地獄の門 ー通過ー
「国王様、もうすぐであの忌まわしき双子が到着いたします。」
「そうか…片方の名前はアストラエルと言ったか?」
「左様で。」
「ふむ…それなら…」
「国王様!双子が到着いたしました!!」
「そうか、通せ。」
「我が息子バスラよ」
「はっ。」
「今の伝達係を後で殺せ。
我の発言を遮った代償だ。」
「仰せのままに。」
―――――――
「おい、招集をかけたのはアズリナエルだけだ。
アストラエル、貴様は任務へ行け。」
「アズと俺は一緒に行動すると、1年前に契約した
そっちが契約を破るなら、俺は命令を聞かない!!」
「このっ…!!!」
「まぁまぁ、一緒に連れてけばいいさ。」
「上官殿!」
「1機だけでは寂しいからな。
ついでに話せばいい。」
「…かしこまりました。
貴様、上官殿の広大なお心に感謝せよ。」
「しねぇよバーカッ」
何か変な感じだ。
一緒に行けるのはいいけど、すんなり行きすぎな気がする。
まぁ兎も角、こいつらがアズに何かすれば
こいつらを殺すだけだ。
ガチャッ……ギィィィ……
「兄さん、なんだかここ、怖いよ…」
「大丈夫だよアズ、俺が守る」
双子が入ったその部屋には
いつもよりも何かに特化した装備を身に着けていた。
こいつら、なんだ…?
前とは違って狙撃兵の匂いもしない
でもなんだろうこの匂い…
何か焦げてるようだけど、どこか香ばしいような…
「汝ら。」
部屋の一番奥に置かれた椅子に腰かけ
立て肘をしながらこちらをじっと見つめながら、国王が語り始める。
「我に対し、虚偽の報告をしているな。」
こいつ…なんでわかった…?
報告書にはもう、2機合計の数しか書いていない
GPSで辿ったとしても、戦闘してるかどうかなんで
分かるわけない……じゃあなんで…
でもここは
「いいえ、していません。」
アズを守る為に嘘を通す。
仮にバレても契約を破ったのは俺
アズに標的は向かない。
「ほぉ。先に言っておく。
我に嘘をついていると今自白すれば、見逃してやる。」
「虚偽はしておりません。」
大丈夫
そうやって動揺させて、口を滑らそうとしてるんだ
必ず隠し通す…どんな手を使っても。
「はぁ……バスラ」
「はっ。」
ジジッ――ブォン―
アストラエルとアズリナエルの目の前に
突然映像が流れ始める
「こ、これはっ……!!」
ザザッ――
―「アズ!お前は隠れてろ!」―
―「うん…ごめん、兄さんお願い」―
―「お前の分までやるから、安心しろ!」―
そこに映し出されたのは、2人に与えられた任務を
アストラエルだけが実行する映像だった。
こいつら……まさか去年アズにした機能検査でカメラを…
「何か異論はあるか?」
「くっ……こんな録画、いつの間にしてたんだ…!」
「貴様らの定期更新の時に
アズリナエルだけ妙に劣化が少なくてね
怪しくてアズリナエルだけ録画機能を付けたんだ」
劣化速度から怪しまれたのか…!
「クソがっ…!」
「嘘をつく方が悪いんだよ。
確定した、お前ら、殺れ。」
殺れ?なにを、誰を―
その瞬間、その場にいた武装兵12人が全員
一斉にアズリナエルへと銃口を向けた。
アズ!?
ダメだ、殺させるな
俺が守るって決めたんだ
絶対…!
「やめろ!!!!!
無重r」
「完全拘束」
ガチィッ!!
俺の名前の技ッ!?
こいつらどこまで…!
くそっ!動けない!!!
「無様な姿だ…
撃て。」
「アズゥゥゥゥ!!!!」
その声はどこにも届くこともなく
銃声にかき消された。
2分間に約24,000発
いくら戦闘機械と言えど、高密度銃撃には耐えられない。
煙幕が晴れ、だんだんと見えてくる
アズリナエルの姿は――
「……ア、アズ…?」
頭部は無くなり、四肢は木っ端微塵
胴部分もボロボロになり、コアにはヒビが入っていた。
―ドクン―
この時俺は、哀しくなかった。
ただひたすらに悔しく
こいつらを恨んでいた。
―ドクン―
「なんでだ、なんでアズなんだよ!!
違反を破ったのは俺だけだ!!俺を殺せよ!!アズを返せ!!!」
ダァァァン!!!!
突然鳴り響く轟音に驚いたが
その感覚さえ貫き、俺とアズのコアを狙撃手が同時に撃ち抜いた。
狙撃手……隠れて…
「アズ……ごめ‥」
ドサッ…
「やっと静かになったな。」
2041年 9月1日 19時28分
アストラエル、アズリナエル 機能停止
戦闘兵機の記憶格納装置
4話 ご覧いただきありがとうございます
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