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2 旅立ち

今回は流れをざっと決めてメモを作り書き出したんですが、3話まで書き終えた時点で、すでにメモからずれていってます。

でも、新たにできたルートも面白いと思うのでそれを拾いつつと思うとすでに投稿した1話との整合性があれ?となり、昨日はずっと2話と3話の直しをしてました。

なんとか行けそうです。

最後までお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 レイモンドは王都の守備隊の隊士であり、今回私をアルタイルまで連れて行く役目なのだそうだ。


「貧乏くじだな」とお師匠様が笑い「路銀はちゃんともらっているのか?」と訊ねた。

「頂いている」とレイモンドが答えるが、少し困ったような顔をしている。


「少ないんだろう。姫をこの寺に預けて10年。人も金も届いたことはない。

 ずっと放っておいて、困った時にだけ利用することを思い出すのが、国家の恐ろしいところだな。

 

 そこで、私から提案がある。

 アルタイル王国に行くまで砂漠を避ければガルライア王国領を通過することになるだろ?

 その時少し遠回りをして、ルティに海を見せてやってはもらえないだろうか……」


「海を?」


「ルティは5歳まで王城の中から出たことがなく、そこからここに預けられ、海を見たことがない。

 アルタイルは海がない国だ。今、海を見ることができなければ一生叶わないだろう。

 そしてガルライア王国のギルドでルティを登録してやって欲しい。

 そうすれば狩った魔物を持ち込んで路銀を稼ぎながら旅ができるだろう」


「魔物を狩る? 私が?」

 レイモンドが戸惑っている。


「狩るのはルティだ。

 ドーワルトではギルドに登録すると王都が干渉してくるかと、今まで登録させずに近所の者に持ち込みを頼んでいた。自分で狩った獲物を自分でギルドに買取に出し代金を得るということがルティにはできる。その力がある。

 頼む、そのふたつだけ、ルティの夢を叶えてやってはくれぬか?」


 私もレイモンドに頭を下げて頼み込む。

「私は一度でいいから海を見てみたい。ギルドに登録するのも憧れだった。私は歩くのが早いから、そこまで日数に遅れは生じないだろう。頼む!!]


