3 ギルド登録
ギルドの設定とか息子に説明したら「ポケモンセンターみたいだね!」と言われました。
確かにポケモンセンターは宿泊できる!
しかしポケモンセンターはどこから利益を得ているのだろう……。
というわけで気持ち高めの登録料と依頼をこなすという条件をつけました。
大人数で進んだからか、特に何もなく夕方にはキントに到着することができた。
「ガイル、ここに泊まるならどこがお勧めだ?」とレイが聞いている。
ガイルとフェイトが顔を見合わせ「宿に泊まるのか?」と言う。
「ああ、ルティを少し休ませてやりたくて」
「それならギルドにも泊まれるぞ。ただ何か依頼をこなす必要があるが、安心だしお勧めだ」
「依頼か。まあギルドは行く予定なので見てみる。ありがとう」
「ギルドなら俺らも行くから案内するよ!」
フェイトが私の手を握り歩き出す。
うん? なんで? 手?
レイがあわてて「離せ!」とフェイトと私を引き離す。
「悪い、こいつ、自分より下の子どもがいるとついついお兄さんモードになっちゃんうんだよ」
ガイルが笑いながら言った。
「大丈夫。迷子にならない」
私はフェイトに言った。
「迷子っていうよりか、その頭の帽子みたいな布? 目あたりまで覆ってるけど、ちゃんと見えてんのか?」
おおっ、心配はそっちか。
「大丈夫、見えてる」
フェイトは18歳で背はレイと同じくらい。ふたりとも高いほうだと思う。
金髪に青い目、もともとの肌は白そうだが、程よく日に焼けていて細いなりに精悍な感じがする。
ガイルはさらに年上の27歳。短い黒髪に浅黒い肌、黒い目。がっしりしていて、背もフェイトより少し大きい。冒険者と呼ぶのがぴったりな感じだ。
ギルドに到着して中に入る。
キントの街は大きいのでギルドも大きいんだなと思った。
レイを見ると、ひとつのカウンターの前に連れて行ってくれる。
「登録をお願いします」
窓口のお姉さんから「こちらに記入を」と用紙を手渡される。
「書けるか?」
「うん、名前はルティで平気? で、弟だから男にするの?」
「名前はルティでいいけど、性別と年齢は正直に書け」
「了解!」
カウンターでペンを借り記入。
名前、性別、年齢は必須なので記入。
後は保証してくれる人が必要らしい。
「レイ、保証人?」
レイが用紙を見て署名してくれ、自分のギルドカードを取り出す。
「登録料50ルアンです」と言われてあわててお金を出そうとしたらレイが払ってくれた。
兄さんだからか? でも後で返そう。
お姉さんが新しいカードを用意して戻ってきた。
「カードの切れ目の中心部分に血を1滴垂らして下さい。その後こちらの小さいカードは折り取って保管させていただきます」
血、指斬る?
太刀を抜こうとするとあわてたレイに止められる。
「そんなの抜かない!! 針貸して下さいっ!!」
お姉さんが笑いながら針を用意してくれたので、それを左の小指に刺した。
血を1滴絞り出す。
垂らして登録完了。
私のカードとレイのカードが戻ってきた。
『呪われた王女様は初めて自分のギルドカードを作ることができとても喜びました』
初めての自分のギルドカード!!
ふぉおおおおお!と目を輝かせて掲げて見ているとフェイトが「できたか?」と覗き込んできた。
「あれ?」と言った後、小さい声で「悪い、妹だったんだな」と言った。
あ、うれしさのあまり性別がばれることを考えていなかった。
ガイルとレイはもう依頼掲示コーナーに行っていたので、私はフェイトにとりあえずこくりと頷いておいた。
「内緒なのか?」
こくり。
「弟で通すのか?」
こくり。
「あいつ本当に兄さんなのか?」
こくり。
「似てないよな」
こくり。
ん?
