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エリア番号2「東亜王朝」――護衛任務ログ

燃えていた。


朱塗りの楼閣、瓦屋根の街路、垂れ下がる赤提灯。

それらすべてが、黒煙と炎に包まれている。


かつて人が行き交っていた通りを、

今は――アンデットが埋め尽くしていた。


歪んだ身体。

半ば崩れた顔面。

だが、内部のマナ反応は異常に活発だ。


「接触、来るぞ!」


部隊長の声と同時に、ユリア――

識別コード S-α7096 は、地面を蹴った。


一体目。


銃口が閃く。

発射と同時に、弾頭に刻まれた魔導紋が起動。

着弾点から雷光が弾け、アンデットの頭部を焼き切る。


倒れる前に、もう一体。


距離を詰め、体術。

強化された脚部筋繊維が、常人ではありえない速度で踏み込み、

肘打ちが胸郭を粉砕する。


――遅い。


ユリアは、そう“判断”した。


「前方、三時方向!」


跳躍。

屋根を蹴り、上空から落下。

着地と同時に、魔力循環を脚から腕へ。


掌底が、アンデットの首をへし折る。


炎の向こうで、城が見えた。

東亜王朝の象徴――

今は、管理者の仮宿。


「城内へ突入する!」


重厚な門を破り、中へ。


中庭には、さらに密集したアンデット。

だが、動きが違う。


――統制されている?


「第5研の“群制御型”だな」


部隊員が呟く。


ユリアは、即座に判断を下した。


「私が道を開く」


返事を待たず、前へ出る。


魔法と銃撃を織り交ぜた連続動作。

撃つ、砕く、踏み潰す。

血と灰が宙を舞う。


数分後。


玉座の間の奥、隠し通路。

そこに、三名の男女がいた。


王族の装束。

貴族の装身具。


だが――

彼らの立ち姿は、違う。


「治安維持部隊か。遅かったな」


中央の男が、落ち着いた声で言う。


「護衛対象、確認」


部隊長が告げる。


その瞬間。


男の視線が、ユリアに向いた。


ほんの一瞬。

だが、確かに――彼女を見た。


「……7096か……」


低く、漏れた言葉。


ユリアの動作が、一瞬だけ止まった。


《異常反応検知》

《識別コードへの外部言及》


だが、即座に上書きされる。


「護衛対象、移動を」


彼女は、命令通りに言った。


城を出る頃には、

夜空を切り裂くように、回転翼の音が響いていた。


輸送ヘリ。


「ここまで来れば、安全圏だ」


重役の一人が言う。


だが、例の男は、再びユリアを見た。


「よくできている」


それは、賞賛だった。

人に向ける言葉ではない。


「……君は、自分が何か、知っているか?」


ユリアは、答えない。


答えは、不要だからだ。

だが。


胸の奥で、

わずかなノイズが、消えずに残っていた。


――7096。


それは、

彼女の名前だったのかもしれない。


《記憶遮断プロトコル:再適用》


視界が、静まる。


ヘリは闇の向こうへ飛び去った。

だが、世界はすでに――

静かに、管理の想定を逸脱し始めていた。

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