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1 物語の始まり

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。


今回は聖女と勇者設定の強い主人公、さらにずっと書いてみたかった剣と魔法を使った魔物狩りとギルド登録とか自分でやってみたいことをてんこ盛りに盛り込んだ楽しい話になればと思っています。


主人公ルティの一人称を中心に話が進む予定です。


どうぞよろしくお願いします。


『あるところに呪われた王女様がいました。

 

 王女様は5歳の誕生日、王都の寺院において行われた祝福の儀式にて、邪教の女神と邪悪な竜の呪いを受けていることがわかり、王都から遠く離れた辺境の寺へ預けられました』



 前方に大きな砂煙が上がり、それに数人の人影が巻き込まれるのを見て、背負っていた荷物をその場に投げ降ろすと駆けだした。


 砂煙の前に立って腰の太刀を抜く。

 背中越しに「大丈夫か?」と声をかけると「ああ、ルティか。大丈夫だ、油断した……」とジム爺さんの声がした。


「全員いる?」

「大丈夫だ、誰も砂に引きずりこまれてない」

「ならやっちゃって大丈夫だなっ!」


 太刀を構えて間合いを計りながら、左へ大きく移動してジム爺さん達から離れ、その場で待つ。

 足元の砂が揺れて振動がくる。足元が砂に沈むように埋まっていく。

 

 一番振動が大きくなった後、ぴたっと止む瞬間がある、それに合わせて後ろに跳びあがる。

 目の前にサンドワームの口が見えこちらに突き出してくる。


「いつも同じパターンなんだよなっ!」


 太刀を横に薙ぎ払いながら、丸いその口の真ん中を真一文字に切ると無詠唱でファイアをその傷口に叩き込んで、着地する。

 

 サンドワームが後ろにのけぞりながら砂の上に倒れていく。

 そのままのけぞった首(サンドワームの口のすぐ下は首というのかわからんけど)に太刀を突き刺してその下に切り下げる。

 

 そうすると苦しがって上に身体を突き上げてくるから、太刀をそのまま留めているだけで勝手に開きになってくれる。

 2メートルぐらいの小物だった。


「一丁あがりっ!」

 

 力尽きたサンドワームのしっぽの方まで力を加えて開きにすると、口の方に戻りそちらも縦に開きにする。


「ジム爺さん。終わったよ!」


 太刀を振ってから鞘に収めようとして苦戦する。


「わ、砂、じゃりじゃり! もー、入れにくいな。しゃーない、このままいくわ」


 私は太刀をそのまま握ったままため息をついた。


「いつも見事じゃのう、今回もか?」

「うん、今回もそっちでギルドの持ち込み頼むわ! 代金の7割手数料に取ってもらっていいから!」

「いや、こちらこそ、助けてもらった上に悪いな」


 ジム爺さん達がサンドワームにロープをかけて市場の方へ引きずっていく。

 

 仲間がやられると何か気配を感じるのか、その周辺のサンドワームの動きがしばらく沈静化する。

 帰りは大丈夫そうだな。


 荷物のところに戻りがてら、少し見送ってから、寺へ向かって歩き出す。



『王女様は呪われているからこそ、その力を使って人を助けたいといつも思っていました』



「お師匠様、ただいま!」

「ルティ、おかえり。ん、またサンドワームか、最後まで開きにしたか?」

「うん、抜かりなし。ジム爺さん達がギルドに持って行ってくれた」


 太刀を玄関のテーブルの上に置くと、砂防フードとマスクを脱ぎ、ターバンを外すと髪を振り、服を叩いて砂を落とすとゴーグルを外した。


「手紙が届いてた」

 

 ポケットから預かってきた手紙を取り出すと先にお師匠様に渡してから、太刀を拭いてしまうために戻った。


「魔法は使ったのか?」

「ファイアを無詠唱で2発。口の傷がすぐくっつかないように使った」

「無詠唱にも慣れたもんだな」


 お師匠様が手紙を開いて読みだす。


 鞘を腰から外して逆さにし、トントンして砂を出すと拭いた太刀が鞘に吸い込まれるように納まる。


「いつもありがとね」

 

 太刀に向かってお礼を言うと、仏様の前の刀置きにそぅっと戻す。


「……ルティ、お迎えが来るようだ」

「誰の?」

「お前をドーワルト王国からの人質として、アルタイル王国に送ることになったそうだ」

「アルタイルって海のない?」

「ああ」

「あー、残念。1回でいいから海、見てみたかったんだけどな……」


「……いいのか? 

