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メゾン・ド・バレット~戦う乙女と秘密の護衛生活~  作者: ざつ


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第38話:ジーナの襲撃と巨大魔人

 _____________________

 1. 最終決戦の号砲と愛の結界


 メゾン・ド・バレットの地下司令室。作戦実行の時刻、正午。張り詰めた静寂が極限に達していた。


 司令塔ルナは、対結界戦術特化型に換装された対物ライフル『ホーリー・シェル』を構え、セーフハウスの屋上へと移動する。銀髪のロングヘアが、冷徹な理性の光を放つモノクルと共に、孤独な使命を背負う司令塔の姿を際立たせていた。


「全バレット隊。これより、『愛の独占欲』を原動力とする最終決戦プランを実行する!」


 ルナの冷静な声が、悠真のインカムに響く。


「志藤様。あなたはおとり。あなたの支配力を最大限に解放し、ジーナの結界を意図的にオーバーフローさせなさい。私たちは、あなたを護るために、愛の独占欲を理性の限界まで解放します」


 戦闘服に換装を完了したメイドたちが、それぞれの愛を駆動系に刻み込むように、コードを宣言した。


「Code: Rational Justice(理性なる正義)!」(ルナ)

「Code: My Only Love(私の愛のテリトリー)!」(アリス)

「Code: Absolute Data(絶対的データ解析)!」(クロエ)


「Code: Holy Sanctuary(聖なる包容の盾)!」(ソフィア)

「Code: Logical Devotion(論理的な献身)!」(ララ)

「Code: Iron Will(鉄の意志)!」(アベル)


 悠真は、自らの身体から青白いフェロモンの奔流が溢れ出すのを感じた。


(俺の優しさは、弱点なんかじゃない。みんなの愛の力の源だ!)


 悠真の覚悟は、テイム魔物たちにも伝わる。膝の上のスライミー(防御)が、


「プルルルル!」


 と興奮気味に鳴きながら、全身を硬質な青いゼリーに変え、悠真の体を覆い始めた。影の中のファントム(索敵)は、


「シュー!」


 と低く唸り、黒い煙をセーフハウス全体に広げ、外部の魔力反応をクロエの司令塔システムへ送り込む。足元のスパイク(牽制)は、


「カリカリカリ!」


 と甲羅を激しく鳴らし、戦闘への渇望を示していた。


 その時、セーフハウスの周囲を覆う魔力結界が、突如として不気味な赤黒い光を放ち、強烈な地鳴りと共に収束した。


「ルナ隊長! 警告! 警戒レベルがレッド・ラインを突破! ジーナの魔力吸収結界が展開! 規模は、前回の3倍! 悠真様の支配力を完全に封じ込めるつもりです!」


 クロエの緊迫した報告が、司令室に響き渡る。


「了解。結界の展開と同時に、最強クラスのモンスターが投入されます。全隊、防御態勢へ!」


 凄まじい轟音と共に、セーフハウスの庭が爆発した。コンクリートと石材の瓦礫が飛び散る中、悠真の目の前に、信じられない巨体が姿を現した。


 それは、規格外の大きさを誇る巨大魔人クラスのモンスターだった。全長10メートルを超える筋骨隆々の巨体に、鈍い光を放つ硬質な装甲が全身を覆っている。その咆哮は、セーフハウス全体を震わせた。


「な、何が来ようと関係ないわ! 私たちが悠真くんを護るんだから!!」

「アリス、ちょっと肩の力を抜きなさい。そんなんじゃ、すべての力を発揮できませんよ」

「わ、わかってるわよ、ルナ」


 その魔人の肩の上には、悠真を冷徹に見下ろすジーナ(仏頂面の戦闘狂)の姿があった。彼女は戦闘服の上にインド風の装飾的なマントを纏い、その瞳は一切の感情を宿していない。


 ジーナは冷たい声で、メイドたちを挑発した。


「フン。ルナ隊長。まさか、この日、この時間に、あなたがたが総力戦の準備を整えていたとはね。作戦日時は、シェンの拘束で筒抜けだったようね」


 ジーナは、悠真とメイドたちに向け、冷酷に宣戦布告した。


「M.A.の女ども。志藤悠真の優しさに溺れ、その愛を『独占欲』などと呼ぶか。その歪んだ愛の独占欲が、この巨大魔人の力に屈する様を、貴様らの目で見るがいい……。だけど、周到な準備など、踏みにじってあげるわ。私が、その歪んだ愛を、解放してあげる」


 _____________________

 2. 結界内部の絶望的な劣勢


 ジーナが号令をかけると、巨大魔人の全身から、赤黒い魔力の奔流が溢れ出し、結界内部にいるメイド隊に襲いかかった。結界の内部魔力密度は異常な高さを誇り、メイド隊の駆動部を内側から圧迫し始める。


