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14 竜の目と氷の銀貨

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。


ここらへんちょうど全体の真ん中あたりかなと思うのですが……。

まだまだ続きますので最後までお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。


 何事もなく歩き続けて夕方になったので、野宿の準備を始める。


 周囲に他の冒険者や商隊の姿は全く見えない。


「これは夜の見張りを気をつけないとな」とガイルが独り言のように呟いた。


 いつもより大きめの焚火をすることにした。


 また焚きつけに良い枯葉や枯れ枝を出すが少ないかも。

 火をつけるのはレイに任せて、フェイトと薪拾いに行く。

 良く燃えそうな薪がたくさん拾えたので多めに拾ってアイテムボックスの方にも入れていく。


「そういえば、フェイトはアンチドートの魔法できる?」

「うーん、アンチドートは解毒なんだよな。簡単な毒なら、例えば虫とかなら俺が習ったので行けると思うけど、メガマンバの毒まではちょっとわからないな。

 だから、ルティのおかげであのボルトリスは助かったんだよ」

「頑張って考えてよかったよ。でも、解毒ができれば、毒を無効にすることもできるんだね。まだまだ知らない魔法がたくさんあるんだな……」


 焚火のところに帰ると、もうお茶が入れられていた。


「今日は冷えそうだ。敷物も二重にした。もう今から服を重ね着しておくといいぞ」とガイル。


 私はムーランの上着の下に砂防フードを着込むことにした。


 鳥の揚げ物とパンとチーズを出し、焚火で温めるとおいしそうなにおいがする。

 他にまだ残っていた乾燥デーツも出した。


 食事をし終わる頃にはもうすっかり暗くなっていた。


「今日はふたりずつ交代で見張りをしよう。

 俺とレイが先に見張りするから、フェイトとルティは休め。

 時間が来たら起こすから気にせず寝てろよ」

 ガイルが薪の量を確認しながら言った。


「ん」とフェイトが両手を広げた。


 それは……腕の中に入れということか?


 フェイトのそばに腰を下ろすとまた背中の方からぎゅっと抱きしめられる。


「これが一番温かい」

「そうだね」


 私とフェイトはそのままごろんとシートに横になった。


 ガイルがその上からアイテムボックスから出しておいた毛布を掛けてくれる。


 フェイトの規則正しい呼吸音を聞いてるうちに私も寝てしまった。


 夜中にガイルに起こされ、冷たい水を差し出される。


「……ありがとう」

 受け取って飲むと目が覚めた。


「よし、起きたな。交代しよう。朝までだけど大丈夫そうか?」

「うん、起きた」と私が答える。

「俺もしっかり寝れたから大丈夫だ」とフェイト。


「じゃあ頼むよ」

 向こう側のシートでレイとガイルが横になった。

 毛布を掛けに行こうかと思ったけれど、ふたりとも器用に自分でかけて調整している。


 フェイトが薪を新しく入れてから、こちらに戻ってきて隣に座った。


「すごい星空だな」というので空を見上げると、澄んだ冷たい空気の中、星が怖いほど瞬いていた。


「わあ、すごい……」

「今日は月が出てないからな。ここのところ宿だったのですっかり忘れてたよ」


 小さな声で話を続けることにした。


「ルティ、あの一番明るい青い星わかるか?」

「うん、わかる」

「あの星、ムーランでは『竜の目』と言われているんだ。別名『皇帝星』」

 

 私は白い竜の瞳を思い出した。


「わかる気がする。きれいに輝いてるもんね」


「ドーワルトでは何と呼ばれている?」


 私は星の物語を思い出して答えた。

「『氷の銀貨』。王女様と竜と氷の銀貨の話がある」


「どんな話?」


 私は思い出しながらその話を語った。


「昔々、美しい王女様がいました。王様は王女様を大変かわいがっていました。

 王女様が年頃になった時、あちこちの国から求婚されましたが王様は全部断りました。

 その後、求婚者が現れなくなって、王様は安心していましたが、とても強い竜が現れ王女様に求婚しました。

 王様は竜の力を恐れましたが、王女様を嫁に出したくないので竜をあきらめさせようと、3回の王女探しをさせることにし、王女を探し出すことができなければ結婚させることはできないと言いました。


