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6 海辺の街で(後)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。


今回は4作目となります。

大枠の想定には沿って進んでくれているのですが、けっこう登場人物が自由に動いたり、下書きを書き終えた後、この時にこのエピソード入れたいなとかもあったり。相手のこの感情ゆえのしぐさや表情をこの段階のルティならどう受け取るかと調整して、投稿することが続いています。


ルティが育ってきた環境は特殊で、人として何かしら欠落している感情や思考の中で、他人の感情を細かく拾うのが難しいところがあります。

今回はだんだんルティ自身が自分のことに気が付くきっかけとなる話(ショック療法?)です。


あきれずに最後までお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 フェイトとレイが買い物に行っている間に私はおとなしく部屋で本を読んでいた。

 

 フェイトが値切ってくれた魔道具の本だ。


 パラパラめくっていると、髪の毛の色を変える魔道具のページがあった。

 仕組みとしては魔石と同じ色を付ける力を使い、身体の髪や毛を選んでその魔石の色をごく薄く表面に覆う感じらしい。色彩は不透明なので、私のような青い髪でも緑にはならずちゃんと黄色、金髪に見える。

 ふーん、不透明なのか。だと目の色とかはこの方法では色を変えることはできない。


 簡単に落ちたりしないようにピアスとして着用することが多いと書いてあった。

 ピアス……。耳に穴開けて飾りつけるのだな。

 私の耳、穴開けてないから、フェイトは指輪をわざわざ探してくれたのだろう。


 フェイトを思い浮かべて、あれっと思った。

 フェイトも左耳だけに小さいピアスしている。同じ黄色の魔石の。


 フェイトも、髪の色を変えてるのかな?


 フェイトとレイが帰ってくる間にギルドの人が部屋を訪ねてきて、ガルライア王国の高貴な方がこの街に逗留中で、噂の魔法使いに会いたいと言っていると伝えられた。


 ガイルが丁重に「魔法使いは魔力の使い過ぎで休んでいますので、申し訳ありませんがお断りします」と断ってくれた。


 ありがとうガイル! やっぱり、頼りになる!!


 フェイトとレイが帰っきて、クラムのシチューと、焼いたタラバンを買ってきてくれた。

 あと、パンとネーブルという果物を多めに。


 みんなで2人部屋で食べる。


「これなら4人部屋でも良かったな」とガイルが笑った。


 クラムのシチューはとても美味しかった。野菜もいっぱい入っていて身体に良さそう。

 タラバンは焼けているのに、身に水分があるので蒸し焼きみたいな感じで塩味が聞いてるのに甘い感じもして美味しい!


