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24 夜会(前)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。

最後の方で登場人物も多いので、丁寧に描写を重ねています。

最後までお付き合いいただけるとうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 ホアン兄様とシュリー姉様はドーワルトが使用している部屋に戻った。


 私はほっとして、足の力がちょっと抜けてよろめいた。

 フェイトが支えてくれる。


「よく頑張ったな」

 頭をよしよしされて、じわっと涙がにじんできたが、にっこり笑って見せる。


「ルティ! 偉い、よく言ってやった!」

 アルテミスお姉様がフェイトを突き飛ばす勢いで抱きついてきて褒めてくれた。


「よくやった!」

 ウィリアムも褒めてくれる。


「いや、なかなかあきらめてくれないから、宮殿の部屋燃やしちゃったらどうしようかとひやひやしました……」


「ムーランが直すから大丈夫だ。気にするな」とガイルが言ってくれ、みんなで笑った。


「さて、後は和平会合できっちりルティをムーラン帝国に連れていくことを決めるからな。

 アルタイルもガルライアも味方してくれるから、大丈夫だ。安心しろ」とフェイトが言った。


「それにしても……、ドーワルトの慣習なのか、実の妹を妃にするなど、実際にあり得る話だというのが驚きだ」

 ウィリアムが怒りをにじませながら言う。


 魔力の高い子を産ませるために他の国の聖女候補を側室にしたあなたが言うか?


「未婚のくせに側室がふたりもいる奴には言われたくないだろうなー」

 フェイトが私の心を読んだかのように言った。


「うっ……。お前、本当にサーザみたいなこと言うな……」


 ムーラン帝国の大使館に戻り、心底ほっとした。


 でも、まだ夜会がある。

 親善のためのパーティーだから、4カ国の使節や皇族、王族、それにアルタイルの高位貴族も参加するようだ。

 ドーワルト王国のホアン王太子、シュリー王女ももちろん参加するし、気は抜けない。

 でも、王太子があんな感じで本当に和平会合とかできるのだろうか。

 

 本当に和平を望んでいるのはどちらかというと第2王子であるジーン兄様の方なのかも。


 ジーン兄様はシュリーの2歳上の兄で、子どもの頃はシュリーと一緒に私に意地悪をしてきてはいたが……シュリーほどではなかった……。


 いや、辺境の寺に養育費や食費すら送ってこなかったのはドーワルト王家だ。

 全員、許すまい。うん。


 昼食を済ませて、今度は夜会の用意だ。


 アルテミスお姉様の見立てたドレスを着て、髪を結ってもらい白い竜の髪飾りをつける。

  

「サーザの仮面とデザインを似せてと考えたんだけど、うん、似合うね」

 お姉様が満足げに頷いた。


 お姉様もムーラン帝国のドレスだが、髪飾りやピアスに金の薔薇のモチーフをつけている。

 今まで見たことない。


「金の薔薇の飾りも素敵ですね!」

 私が言うと、お姉様はちょっと赤くなって答えた。


「ウィリアムからのプレゼントなんだ」


 ほー。ウィリアム、やるじゃん。

 お姉様が幸せそうだから、今のところ許す。


 私はピアスをしていないので、白い石のイヤリングをつけることになった。


 ムーランの皇太子というか王家の色は『白』なんだそうだ。

  

 白い竜が祖先という伝説があるそうで……。


 白い竜?

 あれ、白い竜って私の加護の?


 じゃあ、ムーラン帝国に来るのはそういう運命だったってことか。


『我の一族とともに歩む道を選んで欲しい』


 白い竜の言葉が思い出された。

 その通りになってる……のか。


 ピヒラのペンダントは赤い魔石なので服の下に隠すことにした。

 直に肌に触れている方がほんのり温かくて安心できる。


 馬車に乗りまた宮殿へ。

 今度はフェイトの代わりにサーザ皇太子が一緒だ。


「今日はよろしくお願いします」と私は挨拶する。


「何か気を付けた方がいいことはありますか?」と質問すると皇太子が首を傾げた。


「あの、仮面で視界が狭いとか、ないですか?  

 私もターバンで上半分顔を隠していたことがあって、視界を魔法で確保したりしてたので……」


「大丈夫だ、仮面の目のところに穴が開いている。見える」

 

 えっ? どこに?

 外から見てると全然わからない。


 じーっと見ていると皇太子が私の目の上に手を当てて「そんな見るな」と言った。


 失礼だったか!


「失礼しました」と謝り前を向いた。


 アルタイル宮殿に着くとウィリアムが出迎えてくれてムーラン帝国の控室とされた部屋に案内してくれた。


 先ほどのドーワルトの使用している部屋とは反対の棟だ。

 ちゃんと配慮してくれてる。


 そこにウィリアムとよく似た緑の大きな瞳をした金髪の女性がいた。私より年上だ。


「アルタイルの第1王女エリザベスだ。エリザベス、こちらドーワルト王女で今はムーラン帝国と一緒にいるルクレティアだ」

 ウィリアムが私に紹介してくれる。

 

 そうか、みんな幼馴染なんだっけ。


「ルクレティアです。よろしくお願いします。ルティとお呼び下さい」

「あなたがルティね。どうぞよろしく。

 アルテミス、サーザ、お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」


 お姉様がエリザベスと話を始める。


 私は窓の方へ行き外を眺めてみた。

 夜会の会場のホールが近い部屋なのでホールと庭が良く見える。


 緊張してきた。


「大丈夫だ」

 皇太子が後ろに来ると肩に手をかけて励ますように言ってくれる。


「この夜会は親善のためのもので、私達は客として参加して楽しめばいい。そう気を張るな」

「はい。そうですね。ありがとうございます」


 その時、ウィリアムとエリザベスが主催のためホールに移動する時刻になったそうで、慌ただしく出て行こうとした。


 ウィリアムが立ち止まり、お姉様を見て「一緒に行かないか?」と誘った。


 お姉様は私を見た。

 皇太子が「行っていい。私がいるから」と言った。


 お姉様は頷いて、ウィリアムの手を取ると部屋を出て行った。


「少し会場の様子を見てきます。部屋の外にムーランの騎士がいますから、何かあれば彼らに言ってください。すぐ戻ります」とガイルも部屋を出て行く。


 えっと、皇太子と何か話した方がいいのか?