「ソフィア! アベル! 防御プロトコルを最大出力で展開しなさい!」


 ルナの司令と同時に、防御特化のソフィアとアベルが、悠真を挟むように最前線に出た。


 ソフィアは『アルカナ・シールド』を最大出力で展開。青く輝くバリアが、巨大魔人の猛攻を一時的に受け止める。


「あらあら、悠真様。この母性的な愛のバリアは、ミストの狂気には屈しませんわ! 私の独占は、あなたの心のバリアを護り抜くことです!」


 ソフィアのグラマラスな体躯が、シールドの維持に耐かねて軋みを上げるが、その瞳には愛する者を護る「母性の愛の独占欲」が宿っていた。


 その隣で、アベルはソフィアのシールドを物理的に補強する。特殊合金製の『絶対防御シールド』をアルカナ・シールドに重ね、二重の防御壁を構築した。


「ソフィア隊員、いえソフィア姉さま。あなたの愛を物理的に堅牢にするのが、私の理知的な使命です。防御効率99.9%を維持します」


 アベルの無表情な顔に、ソフィアへの「理知的な信頼」と、悠真への「防御の愛の独占欲」が共存していた。


 巨大魔人が、二重シールドに重い一撃を叩き込んだ。凄まじい衝撃波が内部にいるメイドたちを襲い、駆動系にノイズが走る。


「誰にも、悠真くんを傷つけさせない!」


 情熱的な愛の独占欲を爆発させたアリスが、光速で巨大魔人の前に躍り出た。双剣『ラブ・デストロイヤー』を構え、その全身から青い光の奔流を溢れさせる。


「私の愛のテリトリーに、指一本触れるな!」


 アリスは、双剣を駆使し、巨大魔人の硬質な装甲に、狂気的なまでの集中力で斬りつけるが、装甲は文字通り物理無効で弾かれる。


「くっ! 効かない! 物理攻撃が通じない!」


 アリスの駆動部から火花が散る。彼女の情熱的な愛の攻撃は、巨大魔人の硬質な防御の前に、無力だった。


 巨大魔人が、アリスに重い一撃を振り下ろした、その瞬間。


「アリス隊員! 回復プロトコルを最大出力で実行します!」


 回復特化のララが、冷静沈着な表情でアリスの駆動部に魔道エネルギーを注入した。ララは、アリスの負傷を予期し、後方から回復を待機させていたのだ。


「愛の独占欲を論理的にサポートします! 回復効率3.2倍を達成!」


 ララの魔道回復を受けたアリスは、駆動系のノイズが一瞬で消滅し、再び光速で巨大魔人へ斬りかかる。

 彼女は、理知的な瞳で悠真を見つめながら、自身の役割を宣言した。


「志藤様。わたくしの愛は、最も効率的なサポートです。防御と回復の論理的な愛をもって、あなたを護ります」


 しかし、ジーナの結界と巨大魔人の複合攻撃は、その二重の盾すらも凌駕する。巨大魔人の一撃は、二重シールドを貫通はしなかったが、凄まじい衝撃波が内部にいるメイドたちを襲った。駆動系にノイズが走り、アリスやララの駆動系に微細な亀裂が生じる。


 情報分析官のクロエは、デスクの前で、キーボードを叩きながら絶叫した。彼女の黒縁メガネの奥の瞳は、データ処理の限界を超えようとしていた。


「ルナ隊長! ジーナの結界が、悠真様の抑止力(支配力)を95%無効化しています! テイム魔物の能力も、大きく低下! 論理的勝利の確率はゼロに近づいています!」


 悠真の支配力は、ジーナの結界によって完全に封じられていた。


 _____________________

 3. メイの影の支援とルナの葛藤


 巨大魔人は、二重シールドの弱点を突き、ソフィアとアベルのシールドの継ぎ目に、強力な魔力ビームを放った。


「ソフィア! アベル! シールドの連結が崩壊する!」


 ルナの緊迫した司令が響き渡る中、悠真は絶望的な無力感に囚われていた。


(俺の力が、何もできない。みんなが俺を護るために、傷ついていく……!)


 その時、クロエが新たなデータを読み上げる。


「ルナ隊長! メイ先輩の駆動音から、量子ジャミングの起動シグナルを確認! 影の友達ファントムを介した幻影能力を、結界の内部で発動!」


 療養室のベッドの上で眠るメイの、規則正しい駆動音に、一瞬だけノイズが走る。そのノイズは、悠真の支配力に呼応するかのように、結界の内部に黒い煙のような幻影を大量に出現させた。


「なっ! 幻影!?」


 巨大魔人は、突如として出現した大量の幻影に視覚を撹乱され、魔力ビームの照準が一瞬だけ逸れる。シールドの連結が崩壊する致命的な瞬間を、メイの影の支援が阻止したのだ。


「よし! メイの量子ジャミングが効いた! クロエ! その隙に、巨大魔人の弱点解析を急ぎなさい!」


 ルナの司令が、静かな熱を帯びて響いた。


 巨大魔人の肩に乗ったジーナは、冷徹な瞳で幻影を見つめる。


「幻影だと? 非合理なノイズが、この結界を乱すなど……許されない!」


 ジーナは、メイの影の支援に怒りを滲ませる。


 結界の内部で、メイドたちの愛の独占欲と理知的なサポートが、ミストの狂気に立ち向かう。しかし、巨大魔人の規格外の防御の前に、メイド隊は依然として絶望的な劣勢に立たされていた。


 ルナは、メイの自己犠牲的な支援と、クロエの理知的な愛の限界を目の当たりにし、最終決戦の覚悟を固める。


(志藤様……あなたの優しさが、私たちを非合理的な愛へと駆り立てる。このままでは、愛の暴走が、私たち全員の命を奪う。しかし……この愛こそが、勝利への唯一の鍵)


 ルナは、対結界戦術特化型ライフルを構え、愛の臨界点を見定める。このままでは、悠真の命が危ない。



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