うん、確かに似てない。頷いていいことだった。
レイの方へ行こうと歩き出すと「兄さんと違って目は青いけど、髪の毛は?」とフェイトが言いながら私の頭に巻いてたターバンを後ろからグイっと引っ張った。
「!!」
あわてて頭を押さえたが間に合わなかった。長い青い髪が束になって手の間から零れ落ちる。
フェイトはあわてて自分が持っていた上着を私の頭に被せる。
レイが「何してる?」と言いながら近づいてくる声が聞こえた。
フェイトが「何も!」といいながらレイが私から上着を取ろうとしているのを止めているようだ。
「レイ、ターバン外れた。フェイトが隠してくれた」
「お前見たのか?」
レイがフェイトに詰め寄る気配がするので上着をずらして顔を出す。
「とりあえず、ターバン巻き直したい」
「ああ、ギルドに部屋が借りられることになった。こっちだ!」
私の髪は5歳まで黒かった。
5歳になって呪われていることがわかって、辺境の寺に行かされて、そこで魔法の使い方をお師匠様に教えてもらっていたら、魔法が使えるようになるにつれ、どんどん髪の色が青くなってきた。
邪教の女神の髪の色。周囲の人が怖がるといけないからとターバンを巻いて隠すようにした。
眉毛もまつげもなのでどんどんターバンを目深に被るようになっていた。
見にくければ気配や魔法で位置を確認はできるのでそこまで不便ではなかったが……。
魔法が禁忌ではない国に来ればもしかして髪が青いのは普通なのかと思ったけれど、フェイトがあんなに驚くのは、やっぱりここでもダメなのか……。
ギルドの横の建物が宿泊棟になっていて、レイが借りてくれた部屋は小さな個室だったので、とりあえずひとりで入りきっちりターバンを巻き直す。
荷物を置いて鍵をかけると、宿泊者みんなが使える広い部屋があり、そこでフェイトがレイに怒られていて、少し離れたところにガイルがいた。
「油断した、私が悪い」
レイにフェイトを叱るのをやめてもらおうと近づいて止める。
「呪われてる私が悪い。フェイトはすぐ隠してくれたからもう怒らないで」
「呪われてるって何? オレが上着を被せたのは……」とフェイトが言いかけ口をつぐんだ。
ガイルが「俺達の部屋で話そう!」といい、ガイルとフェイトが借りたふたり部屋に連れていかれる。
ドアを閉めるなりフェイトが言った。
「青い髪だとわかると即神殿に連れていかれるからだよ!」
その言葉に私が呟く。
「邪教の女神と同じ色だからだね……」
「ん? 邪教?」
「私達の国では青い髪は邪教の女神の髪色なんだ。だからルティはずっと隠してきたんだ」
レイがフェイトとガイルに説明してくれる。
「こちらでは逆だよ。青い髪は守護女神の髪色。女神に選ばれた聖女のしるしだ。
あそこまできれいな青い髪はとても珍しいよ。隠さないといけないなんてもったいない!
でも、他の国の人間ならここでも隠した方がいいかもしれないな……」
「そうだな、この国の神殿に見つかるとこの国から出してもらえなくなる」
ガイルも頷く。
ドーワルト王国はかなり閉鎖的な国だ。
ムーラン帝国、アルタイル王国、ガルライア王国に囲まれているのに、ほぼガルライアとしか交流がない。
ムーラン、アルタイルとは敵対関係といっていい。
それで時々小競り合いが起きては、賠償金を払ったり人質を送ったりということになるらしい。
そんな閉鎖的な環境でドーワルト王国独自の宗教と文化が発展しているわけだが、その弊害で他国の文化や情報がとても入りにくい。
レイも他の国に出るのは初めてだと言っていた。
「どこまで行く予定?」とフェイトが聞いた。
「エーテスに行って海を見たら、そこからアルタイル王国を目指す」とレイが説明した。
お、この2人をちょっとは信用すると決めたんだな。
「アルタイルが目的地?」とガイル。
「はい、アルタイル王国が目的地です」
レイが答えるとフェイトが訊ねた。
「何しに?」
さすがにそれは答えられない。兄弟設定だし。もうフェイトには女ってばれてるけど。
黙ってしまったレイを見て、ガイルが言った。
「まあ、事情があるよな。詮索して済まない。ただ、やはりそこまでこの国やアルタイルのことを知らないまま旅をするのは危ないと思う。特に妹を連れての旅だ、慎重に行った方がいい」
あれ、ガイルにもばれてる?
「妹?」とレイ。
「妹だろ? 聖女は女性しかなれん」とガイルがため息をついて言った。
『呪われた王女様はどうやら他国では聖女と呼ばれる存在であるようです』
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!