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23 ドーワルト王国との決別

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。


後もう少しです。

完結が見えてくると走ってしまって話のスピードを上げる癖が私にはあるみたいなので、気持ちじっくり書いていきたいと思います。

最後までお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 お姉様の部屋から自分の部屋に戻り、ボー然とする。


 ピヒラが起きていて、肩に飛んできた。


「ピヒラ、なんかすごいものを見てきちゃったよ」


 ウィリアムもお姉様も子どもの頃からお互い好きだったのに、ずっとお互いに言えなくて、でもいつかはという気持ちもあって……ということだよね。


 でも、ウィリアム、もう側室いるとか、お姉様はその度に深く傷ついてきたんだろうな……。

 やっぱり、ウィリアム、許せない!!


 でも決めるのはお姉様。私はお姉様を支えるだけしかできないんだから、お姉様が決めたことは祝福しなくちゃな。うん。


 サーザ皇太子もそんな風に思っているのかな。


「さて、明日はとうとうドーワルト使節団に挨拶に行かなきゃだし、夜は夜会。

 気合入れて行かなきゃ!!」

 自分自身に言い聞かせるように呟く。


 ドアがノックされたので、あわてて開けに行くとフェイトだった。


「大丈夫か? なんか大変な事になってたみたいだな」

「……うん、でも、私は大変ではないし、その場にいたってだけで……。大丈夫!」 


「サーザはどうだった?」

「優しい人だったよ。でも、フェイトに似てるところもある」

「えっ、どこが?」

「うーん、お姉様が出て行っちゃった後、ウィリアムに言ってたこととか。

 フェイトが言いそうって思った」

「……そうなんだ」

「何か用事?」

「いや、それだけだけど……」

「時間あるなら、ヒールかけようか?」

「うん、お願いしたい」


 私がソファの方へ行こうとするとフェイトが「ルティ」と呼んでふわっと私を横抱きにしてベッドの方へ進んだ。


「こっちがいい」

 

 そのまま、ベッドに腰を下ろしたので、私は靴を脱ぎたいんだけど抱っこのまま離してくれない。


「フェイト、運んでくれてありがと。靴脱ぐから降ろして」

 

 靴が脱げた。


「あれ、フェイト魔法使った?」


 フェイトを見るとキスされた。

 いつもの軽いやさしいキスじゃなくて、驚いて身体を後ろに引こうとしてしまい、気がついたらベッドの上に身体がずり落ちるみたいに移動してた。

 それでもフェイトはキスをやめない。


「いや?」

 

 やっとキスをやめてくれたフェイトに聞かれた。


「……わかんない」

「じゃあ、もう一度……」

「わー、ちょっと待って!!」

「わからないんなら、もう一度試してみないと」

「ほら、ヒールかけなきゃ!! ね! ね!!」

「……わかった」


 フェイトが抱き起してくれる。


 いつものようにベッドの上にふたりで向かい合って座り手をつないでヒールをかけ合う。


 フェイト、お腹がちょっと硬いかな。アンジェリカにヒールをかけた時のことを思い出す。

 考えすぎたり悩んだりしてるとここが硬くなるんだっけ。

 和平会合に向けて、考えたり調整したりすることがたくさんあるんだろうな。

 丁寧に循環を意識して流していく。柔らかく流れるようになってきた。良かった。


「お疲れ様だね。どう、少しは身体が軽くなったかな?」

「うん、ありがとう。ルティは?」

「うん、身体が温かくなった。ありがとう」

「じゃあ、さっきの続き」

「えっ、またにしよう!」

「なんで?」

「いや、明日に備えてもう寝た方がいいと思うよ」

「じゃあ、おやすみのキス」


 そう言われて手をつないだままベッドに押し倒された。


「なんで、寝なくても……」

「そうしないとルティ、後ろに逃げるから」


 覚悟を決めて目をぎゅっとつぶると、軽くいつものやさしいキスをされた。


「おやすみ」

「おやすみなさい。フェイト」


 フェイトは手を離すと私の頭を撫でてから、部屋を出て行った。


 良かったという気持ちと、もう少し一緒にいたかったな、もっとキスしても良かったんじゃないかという気持ちが自分の中に混在していることに気が付いて、顔が赤くなる。


 うーん、特別に人を好きになるってことは本当に複雑なんだな……。


 次の日の朝、お姉様にたたき起こされた。


「さあ、仕度するよ!」

「おはようございます……」

「さあ、まず風呂に行くよ!」

「えっ、いきなりお風呂?」


 軽くお風呂に入り、お姉様が用意してくれたムーラン帝国の服を着る。

 それから食堂に行くともうガイルとフェイトが仕度を終えて待っていた。


 朝食を取りながら今日の流れを確認する。

 朝食後、アルタイルの宮殿に行き、ドーワルトの使節団に挨拶。

 一度帰り、昼食後に夜会の仕度をし、夕方には再び宮殿へ。


「昨日、ウィリアムには伝えてあるから宮殿には連絡済み」とお姉様が言った。


 あの後、お姉様とウィリアムとで話ができたんだな。


「ウィリアムも同席したいそうだ」

「えっ? ドーワルトとの挨拶に?」


 フェイトがちょっと困った顔をする。

「ホアンがどう出てくるか、わかんないじゃん?

