女セリアの瞳が、

大きく揺れる。


「……そんなこと……」


だが、

否定の言葉は出なかった。


彼女は、

兄である王太子アルディウスを

真っ直ぐに見据える。


「お兄様」


「レイベルン家を、

 これ以上見過ごすわけには

 いきませんわ」


その声は、

震えていない。


王太子アルディウスは、

しばらく沈黙し——

やがて、

短く答えた。


「……分かった」


「レイベルン領に、

 間者を送る」


その言葉が発せられた瞬間。


観測塔の隅。


柱の影で、

一人の下級魔術補佐官が、

わずかに身を強張らせた。


彼は、

何気ない仕草で

記録用の羊皮紙を畳み、

その場を離れる。


——それが、

 エレノア・レイベルンの

 間者であることを


王太子も、

王女セリアも、

王宮魔術師たちも、

まだ知らない。


王宮の中枢に、

すでに——

“管理者の視線”は

 入り込んでいた。

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