「……わかった。それぐらいなら協力できると思う」



『呪われた王女様は辺境の砂獏の寺から海を目指すことになりました』



 地図を見るとこの辺境の町からまっすぐ北上すればアルタイル王国になるがそのためには砂漠の真ん中を横断しなくてはいけない。

 それはさすがに無理な話。

 砂漠を避け東に行けばすぐガルライア王国に入り、そのまま進めば首都スーリヤにぶつかる。


 私達はまず海を目指すことにしてここからガルライア王国に入って南東に進み、港町エーテスを目指すことにした。

 そこで海を見てから北上すれば首都スーリアに出ることができる。


「ルティ、あの太刀を持って行っていいぞ」

「いいの! あれはこの寺のものだけど……」

「残されてもあれはお前にしか使いこなせん。持って行きなさい」

「ありがとう! お師匠様。それと食べ物や水は大丈夫? 多めに買ってきたから影蔵(かげぐら)に入れておいて」


「影蔵とはなんですか?」とレイモンドが聞いてきた。

「空間魔法の一種で物を収納できる。

 ドーワルトでは魔法は恐れられているが、その分、魔道具はとても発達しているよな。

 近いものだとマジックボックス、マジックバックと言えばわかるかな?」

 お師匠様が答えてくれる。


「そんな便利なものがあるなら、さっき、なぜ、……ルティはあんなに大量の荷物を持って歩いていたんだ?」とレイモンドが私を見た。


「ここは辺境でガルライアやアルタイルに近いから王都ほど魔法を恐れない土地柄だけど、あまり人前で魔法は使わない方がいいと思っているのと、鍛錬のためかな」


「ルティの影蔵は本ばかりだろう。旅で新しい本に出会えると良いな」

「うん、新しい本も楽しみだけど、本で読んだような冒険に出られるのがすっごい楽しみ!」

 私がにかっと笑って言うと、お師匠様が頭をぐりぐり撫でてくれた。


「私は大丈夫だ。心配はいらないよ。時々手紙をくれ」

「うん!!」



 次の日の朝、私とレイ(レイモンドは縮めてこう呼ぶことにした)は寺を後にした。

 砂漠から遠ざかる様に南東に進むとすぐにガルライア王国との国境だ。


 レイは20歳。守備隊では副隊長をしているという。

 王都の話などしてくれてあっという間に国境に来た。


 ドーワルト王国とガルライア王国は国交がある国なので、入国料を払うだけで問題なく通過できた。

 そのまま南東に海まで出れば港町エーテスだ。


「行程は2日ぐらいか。今日は野宿して、明日はエーテスの近くのキントという街に入ることにしよう。そこにギルドがある」

 レイが昼食のパンをかじりながら地図を見て言った。

「了解!」

 レイが不思議そうな顔をする。

「ルティは本当に王女様なのか?」

「たぶん、そうだと思う。5歳までいた城のこともなんとなく憶えてるから」

「でも、全然そんな感じしないな……。そうやって髪の毛さえ隠してしまえば呪われてるってのもわからない」

「アルタイルに入るまでは王女じゃなくて、旅の仲間と思ってくれていいよ。ぱっと見女に見えないし」


 砂漠から遠ざかるにつれて道の周囲に草地が増え、樹々が増えていく。

 夕方にはひとつ森を抜けたあたりまで来た。


「このあたりで野宿しよう」

 レイが周囲を見回していった。ちょうど道が二股に分かれるところで、何組かの冒険者グループや商隊がすでに場所取りをして休んでいた。

 たぶん、みんなが安全のために自然と集まって利用するような場所なんだろう。


「薪拾ってくる!」

 私は森の方へ少し戻り、落ちている枝や枯れている木の枝を折ったりして集めて戻った。


 レイは道から外れた草地にシートを敷き、そのそばに大きな石を集めておいてくれた。

 石を並べて焚火台にする。


 もう少し暗くなってから火をつけることにして、ランプや食事の用意だけ出しておく。


「水がもう少ないな」とレイが言うので「出そうか?」と言うと驚かれた。


 私はお師匠様から魔法の手ほどきを受けたが、魔法が禁忌のこの国ではお師匠様が使える基本の魔法と古くからの魔女の言い伝えぐらいしか情報はなかった。

 

 その後は独学でその基本を繰り返したり、イメージしたり、組み合わせたりしているうちに、原理がわかってイメージができれば、いろいろなことができることに気が付いた。

 たぶんもっと高度な魔法学みたいのがある国もあるのだろう。

 私は知識を広げるためのいろいろな本を読んだ。本から得た知識やイメージを組み合わせてできることを増やした。


 私の飲み水確保の魔法はかなりオリジナルだと思う。


「じゃあ、ここに水を入れてくれるか?」と小さなポットを差し出される。

 私はポットを受け取ると、その中を確認して目を閉じる。

 

 意識を上に飛ばす、雲の中まで。

 雲を原料に水の球を作る。

 ポット分の水球ができたところで、それを手の中のポットの中へ転移させる。


「できたよ」

 

 レイはポットの中を覗きこんで驚く。

「……本当だ。これ飲めるんだろうな?」

「失礼な、いつも飲んでたから大丈夫だよ!」


 たぶん地下にもある地下水とかも取り出せるだろうけど、空の雲からの方が何となくきれいな気がするし楽しい。


 その時、私達の右側の方にいた商隊の方から「わーっ!」と声がして、停まっている馬車の影から人が何人も飛び出してきた。


 レイが私をかばうように前に出る。

「見えない」と私もレイの横に身を乗り出す。


「ヴァンパイアバットだ!」とレイが言う。


 道に飛び出して逃げ回る商人のひとりが頭をかばいながら体勢を崩し転んだ。

 私はマントをつかんで飛び出すとその商人に駆け寄り「じっとしてて!」と言って上にマントを被せる。

 獲物を見失ったヴァンパイアバットがこちらに目標を変えた。

 急降下してくるところにウィンドをぶつける。

 ふらふらするが落ちはしない。周囲に人がいるのが気になり、手加減しすぎたか。


 体勢を立て直してこちらにまた急降下してきたので至近距離でファイアをぶつけた。

 

