5 海へ(前)
やっと4人での旅が始まりました。
移動日数を数えて、あー、早く移動しないと話が進まない!! とちょい焦っています。
早く海に着きたい……。
今回はかなり登場人物達がガンガン勝手に動くので(特にルティとフェイト)話が長くなりがちです。
あきれずに最後までお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
「なんでフェイト達までついてくる?!」
「……借金踏み倒さねえか見張ってる」
「そんなことしない!! すぐ返す!」
買取の倉庫に行くと「またあんた達か!」と言われる。
「買取お願いします」
アイテムボックスから開きにしたサンドワームを3匹出した。
「これで3000ルアンになりますか? 足りないならまだある!」
「サンドワーム!! ここらでは珍しいな。このサイズなら……。
この2体は小さいサイズだから1000。この1体は大きいから1500でどうだ?」
「えーと、3500ルアン! お願いします!」
買取の手続きが終わってそのままフェイトに3000ルアン返す。
「お金貸してくれてありがとう。それと魔道具のこと教えてくれてありがとう」
フェイトはしぶしぶ受け取った。
『呪われた王女様は髪の色を変える魔道具を手に入れました』
「この500ルアンは路銀の足しにして」
「このサンドワームは……?」とレイがお金を受け取りながら言った。
「寺にいる時、砂漠で人が襲われるのでよく狩ってた。
ひとりの時にやっつけたのはアイテムボックスに入れてたからまだある」
「サンドワームをひとりで狩ってたのか!!」
ギルドのおじさんが驚いて言った。
「動きが単純だから、慣れれば難しくないよ」
宿泊棟に戻って、ガイル達の部屋でなぜ借金したのかということを話す。
フェイトがずっと不機嫌だった。
なぜだ? 借金はすぐ返したぞ。
「というわけで、旅の安全のために、フェイトに教えてもらって髪色を変える魔道具を買えました」
ターバンを外す。
「金髪になってる?」
「ああ、大丈夫だ。これなら、髪を気にせず旅ができるな」
レイが喜んだ。
「なら、今日からルティは俺の妹ね」
フェイトが急に変なことを言い出した。
「ん?」
「この髪色と目の色! レイより俺の方が兄さんとして自然だろ!!」
「ん? なら、茶色を勧めてくれれば良いのに……、はっ!
借金させるだけでなく、それが狙いだったのか?! 二重の罠!!」
「お前ら、面白すぎっ!!」とガイルが大笑いしている。
「ガイル、なんで笑う?」
「そうだよ、全然笑えねえよ……」
フェイトはまだ不機嫌だ。
レイもよくわからないという顔をしている。
「オレよりは自然……」
「レイ!」
私が途中で遮るがフェイトが身を乗り出してきて、レイの目を見て言った。
「お前ら本当の兄妹じゃないんだろ?」
レイが目をそらす。
ダメじゃん。
結局、レイは自分はドーワルト王国の隊士でアルタイル王国に人質になる王女を連れて行く途中だと言わされてしまった。
ガイルが唸った。
「アルタイルとドーワルトでそんなことが起きてたなんて……。
それにしても国から捨て置かれたような状態だったのに、よく人質になるのを承知しましたね……」
ガイルの言葉使いが変わってる。それが悲しい。
「アルタイルに着くまでは、ルクレティアじゃなくて、ただのルティだから。
旅を楽しみたい。海も見たいし、魔物も狩りたいし、フェイトに連れてってもらったみたいに、いろいろなお店を見たりしたい……」
「……お前は人質にならないんだったら、何になりたかったの?」とフェイトが言った。
フェイトは言葉使い変わらないな。良かった。
「私のなりたかったのは……勇者だ。
呪いのおかげで魔法が使えて、自分以外の人を守れるような力も得ることができた。
だから憧れてた物語の勇者のように人を助けたいと思っていた。
人質に行くことでドーワルトの人達を助けることになるから、似たようなものだろ?
