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第3話 少女の名前

眠し。。。。

翌日、少女は用意された個室で目を開ける。

昨日の出来事を夢のように感じながら思い出す。

足の怪我だけでなく、他の傷にも手当てを受け、可愛い寝間着を着ている自分が信じられなかった。

鏡を見ると似合わなさに実感して「うぇ。」と吐きそうな気分になった。

部屋のドアをそっと開けると、「おはようございます。」と言いながら開けたドアの隙間に突然人の顔が現れた。

「ひぇっつつ!!??」

バタン!!

突然の出来事に少女は一瞬ドアを閉める。

あまりにもびっくりしたので、心臓がバクバク鳴り、その場に座り込んでしまう。

そんな少女の行動を気にも止めず、コンコンとドアが鳴る。

「はじめまして、お嬢さん。私はティルス様直属の使用人、カナルと申します。

お召し物とお食事をお持ち致しましたので開けて下さい。」

「・・・・・・・・・・。」

少女の警戒心は上がり、扉を開けようか悩んでいた。

「あ、もしかして先程のことで警戒してますか?驚かせてしまいすみません。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

「私は怪しい者ではありませんよ、昨日屋根を降りてからこの部屋に案内するまでずっと一緒にいた者です。」

「・・・・・・・・・・。」

少女は使用人の顔を思い出した。

「少しでいいので開けてもらえませんか?中には入りませんので。」

「・・・・・・。」

「せめて食事だけでも渡したいのですが。」

「・・・いらない。」

「はい?」

「いらない。どうせあの男に言われて来たんだろ?貴族の施しはいらない。」

「何を言っているんですか。あの人がそんな器用なことできるわけないでしょう。

食事なんて言われなくても用意されていて当たり前な人なのですから。」

「・・・・・・・・・・・。あんたほんとに使用人?

じゃあ誰が用意したのよ。」

「私です。」

「あんたもいいとこの出なんでしょ。こんなところで働いているくらいだし。いらないよ。」

少女が言った途端、少女のお腹の音が鳴る。

ぐうーーーーーーー。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「私は平民です。」

その言葉を聞いて少女はドアを少し開ける。

よく見ると、良い香りが漂ってくる。

「朝食にしましょう。」

そこには軽く微笑むカナルの姿があった。



「どうして平民が貴族に仕えているのよ。」

「この国では使用人のほとんどが平民階級の者達ですよ。」

二人はベットに座って食事をする。

「平民でも裕福なの?」

「いいえ、貧しいです。国の辺境にある村が私の実家なので。」

「他の人も?」

「出身地なんて色々です。そんなことに興味があるのですか?」

「別に。なんかあんた偉そうだったから。」

「ああ、ティルス様に対する態度のことですね?

ご心配なく、私の素をお見せするのはあの方だけですから。

ああ、今はあなたも含まれますね。」

「どうして素を見せたの。」

「そうしなければ、警戒されると思いまして。」

「・・・・・・・・・・・ズズッ。」

少女はうつむいてお茶を啜った。

「よろしければ、お名前をお伺いしても?」

「は?」

「なんてお呼びすればいいのか分りませんので。」

「他人に名乗る名などない。」

ふいっと顔をそむける。

「そうですか。ではお好きにお呼びしても?」

「ふんっ・・・・・・・」

「では、食事を終えた後はこちらの服に着替えて頂けませんか?

