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廃都郊外・覚醒の時

夜明け前。

崩れ落ちた石柱と焼け焦げた壁が、

かつての街だった痕跡を無言で晒している。


ユリアは、その瓦礫の隙間に身を潜め、

膝を抱えるようにして眠っていた。


呼吸は浅く、

指先が、ときおり痙攣する。


——夢。


それは、

忘れていたはずの記憶だった。



緑。


眩しいほどの緑の中で、

笑い声が響く。


「逃げなさい。ほら、もっと必死に」


金髪。

緑のドレス。

楽しそうに魔法陣を描く、少女。


エレノア・レイベルン。


雷光が走る。

空気が裂け、地面が爆ぜる。


「私達は……道具じゃない……!」


自分の声が、震えている。


立ち止まった瞬間——


「何をしているの、愚民?

 死にたいの?」


嘲笑。


詠唱。


隙。


——短剣。


だが。


白い光。

無詠唱の電撃。


体が、言うことをきかない。


「残念だったわね?」


その声とともに、

世界が白く染まる。


銀色の部屋


冷たい。


動けない。


白い服。

金属のベッド。

ベルトが、肉に食い込む。


ガラスの向こう。


知らない服。

知らない言葉。

理解できないのに——意味だけが、流れ込んでくる。


「第7096次、マナ制御実験を行う」


数字。


自分が、番号になる。


黒い液体。

注射器。


刺さる。


——灼熱。


細胞が、

壊され、

書き換えられ、

従わされる。


叫びは、出なかった。


「——ッ!!」


ユリアは、跳ね起きた。


瓦礫が崩れ、

小石が音を立てて転がる。


息が荒い。

喉が、焼けるように痛む。


「……っ、はぁ……はぁ……」


両手を見る。


震えている。


だが、それは恐怖ではない。


怒りだ。


「……思い出した」


声は、低く、掠れていた。


「私は……狩られた。

 壊された。

 番号にされた……!」


額に、熱が集まる。


胸の奥——

心臓とは別の場所で、

何かが蠢く。


そのとき。


瓦礫の向こうで、

腐臭が立ち上った。


呻き声。


引きずる足音。


——アンデット。


かつてなら、

反射的に逃げていた存在。


だが今は。


「……来なさい」


無意識に、そう呟いた。


アンデットが、

ぴたりと止まる。


首が、不自然な角度で傾く。


「……?」


ユリアの脳裏に、

“線”が走った。


命令ではない。

支配でもない。


同調。


「……そうか」


彼女は、理解した。


「あなたたちは……

 私と、同じなんだ」


壊され、

捨てられ、

それでも“動かされる”存在。


「……なら」


ユリアの目が、

鈍い赤に染まる。


「一緒に行こう」


アンデットが、

一斉に跪いた。


その光景を見て、

彼女は初めて、はっきりと笑った。


それは、

人間の笑みではなかった。

どこか冷たさを秘めていた。

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