そう思えたから、人質になることを了承した」
「でもさ、ドーワルト以外では呪いじゃなくて女神の加護になるんだぜ。聖女として崇め奉られる立場だよ」
「まだあともうひとつ呪いがある。それはどうせ変わらんから聖女にはならない」
「もうひとつの呪い? なんの?」
「……言わない。これは本当によくわかんなくて……。どうなるか誰にもわからないから」
「言ってみなよ。何かわかるかもしれない」
「嫌だ。言いたくない」
フェイトと睨み合う。
「わかった!! では明日、エーテスに向かうとしよう。
朝食を食べたら出発。エーテスまでは3日間の旅だ。
最低2泊は野宿になる。食べ物はさっきレイと用意した。
ルティ、アイテムボックスを使わせてくれると助かる」
ガイルが私を見て言ってくれた。ほっとする。
「ありがとう、ガイル。うん、喜んで!」
「これから各自準備して、夕食と朝食はギルドで食べよう。夕食の時、迎えに行くから部屋にいてくれ」
『呪われた王女様に旅の仲間が増えました。そして念願の海へ向かいます』
「世界が見やすい……」
エーテスへの道を歩きながら、開けた視界に感動した。
長い金髪を後頭部で紐でくくって折り返してまたくくった。
今度、誰かにみつあみというのを教えてもらいたい。
ガイルとレイはできないだろうな。フェイトは器用そうだし、もしかしたらできるかも?
「フェイト、魔道具教えてくれてありがとうね。世界が見やすくなった!」
「ああ、良かったな」
フェイト、まだ不機嫌だけど、話しかけたらちょっとうれしそう。
「あのね、フェイトみつあみできる?」
「……みつあみ? 髪の毛を3つに分けて編むやつ?」
「それ、できる?」
「それしたいの?」
「うん」
「今の髪型もかわいいよ」
「そう、これ、ドーワルトの小さな男の子の髪型だよ。
男の子は成人すると髪を肩まで短くして、レイみたいに後ろにひとつに結ぶんだよ」
「女の子は?」
「女の子は、私は5歳までそのままたらしてた。
寺ではこれしてて、青くなってきてからはひとつに結んで丸めて上からターバンしてた。
女の子は……、寺の近くの市場では、たらしてる子と結んでる子がいたかな。
大人になると結い上げてる人が多い」
「へー。みつあみは?」
「みつあみは物語に出てくる魔法使いがしてた。あと、女の騎士も! だからしてみたい!
フェイトできるなら教えて?」
「……どうして俺が?」
「だってガイルとレイは無理そうだから。
フェイトは髪長いし、器用そうだし、できるかなあと思って」
「……お前の中で俺ってどんな立ち位置なの?」
「うん? 立ち位置?」
「いや、いいよ。後で教えてやる」
「ルティ、フード被れ」
ガイルがそばに来て言うので、あわてて上着として羽織っていた砂防フードを頭に被る。
「何?」
「後ろからちょっと柄が悪そうな連中が来てる。フードを被って男のふりをしてた方がいい、フェイトから離れるな」
「「わかった」」
私とフェイトの両方が返事した。
「女だと旅も気をつけなきゃいけないことが多いんだね」
私はため息をついた。
ガイルの言う柄の悪い連中は、冒険者6人のグループだった。
確かにあんまり良さそうな人達には見えない。
歩きながら酒を飲んでる人もいた。
私達は道の端に寄り、歩みを遅くして先に彼らを通すことにした。
こちらをじろりと見てきたが、ガイルが強そうだし、レイもフェイトもまあまあ強そうだし、関わるのはやめようと思ったようだ。
しばらくしてから「まだ先で出会うかもしれないから、フードは被ったままにしておけ」とガイルが言っている時、後ろからを馬車が来た。
商人の家族だった。
御者台にお父さん。隣に私くらいの女の子。
馬車の後ろから、荷台にお母さんと小さい子どもが2人乗っているのが見えた。
子ども達がこちらに手を振っている。
「大丈夫?」
私は心配になってガイルに聞いた。
「あの馬車、襲われない?」
「うーん、ずいぶんと不用心だな……」
ガイルが唸りながら言った。
「馬車だから安心だと思っているんじゃないの?
