プロローグ「つまらない話」
初めまして、錦 あゆむと申します。
高校時代から書きたかった話を投稿してみました。
まずはプロローグからです。
宜しくお願い致します。
太陽が真上に上がっている頃、広場の日陰に白い服を着た青年が木に寄りかかって座っていた。
暑いのか、気分が良くないのか顔を下に向けてうずくまっていた。そんな姿を見た少女が青年の顔を除きながら声をかける。
「お兄さん?ええっと、お姉さん?大丈夫?具合悪いの?」
青年は肩につくまで髪が長く、女性のような顔立ちをしていたため、少女には判別が難しかった。
また、青年は手を隠すくらい長い袖で大きなフードが着いた分厚い服を着ており、その服の上からは鞄と見間違うほどの大きな本を肩から下げていた。
少女の興味は青年の安否よりもその大きな本に移った。
「大きい本!なぁにこれ!」
「うるさいなぁ、あっちいけよ。」
「わっ、お兄さんだった!しかも生きてた!」
「こっちはつまらないオチを見させられて気分が悪いんだよ、頭が痛いからどっか行け。」
「つまらないオチ?オチってなぁに?」
「話の結末のことさ、ああくそっ思い出しただけで嫌気がする。」
「どんな話?」
少女は青年の顔色お構いなしに問いかける。
「お前、話聞いてた?思い出すだけで気分が悪くなるって言ってんだろ。」
「えーー、エミリー知りたい!」
「エミリーっていうの??お前。」
「うん、お兄さんは?」
「僕は語り屋。」
「カタリヤ?それがお兄さんのお名前?」
「本名ではないよ、通り名さ。会う人にはそう名乗っている。」
「女の子みたいな名前だから恥ずかしいの?」
「なんでそうなる。」
「だってお姉さんみたいな顔しているし、女の子の名前つけられたのかなーって。
あ!それとも顔に似合わない名前だったりして!」
少女、エミリーは目を輝かせながら語り屋と名乗る青年に顔を近づける。
「会ってそうそう失礼なやつだなお前は。」
のぞき込んでくるエミリーの顔を語り屋は片手でわしづかみし、自分から引き離す。怒りがこもっているのでかなり力強く、痛い。
「痛だだだだだぁぁがががっががががががががぁ、やべてはなじてぇぇぇ!!。」
「あっ」
その時、語り屋は何かを思いつきエミリーから手を離す。
そして、少し考え込んだあと問いかける。
「お前、人が失敗する話好き?」
「失敗?んー、お父さんがずっこけるのを見た時は面白かったかな、そういうの?」
「似たような話さ、つまらない話でも聞きたい?」
「うん!お話大好き!聞きたい!」
その一声を聞いた語り屋は「ふっ」と軽く笑い、顔つきが変わった。
肩から下げていた大きな本が空中に浮かび、開いた。
「では、ご要望にお応えして一つ聞かせよう。くだらない男の物語を。」
「ほぉぁー」
浮かぶ本に目を奪われるエミリー、そんなエミリーの様子を見ながら語り屋は続ける。
「舞台は身分差が激しいとある国の貴族街。そこには一人の貴族の青年と異国から連れてこられた奴隷の少女がおりました。」
お読み頂きありがとうございます。