 海の食べ物は味が濃い目だけど複雑な味わいがありとても美味しいんだとわかった。


「クラムもタラバンも美味しいね! 初めて食べたけど、とても美味しい!」

 私がみんなにそう言うと、みんなも頷いてくれた。


「話しておくが、さっきギルドからルティに会いたいという高貴な方がいると伝言が届いた。

 体調を崩し休んでいると断ったが、また明日連絡が来るかもしれん。やはり早めに移動した方がいいと思う」


「朝食前に出るか?」とフェイト。

「そうだな、人が少ない時間帯の方が出やすいだろう」とレイ。


「では、明日早朝、ギルドの朝食が始まる前に手続きをしてここを出よう」

「ごめんなさい、迷惑かけて……」

 私は謝った。魔法を間違えなければここまで注目を集めることも無かったのに。


「気にするな! 自分で身を守ったんだから、自信を持て!」

 私の隣に座るフェイトが言ってくれた。


「そうです。あの場では短槍を投げることができず、見ているしかできなかった……。

 こちらが謝らなくてはいけませんでした。ルティ、守れず申し訳なかった」

 レイも申し訳なさそうに謝ってくれる。


「いや、私が自分の魔法を過信して立ち止まったからだよね。

 たぶん、レイとフェイトのところまで逃げていればレイは投げることできたと思うよ。

 私に当たる可能性も考えて迷ったんだろうし……。

 フェイトも自分がまきこまれるかもしれないのに、近くまで助けに出てきてくれてたよね。

 ふたりともありがとう」


 レイとフェイトが部屋に戻り、明日出発の準備をしていたら、フェイトだけ戻ってきた。


「ガイル、ちょっとだけルティに外を見せてやりたいんだが、ダメか?」

「……どこに行くんだ?」

「夜の海と出店の市場、にぎやかできれいなんだ」

「そうだな……。なら、フェイトの上着をルティに貸してやれ。フェイトには俺のを貸す。 

 ルティ、念のためフードを被るか、ターバンを巻いた方がいいかもしれん。すぐ戻れよ」


 私は髪を結んでターバンを軽く巻いた。前のように全部の髪や目までを隠さなくていいのでそれは楽。

 フェイトの上着を借りて羽織る。袖を折り返せば動きやすい。

 上着が大きめなので太刀もけっこう隠れる。


 フェイトと部屋を出て夜の街に出た。

 フェイトがフードを被り、私の手を握ろうとして、やめた。


「手をつなぐのは嫌なんだっけ?」

「うーん、暗いからな……」


 私は夜の暗さと周囲のにぎやかさに不安になった。


「手を握るんじゃなくてつかまっていい?」

 私はフェイトの着ている上着の脇腹のあたりを右手でつかんだ。


「動きにくい?」

「いや、大丈夫だ。絶対離すなよ」

  

 手をつなぐより身体の距離が近いので温かい気もする。


 出店を見ながら海の方へ行く。

 砂浜は危ないので流木置き場の方を少し歩いてみることにした。


 流木置き場の近くに大きな建物があって、そこがこの街の高級な宿屋やレストランの建物のようだった。

 

 私達は建物の外側に柵のように植えられている植え込みを背にして座ると夜の海を眺めた。

 

 波の音が近くに聞こえて、遠くから楽しそうな人の声や市場の売り子の声が時々かすかに聞こえて、街全体が息をしているみたい。


 ひとりだったら、いつものように自分だけその世界に入れてもらえない感覚がして、怖かったかもと思った。


 フェイトが隣にいてくれて良かった。


「フェイト、ありがとう。素敵な思い出だ」

 

 私は心からそうお礼を言った。


 フェイトが何か言いかけて口をつぐんで、私の口をふさいで身をかがめるようにした。


 背後の植え込みの向こうに人の気配がした。

 庭に出て海を眺めに来たのだろう。


 私もフェイトに寄り添うように身をかがめた。


「今日会った王女はどうだった?」

「うーん、普通だな。お前こそどうなんだ? リーンハルトの婚約者候補だろ?」

「いや、私よりウィリアムの方に興味を持っていたぞ」

「ははっ、私にはもう婚約者が決まってるがな。しかもあのドーワルトの王女の妹に当たるはずだ。それを知らないはずではないが、確かに私を目で追っているように思えたな」

「引きこもりの第2王女……ルクレティアだっけ?

 アルタイルに向かっているという連絡があったきり、まだよくわからないんだろう?」

「ああ、5歳の時の絵姿しかないと言われて……。まあ、人質同然の政略婚だ。放っておいてもかまわないんだが……。少しは情報があるかと思って、お前の婚約者候補ドーワルト第1王女シュリーベルに会ってみる気になったんだがな……。全く情報なかったな」


 自分の名前が出て心臓がバクバクした。

 シュリーの名前を10年ぶりに聞いた。ここに船で来ているのか?

 シュリーがガルライアの婚約者候補?ということはこの声はガルライアとアルタイルの貴族か王族のふたりの会話なのか?


 人質って結婚しなきゃなのか?

 それは聞いてないぞ?


「それより、砂浜でのサンダーの魔法使い、体調を崩しているって本当かな?