 他の国の人がいるのは……。ルティ、大丈夫か?」


「うん、大丈夫だよ。別に秘密にしているわけじゃないし。私がホアン兄様を避けてることを知ってくれている人が多いほうが、夜会の時とかもいいかもしれないし」

「そうだな。ウィリアムは性格はなんだけど、頼りにはなる男だからな」

 フェイトがぼそっと言った。


「レイだが、今日は騎士団にいないんだ。ちょっとこちらの用意を頼んで出かけてもらっている。

 ルティに相談せず進めてしまって申しわけない」

 ガイルが謝りながら教えてくれる。


「レイはドーワルトの使節団とは顔を合わせない方がいいと思ってはいたので、ムーランの仕事を任されているなら、レイにとってもいいと思います。ありがとうございます」


 馬車に乗って向かうが、心臓がどきどきしてきた。

 顔色が悪かったみたいでフェイトにすごく心配される。


「ルティ? 大丈夫か?」

「……ちょっとこわい、泣きそう」

  

 フェイトが私の肩をぎゅっと抱き寄せた。

「そばにいるから」

「……ありがとう」


 こうやってくっついていると安心する。

 うん、頑張らなきゃ!!


 ピヒラの声が頭の中で聞こえた気がした。

 ペンダントの中で、私を心配しているのかもしれない。


 ペンダントにそっと触れて『大丈夫だよ』と念じる。


 大丈夫! みんなが一緒にいてくれる。


 宮殿に着き、ウィリアムが迎えてくれた。


「アルテミス! 会えてうれしいよ!」

「私もだ、ウィリアム」

 

 お姉様達、いい感じではありませんか!

 お互いの気持ちを伝えあえたんだね。 それだけで、うれしくなる。


 ウィリアムの案内で宮殿内を進み、ドーワルト王国使節団の使っている部屋近くの応接間に通された。


「ここにドーワルト使節団に来てもらうことにした。気を付けることはルティをひとりにはしない、だったな」

 ウィリアムがお姉様に確認する。


「そうだ、向こうはルティを返せと言っているからな。絶対そうはさせん」

 お姉様もちょっと緊張している。


 足音がしたかと思うと、ドアがバン!と開いて、ドーワルトの服を着て、背は低いが女性らしい身体つきのふくよかともいえる若い女性が茶色の長い髪がなびく勢いで入ってきた。


「シュリー姉様?」


 私が知っているシュリーは8歳までの姿だから、その面影を探す。

 

 あれ、よくわからないな。茶色の髪と黒い瞳はシュリーなはず。


「ルクレティア? その髪の色はどうしたの? それ以外は全然変わってないわね! 

 相変わらず男の子みたい」


「そうですね。男の子みたいに見えて助かることがたくさんあったので、それは良かったです。

 髪の色はきっと呪いで変わったんだと思います」


「そうよね、ふたつの呪い持ちだもんね。

 そんなだからせっかくジーン兄様が話をつけてくれたアルタイル王国の人質すら断られるのよ!」


「……人質の話はジーン兄様とシュリー姉様が進めた話だったんですね」


 シュリー姉様は私から目を逸らして言った。


「もう、人質としての価値がないあなたはドーワルトには必要ない!

 好きにしなさい! 早く出て行って!」


 え、いいの?

 

「ほら、早く!」

 動こうとしない私に焦れたようにシュリーがこちらに来て、私をドアの方へぐいぐい押しやる。


 フェイトが驚いて止めようとしてくれるが、それを手で制して「大丈夫」と伝える。


「シュリーには手を出さない方がいい」

「何、官女の下級貴族の母親の娘の癖に! 私を呼び捨てにするな!」

 

 シュリーが平手打ちをしようと手を振り上げた。

 そんなに大きい手の振りではちょっと身体をずらすだけで余裕で避けられる。


 シュリーの平手打ちが見事に空振りして体勢を崩して床に四つん這いに倒れこむ。

 

 その時、ドアが開いて、ホアン兄様が数人の隊士を連れて入ってきた。


「何をしているシュリー?」


 シュリーは顔を真っ赤ににさせて立ち上がると「突き飛ばされた!」と叫んだ。


 は?


