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メゾン・ド・バレット~戦う乙女と秘密の護衛生活~  作者: ざつ


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第29話:日常の崩壊と友人の安否

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 1. 日常の断絶と悠真の孤独


 メイの重傷、そしてソフィアのオーバーホールを受け、セーフハウス「メゾン・ド・バレット」の空気は重く沈んでいた。悠真は大学の講義を欠席し、リビングのソファで膝の上のスライミーを撫でていた。


 彼の心は、護衛隊の危機よりも、大学の友人たちとの関係が完全に断たれたことに深く苦悩していた。ジーナ戦で講堂を襲撃された際、パニックになった友人の顔、そして彼らの記憶を消去しなければならなかった事実が、悠真の平和主義を深く傷つけていた。


(マヤの裏切りは、もう受け入れるしかない。でも、俺を信じていた友人たちまで、この非日常のせいで失ってしまった……)


 悠真は、愛するメイドたちを護るという覚悟を固めても、人間的な孤独からは逃れられなかった。


 その悠真を監視するように、完璧なメイド服を纏ったアベルが、リビングの一角に静かに立っていた。彼女は銀色の短髪で、一切感情の動きを見せない。


「志藤さん。心拍数は正常値。抑止力の安定は確認されました。無駄な感傷は、任務の妨害とみなします」


 悠真は、アベルの感情を排した声に、さらに孤独を深めた。彼女はソフィアとは対極にある、理知的な防壁だ。


 _____________________

 2. 新旧メイド隊の衝突:効率と愛情


 セーフハウスの家事担当には、メイの看病と生体メンテナンスを任務とする正規メイド隊のララが加わっていた。


 リビングに、アリスがフリル付きのエプロン姿で現れた。彼女は悠真の隣に座り、公認の恋人役の特権を最大限に行使しようとする。


「悠真くん、お疲れ様! メイちゃんがいない分、恋人役の私が過剰なスキンシップでメンタルケアをしてあげるね。これも任務よ!」


 アリスはそう言って、悠真の腕に思い切り絡みつく。彼女の過剰な独占欲は、エレノア総帥への牽制であり、ルナへの愛の主張だった。


 悠真は、アリスの熱烈な愛情に、苦笑いを浮かべた。


「あ、ありがとう、アリス。でも、ちょっと疲れてるんだ。少しだけ、腕を……」


 その時、ララが淡々とした声で二人の間に割って入った。


「有栖川隊員。志藤さんの心拍数は、あなたの過剰な接触により非効率的な上昇を示しています。これは健康異常と診断します。直ちに距離を確保してください。私の医療的観点からの効率化が最優先です」


 アリスはララを睨みつけた。


「何よ、ララ! 私は恋人役よ! 悠真くんの精神安定は、あんたの医療データなんかより、私の愛のほうがよっぽど効果的なんだから!」


 ララは冷徹に言い返した。


「愛は、データとして非効率的なノイズです。志藤さんの生体部の汚染リスクを最小化することが、現在の最優先事項です」

「あんたたち、ただの理性的な機械じゃない!」


 その場に居合わせたクロエが、冷静にララを擁護した。


「有栖川隊員。ララ隊員の判断は合理的です。あなたの感情は、総帥のセンサーとして重要ですが、現在の悠真様の精神的疲弊には、理知的な距離感が必要です」


 クロエはララを擁護しつつも、悠真の隣にノートPCを広げた。その距離は、アリスよりもララよりも近い。


「志藤さん。テイム魔物の感情的安定度を測るため、研究という名目で、あなたの体温とフェロモンのデータを収集します。これが、最も理性的で美しい独占です」


 悠真は、クロエの露骨な研究という名の独占欲に、困惑を隠せない。


「ク、クロエ、研究って……そんな近くじゃなくても、データは取れるんじゃないか?」


 新旧メイド隊が入り乱れるリビングで、悠真は誰も信じられない孤独な使命と、過剰な愛の独占欲の板挟みで、深く疲弊していく。


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 3. 小悪魔の心理攻撃とマヤへの警戒


 そこに、シェンが天真爛漫な笑顔で現れた。彼女はルナとクロエしか知らないミストの工作員だ。


「あらあら、みんなお兄ちゃんをいじめてる〜。可哀想なお兄ちゃんのメンタルケアは、可愛いシェンの役目ですよ!」


 シェンは、悠真の隣に座るクロエを押しやり、悠真の腕に抱きついた。


「お兄ちゃん、最近マヤのことばかり考えてたでしょ? あの人、お兄ちゃんの優しさを利用した裏切り者ですよ?」


 悠真は、シェンの言葉に、微かに顔を曇らせた。


「……そうだ。マヤのことは、もう考えないようにしてる」


 シェンは、「お兄ちゃんのメンタルケア」と称して悠真の心に忍び寄り、マヤへの警戒心を植え付ける。シェンの言葉は、ルナやクロエの理性的分析と偶然にも合致しているため、悠真は彼女を疑うことができない。


「お兄ちゃん。優しさは、ミストにとって最大の攻撃ポイントなんです。特に、あの感情的なメイドたちも、お兄ちゃんの優しさに付け込んで、独占しようとしているだけ。ルナ隊長は孤独な司令塔ぶってるけど、本当は一番独占したいんでしょ?」


 シェンはそう囁き、悠真の優しさを攻撃ポイントとして狙う巧妙な心理攻撃を仕掛ける。


 _____________________

 4. 孤独な使命と司令塔の警告


 ルナが、銀色のモノクルを光らせながらリビングに入ってきた。彼女の瞳は、シェンに向けられた冷徹な監視の目だ。


「シェン隊員。志藤様の抑止力の安定は、司令塔である私が管理します。任務外の接触は慎みなさい」


 ルナは、シェンの巧妙な心理攻撃と工作員としての振る舞いを警戒しつつ、悠真に最終的な警告を告げた。


「志藤様、いえ、悠真さん。あなたの優しさは、時には最大の武器となり、抑止力を覚醒させるトリガーになります。しかし、感情の揺れはミストに付け入る隙を与えるノイズです。理性を以て、その優しさを制御してください。それは、貴方にしかできない。でも、貴方ならできるはずです」


 悠真は、ルナの厳しい警告に、頷いた。


「わかってるよ、ルナ。俺も、自分の優しさが原因で、みんなを危険に晒すのは嫌だ」


 ルナは、友人の安否に関するM.A.の極秘情報を悠真に提供し、揺れ動く感情を理性で制御させようと試みる。


「マヤという工作員は、まだ日本国内に潜伏しており、完全に捕捉されていません。彼女は、あなたの優しさを利用し、バレット隊との間に信頼の亀裂を入れることに成功しました。次は、あなたの友人の命を餌に、あなたを極限の絶望に追い込むかもしれません」


 悠真は、ルナの冷徹な使命と警告を受け止める。彼の心は、友人の安否とメイドたちの命がけの愛の間で激しく揺れ動く。


 悠真は、自分の優しさが、どれほど危険なものなのかを改めて自覚する。そして、その優しさを理知的に制御することが、覚醒者としての新たな使命だと悟るのだった。



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