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――ほのかサイド――
「大丈夫だって。じゃあ行ってくるね」
そう言って友希ちゃんが遺跡の方に向かう。
心配で、その様子を目で追う。
友希ちゃんは、石を投げて様子を窺った後、比較的原型が残っている遺跡の高台に登り、そこからとても人間業とは思えないほど高く飛び上がって、向こう側に消える。
「見えなくなっちゃった。」
友希ちゃんが私に残るように言ったのは、私の体力、耐久が低くて、敏捷もそんなに無いから、数に囲まれたら耐えられない事を心配してってのは分かるんだけど。
でも、友希ちゃん一人に任せるのも心配だし、何か私にできることは。
と言っても、私のスキルは役に立ちそうなのが無い。
でも筋力は私の方がかなり上だし、何かできるはず。
と考えてると、ふとさっき友希ちゃんがとった行動を思い出す。
あれなら安全に且つ私の無駄に高い筋力を活かせるはず。
そうと決まれば、あれを準備して高台に登って。
高台に登ると、飛び降りて戦ってたはずの友希ちゃんがいて、うんうん唸ってた。そんな友希ちゃんに話しかける。
「お困りかね?友希ちゃん。」
「え?」
いきなり声をかけられたからか、驚いた顔して友希ちゃんが振り向く。
「私に良いアイデアがあるよ」
私は、ふっふ~ん。と、腕を組んで自身満々に友希ちゃんに告げた。
それから私はアイデアを披露する。
「いや、コレはさすがに卑怯なのでは?いや、安全だから良いんだけどね。」
何か微妙な顔をする友希ちゃんをよそに、私は力一杯石を投げ続ける。
ステータスの筋力によってブーストされた投球力で次々と石を投げる。
流石に一発でとはいかないけど、石はそこら辺にあるし、猪はこっちまでは来ない。友希ちゃんが目や脚にダメージを入れてくれてた事もあり、3回に一回くらいは命中する。
20回くらい当てたところで、片目が潰れた一体が青い光になって消える。
「やっと一匹倒せたね。もう一匹もっ!」
そう言って石を投げ、もう一匹も同じ工程でを繰り返す。
「あ、レベルが上がってる。」
横でステータスを確認してた友希ちゃんのレベルが上がってたらしい。
2匹目を倒した後、私もステータス確認すると上がってた。
「それにしても、100回くらい石投げたんじゃない?よく疲れないね、ほのか。」
「へっへ~ん、すごいでしょ。まだまだいけるよ!それよりあと一体はどうしよっか?ここからでも届くはと思うけど、ちょっと奥にいるから当てる自身無いなぁ。」
あっちの方にはあまり高台になる遺跡あとが残ってない。
「う~ん。一体なら二人でいけるかな。あたしが注意を引いて、ほのかは隙を見て大きな一撃入れてくれれば。」
「うん」
それから残りの一体は友希ちゃんが正面から奇襲し、片目を潰したあと、無事な方の目側でヒット&アウェイを繰り返し注意を引き、私が反対側から剣で切り付け、なんとか倒す。
「た、倒せた~!」
最後の一体を倒し、青い光になった事を確認したあと、友希ちゃんが大の字で横になる。
「これでお家に帰れるね!」
「あ、でもせっかくだからドロップアイテムも回収しておこうか。念の為ね。」
ドロップアイテムは最初の2体分も回収した。
アイテムは大きな葉っぱの小包が二つと小さな葉っぱの小包が一つ、たぶん肉だね。それに牙が一つ、革が2つにに骨一つ、たぶん肋骨部分かな?それにいつもの灰色の石、魔晶石。
それに最後の一体は片刃の反りが入った短剣が一つ落ちていた。刃の部分まで白くて、骨っぽい感じで切れ味が良いのかは分からないけど、無骨なダガーより軽いから友希ちゃんの予備武器にすることにした。
今後使うかは分からないけど。
「さて、じゃあゲートを潜りますか。」
「うん。」
二人でゲートに入る。
そこは、入ってきた時と同じ白い空間だった。
――――――――
初めてのゲート解放、おめでとうございます。
帰還先を選択してください。
・13-0-47028
・マイルーム
――――――――
帰還先ってなってるから、帰れるんだよね。
選択肢がまた二つ。
マイルームは入るときに行ったあの部屋の事だよね。
じゃあもうひとつが帰還先って事、だよね。
どうしよう、この大きなリュックとかそれ以外の道具とかマイルームに置いていった方が良いのかな。
でも、もしまた知らない場所だったら困るし。
いいや、このまま出ちゃえ。
「13-0-47028」を選択する。
選択すると目の前に扉が現れそこを潜ると入ってきた時の池の近くの展望台のある広場に出ていた。
「ほのか!」
出た先には、先にこっちに出てたのか友希ちゃんがいた。
「友希ちゃん!」
「帰れたよ!ちゃんとあたし達帰れたよ!」
友希ちゃんが私に駆け寄る。
私も友希ちゃんの方に向かい3歩4歩進んだところで尻餅を付く。
「うわっ重い」
何故か荷物が急にめちゃくちゃ重くなった。
さっきまであまり重さを感じなかったのに、今は重くて全然立てない。
「ほのか?大丈夫?」
友希ちゃんも近づいてリュックを持とうとする。けど、
「重っ!あれ、こんなに重かったっけ?」
おかしいな、ステータスが変になったのか確認するが、最後の猪を3匹倒した時に2レベル上がり、ステータスが上がったところ以外は特に変わってない。
いや、ステータス値変換がオフになっている。
なるほど、こっちに戻ると自動的にオフになるのか。
そういえば塔に入ったときは自動でオンになってたし。
「あー、ステータス値変換がオフになってる。それでステータスの反映が切れたんだ。」
友希ちゃんも気付いたみたいだ。
「そうみたいね。」
「おい、君たち。勝手に中に入っちゃダメじゃないか。」
「え?」
声の方を向くと警察官の格好をした人が近づいてくる。
「見て分かると思うが、ここは立ち入り禁止だよ。ったくそんな準備までして何処から入ったんだ。」
周りを見渡し、よく見ると広場スペースをカラーコーンと黄色いテープでいかにも立ち入り禁止ですって感じにして、2、3人の警察官のような人が立っていた。
「君達もニュースは見てるんだろ?あのゲートってのを潜って行方不明になった人が全国、いや世界で沢山出てるんだ。ほとんどまだ帰ってきていないが帰って来た人の話では死人も出ているって話だしな。」
どういう事?