 お前をこの辺境に捨て置いたも同然の国のために、今更、王女として敵国の人質になりに行くなぞ……」

「人のためになるんだろ? お師匠様がいつも言うじゃん。

 お前は呪いと力を持って生まれたのだから、人のため、特に女、子ども、弱い人を助ける者にならなくてはいかんって。

 私が人質になれば、助かる者も多いのだろう。ならば行くしかない」


「そうか……。我ながら強くお育てし過ぎたかもしれん」

「お師匠様には感謝です。

 この国では呪いの産物と忌み嫌われている魔法の使い方を教えてもらえなかったら、ここまで強くなれなかったと思う。人を助ける生き方を教えてもらったから、生きていられる」


「もう少しすると迎えの者が来るそうだ。それまでに仕度をしておきなさい」



 次の日、街に行きジム爺さんからサンドワームの代金3割の150ルアンを受け取る。


「いつもありがとう。それから、ここを出て行くことになったので、お師匠様のこと、時々気にかけてやって欲しいんだ。よろしくお願いします」

「そうか、急だなあ。どこに行くんだ?」

「アルタイルって言ってた。そこにはどんな魔物がいるんだろう。楽しみだなあ」

「ルティなら、どんな魔物でも狩れそうだなあ! 気をつけてな!」

「うん、今までありがとう!」


 受け取った金でパン3つと果物を買う。15ルアンだった。

 日持ちする物も多めにと思い、乾燥デーツとブドウをそれぞれ20ルアンずつ買った。

 街の井戸で水瓶に水を補充し背中に背負う。


 寺に帰る道を歩き始めると、前に見知らぬ若い男が歩いている。少し短めの太刀を履き短槍を2本背負っている。

 砂を避けるためか、布を頭にぐるぐる巻きにして目のあたりだけ出している。

 王都からの迎えとはこの男か?


「寺へ行くのか?」と後ろから呼びかける。


 男が立ち止まりこちらを見て言った。

「寺の小僧か?」

「そんなようなものだ。これから寺に帰るところだ。案内しよう」


 男を追い抜いて先を歩き始める。


「ルクレティア様は寺にいるのか?」

「今は外出中だ。間もなく戻る」

「そうか」

「お師匠様が言っていた王都の者か?」

「なんと聞いた?」

「王都から迎えが来るから用意をしておけと」


「お前の名前は?」

「ルティだ」


「ルクレティア様はどんな方だ?」

「どんなとは?」

「……呪われていると聞いている。何か、外見に問題があるとか?」

「さあ、特にないと思うけど」


 寺に着き戸を開けると「お師匠様! 王都の人が来たよ!」と声をかけ、先に王都の人が入れるように脇に避けた。


「すまぬ」と男が言い中に入った。

 私は軽く砂を払ってからその後に続いて入り、戸を閉めた。

 

 男は砂除けの布を外していた。思っていたより若い。濃い茶色の髪を短く後ろに束ねている。

 お師匠様との挨拶はすでに終わったようで、寺の中を見回しながら「ところでルクレティア様は外出中とのことですが、どちらまで?」とお師匠様に聞いた。


「今、帰ってきてレイモンド殿の後ろにいるぞ」


 男は振り返って私を見て、明るい茶色の目を怪訝そうに細めた。


「その子がドーワルト王国第2王女ルクレティア姫だ。私はルティと呼んでいる」



『呪われた王女様は祖国が長く敵対していた隣国に、和平のための人質として送られることになったのです』

読んで下さりありがとうございます。

次も頑張ります!

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