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王都アストラ 白曜宮殿・星読の間

夜。


宮殿の最深部、

王族でも限られた者しか立ち入れない部屋に、

淡い青光が満ちていた。


魔道水晶が、宙に浮かんでいる。


王太子アルディウスと、

王女セリア。


二人きり。


周囲には、

結界が幾重にも張られ、

外界の音は完全に遮断されている。


「……始めて」


セリアの指示で、

魔道水晶が淡く脈動した。


【映像ログ・ユベニウス帝国】


炎。


最初に映ったのは、

燃え盛る街だった。


城壁が崩れ、

尖塔が折れ、

人々が逃げ惑う。


「……これは……」


王太子が、息を呑む。


「実験都市……いや、

 実験場だな」


次の映像。


アンデットの群れ。


通常の魔導記録では見られない、

明確な隊列。


前衛、側面、後衛。


まるで——

軍隊。


「……あり得ない」


セリアの声が、低く震える。


「アンデットは、

 暴走するだけの存在のはず……」


騎士団が迎撃する。


魔術師が結界を張る。


だが、

一歩ずつ、確実に押し潰されていく。


そして。


映像が、

中央広場を捉えた。


「……!」


セリアが、

思わず一歩前に出る。


そこにいたのは——


赤い髪の女。


焼け落ちた街の中心で、

何事もないかのように立っている。


アンデットは、

彼女を避けるように動き、

一切、襲わない。


「……使役している?」


王太子が、

言葉を失ったまま呟く。


「魔法……ではない」


「契約でも、支配でもない……」


「まるで、

 意志を共有しているようだ」


映像が、

彼女の横顔を捉える。


冷えた瞳。

血の色の髪。


その姿に、

セリアの胸が、ざわつく。


「……彼女は」


「魔族?」


王太子アルディウスは、

即座に首を振った。


「彼らは、

 決して“管理外”を許さない」


映像が、

教会地下へと切り替わる。


隠し通路。


不衛生な牢。


肉塊。


そして——

再生。


アンデットとなって、

彼女の後ろに立つ人影。


セリアの手が、

口元を押さえた。


「……彼女は」


「殺していない……?」


「救っている....?」


王太子は、

苦い表情で答える。


「だが、

 結果として街は滅びている」


映像が、

突然、乱れた。


最後に映ったのは、

瓦礫の上に立つ赤い髪の女。


彼女が、

空を見上げる一瞬。


——映像、終了。


沈黙。


魔道水晶の光が、

ゆっくりと消える。


「……第三の勢力」


セリアが、

かすかに呟いた。


「魔族でもなく」


「我々人族でもない」


「アンデットを使役し、

 世界を混沌へといざなう存在……」


王太子アルディウスは、

拳を握りしめる。


「……最悪だ」


「だが、

 同時に——」


視線を上げ、

セリアを見る。


「希望でもある」


「……え?」


「魔族の“完全な支配”は、

 成立していないという証明だ」


セリアは、

ゆっくりと頷いた。


「……でも」


「この存在は、

 味方にも、敵にもなり得る」


「ええ」


王太子アルディウスは、

静かに言った。


「我々は、

 彼女を見つけねばならない」


「討つためではない」


「……選択を誤らないために」


セリアは、

胸に手を当てる。


赤い髪の女の姿が、

脳裏から離れない。


「……彼女は」


「世界に選ばれなかった者たちの、

 代弁者なのかもしれない……」


二人は、

同時に理解していた。


この瞬間から、

世界は——


管理する者


支配される者


そして、拒絶する者


という、

三つ巴へと突入したのだと。


夜の王都に、

静かな鐘の音が響いた。


それは、

新しい時代の始まりを告げる音だった。

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