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端街へ

 暗く、冷たい印象のある事務室。移民船「ノア」の修理とテラフォーミングで常にエネルギー欠乏状態にある中央街では、夜間の照明はかなり抑えられている。


 時間は第三の月が中天を通過して一時間ほど経ったあたりか、私は一人の若い技師と二人でこの部屋に入っていた。


「残念だが、君の発見は元老院にとって不都合な事実だった。彼らは計画の見直しをせず。続行することを決定した」


 彼が椅子に座り、私も対面する席に腰掛けたところで、彼に今日の報告会で得られた情報を告げる。


「ふざけないでください! これじゃあ本星に帰るのは不可能です。長距離通信もできない今、定住を目指してテラフォーミングや人類圏の拡大をするべきです!」

「あの老人たちにとって、本星への帰還がそれだけ重要だということだ」


 彼が見つけた冷凍睡眠装置の故障は、修理が不可能である。冷媒が八割以上散逸しており、この星や

「ノア」の設備では、それを再び精製するにはかなり長い時間を要する。


 だが、現状のままでも限られた一部は本星への帰還が可能であり、あの老人たちはその数少ない椅子を独占するつもりだった。


「仕方ないが、分かったところで私にできることはない、だからこれ以上は意味が――」

「場長……まるで今年で五〇歳だから関係ないとでもいうような口ぶりですね?」


 言われて、私は彼の目を見る。その視線は私を試しているようでもあった。


「……それは違う。だが、何ができるというんだ」

「俺ができるようにしますよ」


 私のあきらめにも似た物言いに、彼ははっきりとそう口にした。


「三四年、残りの寿命を場長に託すことで」

「それは――」


 信じられない提案に、私は目を見開く。彼が行おうとしていることは、自殺と同義だ。


「その間に元老院に入り込み、ここを変えてください」


 彼の強すぎる視線に、私は思わず視線を背けそうになる。だが、彼は逸らさせてはくれない。その力があった。



――



『洋服コンテナがある理由、分かりましたね』

「ああ」


 まさか全裸にさせておくわけにもいかず、俺はケイに着替えを任せて、そっぽを向いていた。ちなみに今はドローンのスピーカーを使って発話しているので、俺がうわ言を喋っているようには聞こえないはずだ。


「可塑性の粘液のような生命体……初めて見ます。ノアのデータベースにはこのような存在はありませんでした」

「まあそりゃそうだろうな、ノアのデータベースにはこのエルシルの情報はない筈だ」


 ジャンヌと名乗った少女に言葉を返して、俺は考える。回収を頼まれていたのは中央制御端末の制御キーとのことだったが、余計なものを弄ってしまったらしい。


「エルシル? 何ですかそれは、私達の目的地はαケンタウルス――」

「墜落したんだよ、百年前に」


 このまま捨て置くのも夢見が悪い。俺は心底面倒だと思いつつも、彼女に現状を伝え、端街まで送り届けてやることにした。住人たちに引き継げば、そう悪い事にはならないはずだ。


「――そういう訳で、俺たちは仕事の途中だ。中央端末の起動キーさえ手に入ったら端街まで送ってやるから大人しくしてろ」

「あ、それ私です」


 一通りの説明を終えた後、部屋を出て行こうとするとジャンヌは噛み合わない返答をした。ノアのデータベースから切り離された影響で、知能にバグが残っているのだろうか。


「……どういう事だ?」

「だから、私が中央制御端末の認証キーです。私達エルフの生体情報がキーになってノアの管理をするようになっています」


 確かに、ノアの制御がどのように行われているかは俺も知らないし、現存している多くの人間にとって知られていないことだ。だから、彼女がそう言ったところで俺たちにとっては真偽を判定できない。だが……彼女が嘘をつくメリットはないように思えた。それに、状況的には真実である可能性がそれなりにあった。


