12 アルタイル王国に入国(後)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。
少しずつ旅の終わりを考え始めてるルティですがまだまだ旅は続きます。
最後までお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
私は手をフェイトの腕の外に出すとフェイトの背中に手をまわしてしっかり抱きしめた。
「大丈夫だよ。私はここにいるから」
「俺より先に死ぬな」
「それは約束するの難しいな。未来はわからないから」
「それでも約束しろ!」
「……わかった、約束する。フェイトも私を残して死なないでよ」
「……約束する」
道に戻ると、みんなでため息をついて、それに気が付いてみんなで笑った。
みんなの気分が落ち着いたところで、昼食にすることにし、歩きながらパンとチーズをかじった。
「そういえばムーランの皇太子ってどんな人?」
私はさっきの王子達の話を思い出してガイルに聞いてみた。
「えっ? 急に何で?」
ガイルが驚いたように言った。
「だって、さっきアルタイルとガルライアの王子については詳しく教えてくれたけど、ムーランの皇太子については年齢しか聞いてないよ。あと、アルタイルのウィリアムと仲が悪いんだっけ?
名前も、どんな外見とか聞いてない。
和平会合に来るかわからないにしても、気になった」
「王子達について、話、聞いたの?」
フェイトが私に聞いてくる。
「うん、和平会合の前に会って話をする可能性もあるし……、いや、会うだろうな。
リーンハルト王子とウィリアム王子のこと教えてもらったから、たぶん会えばすぐわかると思う」
「ムーランの皇太子は名前は……親しい人からはサーザと呼ばれている」
フェイトが教えてくれた。
「かわいい名前だね」
「皇太子は黒髪で目は青だ」
「目の色は私と同じだね」
「そうだな」
「話しやすい人?」
「どうかな? 俺にはわからない」
「そうかあ、もし会合に来てくれたら会ってお礼を言わなくちゃ。教えてくれてありがとう」
夕方にはアーケスに入ることができた。
マイネに似ている木の建物が多く、やはり街の中に大きな木が立っている。
いつものようにガイルが行きつけという宿に向かう。
4人部屋がちょうど空いているということで今夜はみんなで同室ということになった。
みんなで街へ出て、レイとフェイトは食料などの調達、私とガイルはギルドへファングボアを買い取りに出すことになった、
ガイルとふたりになると私はサンドワームの買取の件をお願いした。
「金のことなら心配しなくて……」
「違うんだ。路銀の話とは別で、ちょっとまとまったお金が必要で……」
「使い道を聞いてもいいか?」
「うん、レイに渡しておきたくて」
「レイに?」
「和平会合のあるロマーヌに着いたら、私はアルタイルの宮殿に入るか、ドーワルトの使節と一緒になるんだろう。
レイと親しく話せるのは今のうちかもしれない。その後、レイはまたお金も渡されず国まで帰れと言われるかもしれないし、ドーワルトを離れて自由に旅してみようと思うかもしれない。
どうなっても必要なのはまとまったお金だ。だから用意しておいてやりたい」
「……わかった、そういうことなら、今回2匹買取に出そう」
「ありがとうガイル!」
ギルドでファングボア2頭、サンドワーム2匹をガイルのギルドカードで買取に出した。
ファングボアは手負いのが200ルラン、新手のがかなり大きめだったので400ルラン、合計600ルラン。
サンドワームは珍しいということで1匹1300ルランになり、合計2600ルランになった。
ガイルが2600ルランを私に渡してくれる。
「レイが受け取ってくれるといいな」
宿に戻るとフェイトとレイは戻っていた。
この街の名物は鶏料理で、スパイスで煮込んだものや油で揚げたものが美味しかった。
パン、鶏肉の揚げ物、水と飲み物をアイテムボックスにしまっておく。
ガイルがフェイトに声をかけて部屋の外に連れ出してくれた。
「レイ、話聞いてくれる?」
「はい?」
「まだ和平会合まで日にちはあるけれど、私の話を聞いて欲しい。
ロマーヌでアルタイルの宮殿に入ったら、もうレイと一緒にいられるかわからない。
アルタイルの方の客となるのか、ドーワルトの使節団と一緒になるのか?
なので、今のうちにレイに渡しておきたい」
お金の入った袋を取り出す。
「これ、今日、ガイルがサンドワームを買取に出してくれて作ったお金です。
もしかしたらドーワルトのことだから、またお金も渡さず国まで帰れと言われちゃうかもしれない。もしかしたらレイは違う国を見てみたいと思うかもしれない。
どうなるかわからないからこそ、お金は持っている方がいい。
私のお礼の気持ちだと思って、受け取って欲しい」
差し出すとレイが困った顔をしている。
「受け取って! とりあえず、しまっておいて、必要な時に使ってくれてかまわない。
サンドワーム、まだたくさんあるから気にしないで!」
レイが頷いて受け取ってくれた。
「……ありがたく頂きます。でも、できるだけルティから離れないつもりだから。いざという時のために預かっておくということにしておきます」
「うん、それでもいい。レイの好きなように使ってくれれば……」
レイがお金をしまうと言った。
「ルティはやはりフェイトのことが好きなのか? フェイトとムーラン帝国へ行きたいのか?」
「うん、フェイトのことは好き。特別に好きなんだと思う。
ムーラン帝国のことは行って見てみたいとは思うけれど、まず和平会合でどうなるかなので……。
なので、ドーワルトのことや和平会合を放ってフェイトとムーランに行くとかは考えてないよ」
「でも、それだともしかしたら……」
「大丈夫。フェイトのことが好きな気持ちはなくならないから。
言ったでしょ。もしアルタイルに人質にされても抵抗して嫌われて追い出されてやるって!
和平会合後に考えて決めるから。大丈夫。心配してくれてありがとう」
ドアがノックされたので「話はこれでおしまいね」と小さな声で言ってドアを開けに行く。
「おかえり!」
私の笑顔を見てガイルはほっとしたようだ。
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!