「あ、はい。すみません。それじゃああたし達は帰りますね。」
そう言って、友希ちゃんが私を立たせる。
荷物も背負ってその場を離れる。
警察官が見えなくなったとこまで来て、友希ちゃんが荷物を降ろして立ち止まる。
「あー重い。ステータス値反映オンにしてもあたしにはちょっと重いわこれ。」
「あ、オンにしたんだね。それで荷物持てたのか。」
「うん、スキルはこっちでも普通に使えるっぽい。けど、なんかSPの減りがこっちだとすごく早くなってるよ。たぶんずっとオンにしてたら数十分と持たないかも。」
便利なのに残念。まぁ、こっちではスキル使う必要もないか。
「それより、あたし達以外にも入った人結構いたんだね。向こうでは全然合わなかったけど。」
「うん。入るときになんか選択肢が出てたけど、入る場所で向こう側の出る場所が変わるのかな。」
「たぶんそうなんじゃないかな。もし、上に続く塔か次の村に行ってたら、他の人に出会えてたかもね。」
少し沈黙が続く。
「まぁ、考えてもしょうがないしとりあえず帰ろうか。たぶんお母さんも美琴姉さん達も心配してるだろうし。」
「そうだね。うぅ。お母さんに絶対怒られる。」
「あー、美琴姉さん怒ると怖いからなぁ。」
それから二人で二日ぶりの我が家に帰れることができた。
もちろん、家族はすごく心配を駆けてしまって、帰還を喜んで抱き締められた後にはしっかりと怒られました。
ちなみに、後で分かったことなんだけど、私達が迷宮に入った後、行方不明者やネットで配信者がゲートを潜るシーンが流れたりして、ゲートの存在はすぐに広まったらしい。
そんな中で私達より半日ほど早くアメリカで帰還した人のニュースが出たのを皮切りに、ポツポツと帰還者がで始めたんだとか。
それで、この大量の行方不明者の殆どはゲートを潜って迷宮の塔に行ったこと、その向こうにはモンスターが出る危険な場所であることなど、まるでゲームやファンタジーな場所である事が伝えられると共に、日本ではこれ以上の混乱を起こさないために可能な限り発見されたゲートは監視、封鎖する事が発表されたらしい。
今でもニュースやネットではこの手の話題が随時され、情報も虚実入り交じって流れてる。
ただ、アップデートがあったと言うあのアナウンス。
スキルが本当に配られ、迷宮も本当であった以上、恐怖の大魔王と言うのもまた本当の可能性が高く、13年後に向けての何か対策を講じる必要があるのでは?と言う意見もあったりして、警察や自衛隊から20名ほどのチームを数十組編成するそうだ。
ただ、これは救助を目的として、行方不明者が多く出ている付近のゲートから迷宮に入る事になるらしい。
私達の地区では、他の大都市に比べればそこまでの行方不明者は出ていない。その為、救助隊は編成されてなくて封鎖だけだ。田舎だからね。
ちなみに私達も帰還者として色々聴取され、持って帰った道具やドロップアイテムの殆どは調査の名目で持っていかれた。あのゲートから人命救助に入る場合はせめて情報もアイテムも活用されることを願ってる。
(私達が必死にお金を稼いで買ったり命懸けで討伐して得たアイテムだが、別に恨んでは無い。無いったら無い。)
迷宮に入った時は、何がなんだか分からなくて、たった数日だけど必死になって。
でも、思い返してみると楽しかった。
普段とは違う空気、重い物も持てるほど力が溢れて疲れても寝れば治る。
そしてモンスターがでて倒せば光になって消える。それこそ、ゲームのように。
小さい頃から可愛いものとか少々漫画より、少年漫画のような主人公に憧れていた。友希ちゃんやお姉ちゃんとヒーローごっこをしてよく遊んだ。
今でこそしないが、今でもヒーローに憧れる自分がいる。
ステータスに強化された今なら、あの憧れの少年誌のヒーローのようになれるんじゃ。とか思ったりする。
それに、最後の猪は(友希ちゃんが)危なかったけど、それ以外はそこまで命の危機には陥らなかった。
同じルートなら、もう一回くらいなら行っても良いかなと思ってる。
さすがに一人じゃ行きたくないけどね。
「まあ、私の冒険は終わりで日常に戻ったと言うことで。」
気分を入れ換えて宿題を始めるか。いや、宿題が嫌で現実逃避してた訳じゃないよ?
ノートを取ろうと手を伸ばした時、バンッ!とかなりの勢いで扉が開く。
「ほのか!迷宮に行くよ!」
勢いよく私の部屋に入ってきた人は、案の定友希ちゃんだった。