「ルクレティアに突き飛ばされた!」


「変わってないね。そうやって都合が悪くなると人のせいにするところ。


 ホアン兄様、お久しぶりです。

 今、シュリー姉様に私はドーワルトには必要ないので好きにするように言われました。

 ありがたくそうさせて頂きます。

 私はこのままムーラン帝国でお世話になりたいと思います。

 それではもうお目にかかることもないでしょう」


 ホアン兄様を見ずにそれだけ言って、手を前に揃えるドーワルトの礼をして、すぐフェイトの横に引っ込んだ。


 ホアン兄様がこちらをじっと見ているのがわかる。だから、顔を上げたくない。


 ガイルがそのまま話を引き取り、話しを始めてくれた。


「私達はムーラン帝国使節団です。連絡したように、アルタイル王国への旅の途中でルクレティア王女を保護しました。

 アルタイル王国への人質の件が白紙になったようですし、このままルクレティア王女をムーラン帝国にお渡し頂きたい。

 それで両国の和平が結べればどちらにとっても得策でしょう」


「……ルクレティアとふたりで話をしたいのだが……。

 ウィリアム、どこか空いている部屋はないか?」

 

 ガイルを無視するかのような態度でホアン兄様が言った。


 ウィリアムが返事をする前にアルテミスお姉様が進み出て言う。


「私はムーラン帝国第1皇女アルテミスだ。

 ルクレティアはドーワルトには帰りたくないと言っている。

 ムーラン帝国はルクレティアを守ることに決めた。

 ルクレティアが拒否している以上、例え兄と妹であろうともふたりきりで会うことは認めない」

 

「ルクレティア、私はお前があのような辺境のさびれた寺で10年も捨て置かれていたことを知らなかったし、アルタイル王国への人質の話も知らなかった」


 アルテミスお姉様のことも無視ですか?!

 しかも、こんなに周囲に人がいるのに私に話しかけ始めた……。


「この10年、お前を迎えに行くことを考えて生きてきた。私の元へ帰ってこい。

 私はまだ妃を迎えていない。それはルクレティア、お前が私の妃だからだ。

 私はお前を愛している。10年前のように私のそばにいろ」


 フェイトが「耳を塞げ」と一言言って、ホアン兄様から隠すかのように抱きしめてくれる。


 耳を塞いでもホアン兄様が怒る声が聞こえた。


「貴様! 私のルクレティアに触るな!」


 ガイルがフェイトと私を守る様に立ち、ドーワルトの隊士の数人がホアン兄様を守るかのようにガイルと対峙するのが見えた。


「フェイト、ドーワルトに私からちゃんとさよならを言う」

 

 私は決心して言った。

 

 逃げてちゃ、ダメだ。これは自分で言わなきゃ。


「大丈夫か? そばにいるからな」

「うん、ありがと」


 私はガイルの横に並んで立つ。


「ルクレティア! 会いたかったぞ!」

 

 ホアン兄様が駆け寄ろうとするのでファイアとウィンドを組み合わせて弱い炎の渦を作り出し壁にする。


 ドーワルト隊士達も顔色を変え、下がった。

 ホアン兄様の顔も引き攣る。


「私は兄様を愛していない。

 私はドーワルトには戻らない。

 

 私には今、大切な人達がいる。その人達と私は生きたい。


 兄様の気持ちには応えられない。それは10年前から変わっていない。


 私はドーワルトでは呪い持ちだ。この先、それは変わることはない。

 16歳になっても呪いが解けることはない。


 シュリー姉様、ホアン兄様、皆にお伝え下さい。

 ルクレティアはドーワルドと決別します。

 それでも無理やり連れて行くというなら、呪いの力のすべてをドーワルト王家に向けましょう。

 それがお望みなら……」


 ファイアの上昇気流がさらに渦を巻き、ペンダントからピヒラが飛び出てきた。

 気持ち良さそうに自由に飛び回っている。


 これ以上は室内では危険だ。


 シュリー姉様が悲鳴を上げてホアン兄様に縋り付く。

 ナイスタイミング! シュリー!


 私が魔法を消すと、ピヒラが肩に戻ってきた。


「私はドーワルトには帰りません。これからは自分のやりたいことを、好きにさせてもらいます」


「……ルクレティア、お前はいったいそんなに何をしたいんだ?」

 ホアン兄様が最後に言った。


「私は自分の大切な人達と、自分をも、守る勇者になりたいんです」



『呪われた王女様は生まれた国と呪いに別れを告げました。

 呪いは加護になり、これからも王女を守ることでしょう。

 そして、自分自身でかけてしまった呪いも解くことができそうです……』

今、夜会のことを書きながら、夜会後のことを考え、一応頭の中では、完結しました。


今日の午後の投稿はお休みしてできるだけ形にしたいと思います。


読んで下さりありがとうございます。

次も頑張ります!

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