 今までわが国でまったく聞いたことないんだが人物なんだが……」

「異国の服装をした少女だと聞いたな。私はシュリーベルやルクレティアより、その魔法使いの方が気になるね」

「強い魔法を使える少女か……。ここのところの聖女候補も強い魔法を使える者がいないしな。

 もし会えたら、私のお抱え魔法使いにしたいところだ」

「リーンハルト、お抱え魔法使いか? 側室だろ? 魔力が強ければそういう使い道もある」

「やはりウィリアムはそう考えるか。正室がいないのに、もう側室2人もいるしな」

「そうだな。だからかドーワルトが和平条件として王女を出してきた。それも情報がほとんどない第2王女だ。まだ15歳だし、本当に実在しているのかすらよくわからん」


「その王女様も災難だな、ウィリアムみたいな腹黒な奴が相手で」

「何を言うか、私は女性には優しいぞ……、私の言うことを聞いている限りはな」


「冷えてきたな……。その魔法使いには明日また使いを出すつもりだ」

「私もぜひ会ってみたいな」

「本音を言うと、アルタイル国王子のウィリアムには合わせたくないよ。うちの国の聖女候補を落としてアルタイルに強引に連れ帰り、側室にするぐらいだからな……」

「だから私は女性には優しいと言っただろ」


 ふたりが立ち去る気配がした。


 ちょっと待て、情報がたくさんで整理できない。

 ガルライア王国の王子? がリーンハルト。

 アルタイル王国の王子がウィリアム。


 で、姉のシュリーがリーンハルトの婚約者候補で、ウィリアムの方に興味を持ってる?


 で、私がウィリアムの人質婚約者で、ウィリアムにはもうふたりの側室がいる?!


 なんだこれ?

 

 さーと血の気が引いた。


 私は5歳の時から自分はこの世界の外にいると思っていた。

 入れてもらえないのだと。

 ゆえに人質と言われたときに女として利用されることを全く考えていなかった。


 えっ、私、かなりやばそうなこのウィリアムという声の人と結婚……しなきゃならないのか?


「……大丈夫か?」

 フェイトがかなり心配そうに私を見ている。


 気が付くと私は震えていた。


「……人質って政略結婚の意味もあったんだね。全然考えていなかったよ……」  

 敢えて笑おうとしたが、笑い声すら出ない。


「ごめん、フェイト、ちょっと、どこじゃないぐらい……、頭で理解できない」

 

 フェイトにしがみついて目をつぶる。


 落ち着け、落ち着け、落ち着け……。


「嫌だったら泣いていいんだぞ。我慢することない。逃げたっていい。俺が守る」


 フェイトが急にそんなこと言うからまた気持ちがぐちゃぐちゃになる。


「フェイト、ごめん、少し待って……」


 フェイトに謝りながらもう少し落ち着くのを待ってもらおうと顔を上げてフェイトの目を見たら、もうだめだった。


 涙が目から溢れてくるのがわかった。


「ルティ……」

「ごめん、バカだよね。人質なら、そういうこともあるって考えるべきだったのに……。

 それが現実となると、なかなか受け入れられないね……。

 うん、大丈夫。アルタイルに着くまでには、何とか受け入れる」


「ルティ、嫌なら受け入れることなんてない! とりあえずここから移動しよう」


 フェイトが抱えるように立たせてくれ、支えてくれる。


「いいの? アルタイルに着くまで、フェイトと一緒にいていいのかな?」

「いるから。ずっと一緒にいるから。お前が嫌だって言っても一緒にいてやる」

「……なんだそれ」

「気にするな。自分のことだけ考えろ! いや、今は何も考えるな!」


 宿泊棟の部屋に戻ると、私は上着を脱いで太刀を外すとベッドにもぐりこみ寝てしまおうとした。

 ダメだ、寝られない。


 シクシク泣いている私を気にしてフェイトが頭に右手を置いてよしよしと撫でてくれている。

 私はフェイトの手をつかんで自分の左頬に押し付けた。

 フェイトは右手は私に預けて、左手でよしよししてくれる。


 フェイトで私の頭がいっぱいになったので寝られそう。


「フェイト、ありがとう」

 そう呟いてから、眠りに吸い込まれるように落ちていった。

読んで下さりありがとうございます。

次も頑張ります!

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