 体と羽の毛の部分が燃えバランスを失って落ちてくる。落ちたところを踏んづける。

 羽の骨が折れる音がした。

 とたんにすごい声で泣き出しびっくりする。


「そいつは仕留めないと仲間を呼ぶぞ!」と言いながらレイが短槍で仕留めてくれた。


 泣き声に呼ばれたのか2匹こちらに向かってきている。


「落とすより斬る?」とレイに聞く。

「斬るか刺すだ!」と言われたので「じゃあ左やる!」と太刀を抜いた。


 攻撃のタイミングで急降下してくるのはもうわかったので、タイミングを合わせて太刀を突き出すと串刺しになりうまく絶命したようだ。


 レイが右側のを短槍の柄で叩き落してから素早くとどめを刺した。


 他のヴァンパイアバットも周囲の冒険者たちが応戦し、かなり仕留めたようだ、数匹あきらめて森の方へ逃げていく。


 マントを持ち上げて「もう大丈夫です」と声をかける。

 震えていた商人が顔を上げるが、私の太刀に串刺しのヴァンパイアバットを見て「ひいいっ!」と悲鳴を上げた。


「もう死んでるから大丈夫」

 太刀をびゅっと振ると、ヴァンパイアバットが太刀から外れ、地面にドスンとぶつかって転がった。


 私達がやっつけた3匹のヴァンパイアバットは助けてくれたお礼に引き取っていいと言われたのでシートの方に持ち帰るがそこに積んでおくわけにもいかない。


「影蔵に入れちゃおうか?」

「こんな血だらけのまま入れられるのか?」

「うん、中で血垂れたりしないから大丈夫」

「じゃあ、頼むかな」


 レイの陰でこそこそ影蔵にしまう。


 薪に火をつけ、ランプにも火を灯す。

 お湯が沸き、レイがお茶を入れてくれた。

  

 お茶を飲み、乾燥デーツを食べていると冒険者風の2人組がこちらにやってきた。

 商隊の向こう側に陣取っていた冒険者グループの中の2人だった。


 年上の黒髪の方が声をかけてきた。

「あんた達、けっこう強いな。兄弟か?」

 

 レイが短い間の後「そうだ」と短く答える。


「そんな露骨に警戒しなくて……。俺達はこの先のキントという街に戻るところなんだが、良かったら明日、一緒に行かないか? 実はこの先に魔物が出やすいポイントがいくつかあって仲間が多いほうが安心だからな、どうだ?」


 レイは考えている。


 レイの様子を見ていたらもうひとりの金髪の若いほうが「おい、弟の方!」言った。

 弟って、誰? はっ! 私か!!


「はい?」

「お前、魔法使いか?」

「はい?」

「さっき、ファイア撃ってたよな。しかも無言で」

「はい……。すぐとどめを刺さないといけないのを知らなくて、撃ち落とせばいいかと……」


 レイが男と私の間に割って入る。

「すまん、弟は人に慣れてなくて。話は、俺に言ってくれ」

 おお、レイ、私じゃなくて俺って言ってる。


 黒髪の方がすぐに謝ってくれる。

「すまんすまん。戦闘できる魔法使いはここらでも珍しくてな。

 明日はあっちの商隊にも声をかけてある。ぜひ、明日、一緒にキントまで行かないか?」


「わかりました。よろしくお願いします」

「よかったぜ。俺はガイル」「俺はフェイトだ」

 

「俺はレイ、……弟はルティだ。よろしく頼む」

読んで下さりありがとうございます。

次も頑張ります!

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