『じゃあ「墜落時に紛失した」っていうのは……』

「そういう事だろうな」


 墜落の衝撃は語るまでも無い。その衝撃を生き残れるとしたら、コールドスリープを行っていた人類だけだろう。もし制御キーが生体認証によるものならば、キーとなる生体は生きていられるはずもない。


「なんにせよ、後はこいつを依頼者のもとに送り届ければ終わりか」

『想像以上に変な依頼でしたね』


 ケイと言葉を交わすと、彼女は俺の体内へ引っ込んでいく。


「貴方――えっと」

「バイルだ。そんでこいつはケイ」


 そう言えば自己紹介をしていなかったなと思い。俺はケイを手首から覗かせて、挨拶をした。


「あ、はい、バイルさん。現地の人間は原住生物を体内で飼っているのですか?」

「いや、色々あって共生関係になっている……ああ、そうだ。端街では黙っといてくれよ。原生生物を身体に飼ってる人間なんて、近くに置いときたくないだろうしな」


 そう言って、俺はジャンヌを連れ、部屋を出て出口へ向かおうとする。


――バイル。依頼の目的を考えると、このまま帰っていいのか不安が残りますが。

「……そうだな、少し細工していくか」


 踵を返して、ジャンヌを生成した端末を少しだけ弄ってから電源を落とす。重要施設で、尚且つ最低限の役割を果たした今、再起動にはそれなりの手順が必要なはずだ。あとは変電室で主電源を無効化した後、悠々と二輪車を回収して帰ればいい。



――



「ここがエルシル……確かに、気温や大気組成を見るに、人類には暮らしづらそうな環境です」


 ジャンヌが額の汗を袖で拭って呟く。たしかに成長するまま伸び放題だった髪や、移民船時代の服では、この気候はかなり堪えそうだった。


「端街まで戻ったら服と髪は何とかしてやる。お前自身もさっさと慣れ――いや、慣れる必要もねえか」

――どうせすぐ中央送りですからね。


 依頼者はどうせ場長——いや、中央街のお偉いさんだろう。取次役のウィルから言われた通り「使い捨てはそんな事を考える必要はない」って奴だ。生身の女、しかも俺より年下っぽい見た目の奴なんて、どう接していいかもわかんねぇしな。


 そういう訳で俺たちは二輪車を改造している。民生用の中古品汎用動力では、俺とジャンヌを乗せた上で原生生物から逃げ切るのは至難の業だからである。そういう訳で、俺たちは機能停止したドローンから動力バッテリーとフレームを拝借しつつ、ケイと一緒に二輪車の改造にいそしんでいた。


 改造自体はそこまで難しくはない。ボルトやナット、溶接の必要はなく、ケイの身体が内部を侵食することで接着され、その上である程度の制御は彼女がやってくれる。なんとも簡単な仕組みである。


「よし、こんなもんでいいか」

――パーツが意外と余ったので、ちょっと張り切っちゃいましたね。


 俺とケイは出来栄えに満足すると、ジャンヌに乗るよう促した。


「これは――」

「文句は言うなよ。だめなら徒歩で帰る羽目になるからな」


 冗談っぽくそう言って、俺は二輪車にまたがる。二人でタンデム……なんてことも少し考えたが、重心が高くなりすぎるため却下した。


 改造した二輪車は、元々あった二輪車の側面にもう一つ車体をつなげたような形をしており、そちらに補助動力とジャンヌの座席を作っておいた。これなら端街まで問題なくつけるだろう。あとは――


「わぷっ」

「それを頭からかぶっておけ、日焼けしたくないだろ」


 二輪車の収納スペースから大きめの布を取り出して、ジャンヌに掛ける。まあ端街に帰れば物珍しさから寄ってくる住人もいるだろう。そういう意味でも姿を隠せるように布を被せておきたかった。


「……被りました」

「よし、じゃあ行くか」


 ジャンヌが頭から布を被ったのを確認して、俺はスロットルを回した。

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