でも、あれじゃあ、男はひとりで後は女子どもだとバレバレだよな」
フェイトもあきれたように言った。
「追いかけよう」
私が歩くのを早めるとフェイトが止める。
「襲われると決まったわけでもなし、気にしてもしょうがない」
「でも……」
フェイトがため息をついて言った。
「まあ、それで気が済むなら、気持ち早めに歩くか?」
「うん!」
私達はちょっと早足になり進んで行く。
馬車が停まっているのが見えた。柄の悪い冒険者がふたり確認できた。
馬車からお母さんと子ども達が無理やり降ろされてるみたいだ。
私は走り出す。
「おい、待て!」
フェイトの声が聞こえたけど、待てない。
冒険者達がこちらに気が付いて、びっくりした顔をしている。
私はそのまま走って、お母さんの腕をつかんでいる冒険者の手首をつかんでひねりながら、そのまま両足で顔に押し乗った。
その冒険者はお母さんから手を放し、地面にすごい音で頭を打ち付けて動かなくなった。
お母さんが「子どもが!」というので視線を追うとひとりの子どもを抱える冒険者と目が合った。
「来るな! 子どもがどうなっても……」
その時、ちょうどフェイトがその男の後ろにたどり着いて後ろから頭を殴った。
同時に走り寄って体勢を崩す男の手から子どもを助け出した。
「お前な……」と言いかけるフェイトはうっちゃいといて、お母さんのところに子どもを連れていく。
もうひとりはまだ馬車の中にいたみたいだ。
お母さんと子どもふたりが抱き合う。
お父さんと女の子は?
ガイルと冒険者の争う声が道から外れた向こうから聞こえた。
そちらの方に行こうとしてフェイトに止められる。
「お前はここにいろ! いいか! この家族3人を守れ! まだ4人いるんだぞ!」
「う、わかった……」
フェイトは手早く倒れているふたりの腕を後ろに回して縛り、両足も縛って転がす。
「様子見てくるから、ここにいろ!」
「馬車の中で休みますか?」
私はお母さんに聞いた。
お母さんが頷いたので、馬車の中へ子どもとお母さんを戻して、馬車の周りを警戒する。
争う声がこちらに近づいてきて、ひとりの冒険者が道に飛び出てきた。
剣を抜いている。
こちらに気が付くと馬車を奪おうと考えたのか御者台の方へ走ってくる。
私は御者台の方へ移動し、立ちはだかる。
男がひるんだが、こちらがまだ若いと気付いて気を取りなおしたようで剣を振り上げて打ち下ろしてくる。
「おらあ!」
大振りだ。これならすぐ避けられる。
地面に男の剣がガシャン!と音を立ててぶつかった。
剣を持つ手の上に私の手を重ねて押さえるようにする。これで頭の位置が一瞬固定される。
足を振り上げてその勢いのまま回転させて蹴り下げる。
男は斜めから頭を地面にぶつけ、呻いて地面に転がる。
「ルティ! 大丈夫か!」
レイの声が聞こえた。
「大丈夫!」と返事する。
どうやって手足を縛るのだろう?
フェイト上手かったな。やはり器用なんだな。
ガイルとフェイトとレイがひとりずつ引っ立てて出てきた。
後ろからお父さんと女の子も出てきた。
お父さんは殴られたみたいで口から血が出てるし、服も汚れて破れていた。
女の子はおびえているけどケガはなさそうだ。良かった。
倒れてる男もフェイトが縛ってくれた。
お父さんはこのまま旅を続けるのは無謀だとわかったようだ。
馬車で一度キントに戻るというので、ここに冒険者を縛って転がしとくので捕まえに来るように警備隊に連絡するように伝えた。
そのまま、私達は先に進むことにした。
ガイルが怖い顔をして言った。
「ルティ、次同じようなことがあっても、ひとりで突っ込むのはやめろ。絶対行くな。
今回は相手もそこまで強くなくて良かったけれど……。必ずこの中の誰かと組んで行動すること。これだけは守ってくれ!」
「はい……。ごめんなさい」
私は素直に謝った。
「だめだよ、こいつ、またやるよ」
フェイトがあきれたように言った。
「気を付ける!」
「たぶん、またやる!」
「もうしない!」
「じゃあ、絶対俺を置いて走るなよ!!」
「……」
「ガイルには素直なのに、なんで俺には素直じゃないの?!
あー、そういう態度なら、みつあみ教えてやんねーからな!」
「!! ごめん、フェイトを置いてかない! だから、みつあみ教えろ!」
「教えて下さいだろ!」
「ぐぬぬ、……教えて下さい。後、人を縛るのも教えて下さい!」
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!