 一つ目。

 たくさんの娘達を集め、みんなきれいに着飾らせるとその中に王女様を隠してしまいました。

 竜は他に誰もいないかのように、王女様のところへまっすぐ行きました。

『王女様、私はあなたがあなただから結婚したいと申し込んだのです。姿形で惑わされるような気持ちではありません』


 二つ目。

 たくさんの男の子や男の人を集め、王女様を男装させるとその中に隠してしまいました。

 竜は他に誰もいないかのように、王女様のところへまっすぐ行きました。

『王女様、私はあなたがあなただから愛しているのです。姿形で惑わされるような気持ちではありません』


 三つ目。

 王様は王女様を箱に入れると城の前の深い深い湖の底まで沈めて隠してしまいました。

 竜はまっすぐに湖に飛び込むと深く深く潜って王女様の入れられている箱を上まで引き上げ開きました。

 王女様は息絶えていました」


 フェイトが驚いたように私を見た。

「どういうこと?」


「王様は自分の娘を竜に取られるくらいなら殺した方がマシだというくらい娘を愛してたってこと」


「それ、愛なの?」


「竜は王女様に自分の命の半分を与えました。王女様は生き返り、竜との結婚を受け入れました。

 そして竜は3回の王女探し全てで見つけたのだからと、王様には何も告げず、王女様を連れて自分の国に帰りました。


 しばらくすると、王女様は父親である王様が自分にしたことを許し、幸せに過ごしていることを伝えたいと思いました。


 竜に話をすると竜は王様を自分の国に招待しもてなしました。


 王様は王女様にこっそり魔道具の『氷の銀貨』を渡して囁きました。


『かわいい我が子よ。竜が寝てしまった時この『氷の銀貨』の力を使って竜を凍らせよ。

 竜の力が封じられれば、この豊かな国は私の物になる。

 お前もまた、私のもとで何不自由なく暮らすことができるのだ』と」


「その王様、ひでえな」


「王女様は『氷の銀貨』を宝石箱にしまい込み、使わないと決めました。


 王様はこっそりと竜に使いを出しました。


『わが娘があなたの命を狙っている。

 その証拠は『氷の銀貨』。王女は竜の命を狙い、それを大切に隠し持っている』と。


 竜は悩みましたが、王女様の持ち物を調べると、宝石箱に『氷の銀貨』が隠されていたことがわかりました。


 王女様は竜の前に引きずりだされ、周囲の者から責められました。


 しかし、竜は王女様を愛していたので、殺すことはできず、そのまま父親のところへ返すことにしました。


 王女様は国に帰る途中で自ら命を絶ちました。


 その時、王女様が持っていた『氷の銀貨』が空に昇り星になりました、

 美しく輝く星を見て、竜は王女様が自分を愛していたことと彼女の無実を知りました。


 竜は王女様を二度殺した王様の国を許しませんでした」


「で?」


「これでおしまい。

 ドーワルトでは王女様と竜が悪役。

 王様の父親の深い愛と願いを受け入れなかった王女様の方が『氷の銀貨』のように冷たい女で、敵である竜を愛した親不孝者だと言われてる」


「変な話」


「そうだよね。私も子どもの頃考えたよ。

 自分の元から離れるなら殺してしまうって、本当の親の愛なのか?


 王様は自分の願いを叶えず、戻ってこないなら、そして自分から離れて幸せになっているのが許せなくて、竜に殺させようとしたんだよね。

 愛している人に無実の疑いをかけられて殺されるなんて殺し方、本当にひどい。

 でも、ドーワルトでは王様に竜の力や豊かさを見せつけるようなことをする親不孝のひどい娘だから、王様のしたことは悪くないとなるんだよね。


 王女様は『氷の銀貨』があるとまた竜が狙われると思って、自分の命を懸けて『氷の銀貨』を空に上げたんだと思う。それも王様に逆らったことになるんだろうなあ。

 

 ああ、だから竜は呪いになるのか、ドーワルトでは。今、気が付いた」


「ルティは殺されなくて良かったな……」


「そうだね、5歳の時に殺されてたかもね。いや、ひとりで辺境の寺に行かせるってのも、もう殺したも同然じゃない?

 お師匠様がいなかったら、たぶん死んでたよ。

 でも、そのおかげで今があるんだから、まあ、いいけどね」


 フェイトに笑いかける。

 

 フェイトは真面目な顔をして言った。

「王女様とルティは違うよ。でも、王女様はなんで竜を愛したんだろう?

 命を分けてくれたから?」


「違うと思う。竜は王女様じゃなくて、あなたがあなただからという理由で愛してくれたからだと思う。

 普通の女の子としての、自分を選んでくれたからだと思うけどな。

 竜にしてみれば、王女様だからという理由はないもの。それがうれしかったんじゃない?」

「そうなんだ」

「うん、フェイトもそうだよ」

「俺?」

「私がドーワルト王女と知っても態度が変わらなかったし、一緒にいたいと言ってくれたし。

 だってムーランの人であるフェイトには私がドーワルトの王女であることなんかひとつも利益というかメリットというかなんもないもんね。それでも、一緒にいてくれて守ってくれるから」

「そっか。じゃあ俺達、ドーワルトではとんでもない悪者だな」

「そうだね……」


 私は青い星を見上げた。

 王女様と竜が、死んだ後でも、あの世で出会えて、幸せになれてたらいいな。

読んで下さりありがとうございます。

次も頑張ります!

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