カミツキガメさん。」

「ぶっっっっ!!!」

あまりのネーミングセンスに少女は飲み物を吹いてしまい、むせた。

「げふぉっげふぉっ!!!」

「おや、大丈夫ですか?カミツキガメさん。」

「な、なによその名前!!!」

「え?好きにお呼びしたまでですが、もしやお気に召しませんでした?」

「だから、げふぉっげふぉっ!!なんで、、、、!!」

「奥様に噛みついたとお聞きしたので。カミツキガメは目の前にあるものにかみつく習性があって、気性が荒く、素早いのであなたにぴったりだと思ったのですが・・・・。

あっ、でもあなたは猿みたいに動きますし、亀ではなかったですね。失礼致しました。」

にっこりと笑って返答するカナル。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

口から吐いた水がゆっくりポタッ、ポタッと落ちる。

少女の中でカナルの評価パロメーターは高くなったり低くなったりして、ぐらついていた。

平民だと聞いて少し解けた警戒心がまたさらに上がった。


「そんな目で見ないで下さい。ちょっと待って下さい、今あなたにぴったりの名前を考えますから。」

「もういい。」

「バッファロウ、、いやそこまで大きくないし、、、、あっ、チーター!!素早いし、獲物に噛みつくし、なにより睨んだ目がそっく、、、」

「もういい!!」

少女が大きな声を上げた。


そりゃそうだ。

なんで動物なんだか・・・・・。

くそガキでもよかろうに。


「ではお名前は?」

「・・・・・っ!!」

このままでは変な名を付けられると思い、少女は観念した。

「シャ、、、、、シャナ・・・・・。」

ぼそっと答える奴隷の少女、シャナ。

「え?シャケ?陸生物ではなく魚でしたか。」

「シャナ!!!あんたわざと言ってるでしょ!!」

「おや、ばれました?笑えると思いまして。」

「笑えないわよ」

「ではシャナ様、改めまして宜しくお願い致します。まずはこちらのお召し物にお着替え下さい。」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」


「ティルス様、お連れ致しました。」

「入れ。」

カナルのノック後にティルスは返答する。

ティルスはソファーに腰掛けており、まあ座ってくれ。とシャナに言った。

「いい。」

「立ったまんまじゃ話づらいだろ。」

「いや。」

ふいっとそっぽを向く。

「ティルス様、こういう時は言うと余計に面倒なことになります。言わぬが手かと。」

片手を顔に当て、いかにも耳打ちポーズで話すカナルだが、ティルスとカナルの立ち位置は耳打ちできる距離ではない。

ばっちりシャナにも聞こえた。

「・・・・・・・・・・」

やっぱこいつ嫌いと思うシャナ。


「じゃあ、自己紹介でもするか。俺はティルス。一応この家の長男だ。

で、お前の名前は?」

「・・・・・・・・・・・・。」

そっぽを向いたまま。シャナはティルスを見ようとしなかった。

誰が貴族なんかに名乗るか!と心の中でつぶやく。

そんなシャナの気持ちをおかまいなしにしれっとカナルが答える。

「あっシャナというそうです。」

突然の裏切り行為にシャナは目を見開き、あんぐりと口を開ける。

「んなぁ・・・・・・・・・!!!」

何かに察したティルスは「あーーーーー」という顔をする。

「とりあえず、カナル、お茶でも用意してくれ。」

「かしこまりました。」

シャナはティルスの方をゆっくり向き、そんなシャナを見たティルスは「お疲れ様。」

と言った。

それから30分経過した。

あのやり取りからシャナはずっとむすーーー!!っとした顔をして一言もしゃべらずにいた。ティルスも我慢の限界であった。

「どうすんだ、お前のせいで話しできなくなったぞ。」

「どうせティルス様の前では名乗らないと思いまして、お先に聞いていたのですが。」

「ちなみにどうやって聞いた。」

「カミツキガメと命名されたのがお気に召さなかったらしく、大声で自発的に。

無理に聞いておりません。」

「あーーそうかいそうかい。・・・・・・・・減給。」

「シャナ様、こちらにおいしいお菓子があるのですが!!!」

「あんたがいなくなったら食べる。」

「だそうだ。」

「私は悲しいです。謝罪もしましたし、ただの微笑ましい冗談ではありませんか。」

ぐすんっとわざとらしくするカナル。

「もういい。」

「とりあえず、お前はもうしゃべるな。」

シャナとティルスの静かな静止が入るのであった。


続きまーす

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