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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

伯爵の犬


「既に3日。バルク子爵には攻城戦は不得意であったかの?」


「平野での指揮については、王国内で上位に入りますが、攻城戦の経験は、野盗が占拠した廃城のみです」


「であるか。後2日以内に目の前の砦を攻略し、共和国内に我々は侵攻しなければ、戦後の地位は無いな。ハウンド伯爵は居るか?」


「ハッ、ここに」


「落としてくれるか?」


「閣下に勝利を!」


「感謝する、伯爵」


 大した経験が無い癖に、攻城戦の指揮に名乗りを上げた青二才の尻拭いをしなければならないことに舌打ちをしながら、会議を行われていた天幕を伯爵は出た。


 大恩があり、若い貴族にも公平に機会を与え、評価する公爵の汚点を増やさない為にも、迅速に砦を落とす算段を考えるが、対魔鉱を使った門を突破する方法が浮かばない。


 思考に溺れている間にハウンド領軍の野営地に着いていた。既に伝令を走らせており、部隊長達が伯爵の天幕に集まっていた。


「聞いた通り、明日、攻城戦を我々が主導で行うことが決まった。しかし、魔法特化である我々には、厄介な対魔鉱の門の攻略方法が無く、既に南方遠征軍の破城槌は子爵が使い潰した。この状況を打破する案を出せる者はいるか?」  


 天幕に沈黙が支配した。通常の門なら破城魔法で、対魔鉱の門なら破城槌が攻城戦の定石である。


 一旦、仕切り直して、破城槌を作成してから再度、攻城戦を行うのが一番良いが現在は、北部、東部、南部での同時侵攻であり、南部領軍のみが遅れるわけにはいかない。


「発言、よろしいでしょうか」


「よいぞ」


 最近、部隊長に昇任した若い騎士が手を挙げ、発言の許しを得た。


「3ヶ月前の私が担当した青血盗賊団の討伐した際に、連中の根城には対魔鉱が使われておりましたが、冒険者ギルドから派遣された男のお陰で、破城槌がない状態にて、討伐を完了させました」


「ほぅ、続けたまえ」


「はい。彼は黒いゴーレムを身に纏い、10分耐えてくれと私に言うと呪文を唱えつつ、門へ歩き始めました。


 我々は彼を守りつつ、耐えました。彼が門の前に立つと腕を前に突き出し、ただ一言、開放と言い放つと轟音と激しい閃光が支配し、次の瞬間には、廃城は…文字通り吹き飛んでおりました。


 青血の団長は魔法使いであったらしく、彼から溢れ出ていた可視化された魔力を見て逃げ出したおかげで、直撃を避け、生き延びておりましたが、脚を失っており、確保することが出来ました」


「なるほど。報告書を見た時は、戦場の熱に浮かされた卿の妄想を書かれていると思っていたが、この場でその話をすると言うことは嘘では無いようだな。


 しかし、今回の戦は冒険者ギルド自体は不参加、志願者のみとなっている。彼の者が志願しているとは、限らんぞ?」


「彼は来ております。討伐戦の後に彼と友人となり、私を心配して、私の私兵として、我が隊に従軍しております」


 伯爵は何とも言えない表情を浮かべている。己の精鋭の中の精鋭である部隊長を心配して、従軍している冒険者を切り札を得たと喜ぶべきか領軍を舐めていると憤慨すべきか複雑に感情が混ざる。


「色々と言いたいことは有るが先ずは、彼の者を呼ぼう。あの門を破壊出来るか、確認するしかない」


 発言した部隊長が冒険者を連れてくる為に、天幕を出た。この冒険者との出会いこそが後の伯爵家の黄金期の到来であり、伯爵のストレスとの闘いの始まりで合った。


「俺があの砦を落としてやる。その代わりにコイツに領地をくれ」


 ファーストコンタクトを非常に最悪であった。

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