 何話す?


「皇太子殿下は……」と言いかけて何も思いつかない!


「サーザでいい」

「えっ!」

「だから、サーザと呼べ。いいな」

「……はい、わかりました。あの、サーザ様、パートナーが私でいいのでしょうか?  

 エリザベス王女のほうが良かったのでは?」


 サーザ様が私の肩にかけていた手に力が入る。

 

 ん、私、何か悪いこと言っちゃったのか?

 エリザべス王女と以前何かあったとか?


「ルティが良かったんだ」

 ちょっと機嫌が悪そうな声。


 あれ?

 この機嫌が悪い声?


 私は思わずサーザ様と向き合い、下半分しか見えない顔を見つめる。

 

 フェイトの左耳の黄色のピアス。

 その場所には違う白いピアスが輝いている。


「……だから、そんなに見るな」


 サーザ様の左手が伸びてきて目の上に当てられる。


 私が顔を下に向けると左手が頬に移動し、少し留まってから離れた。


 その時、ガイルが戻って来て「そろそろ入場しよう!」と言った。


 サーザ様にエスコートされて歩きながら、私の頭の中はぐるぐる忙しく動いていた。


 サーザ様がフェイト?


 今までの旅の中でのフェイトとガイルのやり取りが思い出される。

 ガイル、フェイトの希望をけっこう聞いていたよね。

 お金のことも、言い合いした時、フェイトが自分が払うみたいなこと言ってた。

 それは、フェイトが皇族に近い人だからと後でわかって納得していたような……。

 

 でも、ふたりが揃って現れることはない……。


 なんだろう?

 なぜだ?


 私達はホールの中に足を踏み入れていた。

 周囲の人達に会釈しながら、奥へ進むとウィリアムとお姉様がいた。


「来たな、サーザ」とウィリアムがにやりと笑い、お姉様は微笑んだ。


 ふたりの前で私達はムーランの礼をしてから、すぐそばのテーブルに案内された。


 サーザ様が椅子を引いてくれたので座る。


 ウィリアムが夜会の参加者に明日の和平会合がこの4カ国に和平をもたらすようにと希望を込めた挨拶をし、夜会が始まる。


 給仕が飲み物を運んできてくれ、サーザ様が私にジュースを選んで手渡してくれた。


「ありがとうございます」

 一口飲んでちょっと落ち着いた。


 そうだよ。考えてもしょうがないじゃん。

 フェイトが言ってくれるまで待つって決めたんじゃん。うん。


 それに、サーザ様とフェイトが同一人物だとしても、それは騙すとかそんなことじゃなくて、どちらも本当の姿なんだろう。


 どちらも本当の姿。この言葉が私の心の中にすとんと落ち着いた。

 そうだ、私だって、青い髪の色を隠している。青い髪も金色の髪もどちらも私。


 その時、音楽が聞こえ始めた。


「最初のダンスを……」とサーザ様が手を差し出した。


「はい!」

 

 私は元気よくその手に自分の手を重ね立ち上がる。


 ホールの中心に向かって進み、いつもの練習のように向き合って組み合う。

 

 ほら、いつもの通りだ。


 踊り出すといつものようにだんだん楽しくなってくる。


「良かった。元気になったな」とサーザ様が囁いた。

「はい楽しいです!」

「入場の時から一言も話さなかったから、心配した」

「……すみません。ちょっと考え事してました。でも、もう考えるのはやめたんで大丈夫です!」

「やめたので大丈夫か! 面白いなルティは」

 サーザ様が笑う。


 そこで曲が終わり、私達はさっきのテーブルに戻ろうとして、リーンハルトとアンジェリカを見つけた。

「アンジェリカ!」と声をかけると「ルティ!」とアンジェリカがリーンハルトと一緒にこちらに急いでやってくる。


「こちらはムーラン帝国の皇太子殿下です」とふたりに紹介する。


「私はガルライア王国王子リーンハルトです。こちらは聖女候補のアンジェリカ。どうぞよろしく」

 リーンハルトが素早く自己紹介した。

 

 その時「ルクレティア、次のダンスを申し込みたい」と背後から声をかけられ、びくっとする。


 サーザ様が私のことを抱き寄せ、自分だけそちらに顔を向けると言った。


「申し訳ない、ホアン王太子。彼女は次も私と踊る」

「では、その次に……」

「その次も、その次も、最後の曲まで彼女はあなたとは踊らない。あきらめてくれ」


 アンジェリカがホアン王太子の方を見て「あの人、ドーワルト王太子よね。ルティのお兄さんだよね」

と小さな声で言った。


「うん、そうなんだけど。もう、私ドーワルトには戻らないと決めて、それは伝えたんだ」

「そうなんだ。それでも声をかけてくるなんて……、何か困ったことがあったら、声かけてね!」

 

 その時、次の曲が流れ始めて、私はあわてて「アンジェリカ、ありがとう! また後で!」と声をかけた。


「さて、次の曲も付き合ってもらうよ」

 サーザ様が明るく言って、私の手を取り、くるっと回した。

読んで下さりありがとうございます。

今日は息子の学校の学年懇談会がありまーす!

そのため、午後の投稿はお休みします。

次も頑張ります!

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