筋肉大好き悪役令嬢が、王太子の婚約者を妹に盗られてなんと騎士団の寮母様にされてしまった! これはチャンス、筋肉を観察して愛でないと!となったんですが。え?復讐まあ因果応報というか自業自得といいますか。
「ビオラ・レンフィル。お前は妹のリオーラを虐めたそうだな!」
「虐めたとは?」
「リオーラが嫌がる本を無理やり見せたり……」
「お勧めの筋肉画集を見せただけですが……あの子が何を読んでいるのか興味があるといったもので」
「リオーラはそんなものに興味がないと!」
「趣味が悪いといわれたので、それ以来見せてませんわ」
私は王太子殿下がリオーラを後ろにかばいながら私に怒鳴るのを黙って聞いていました。
私は、筋肉をめでるのが趣味、うちの誰もが知っているのに、リオーラは半年前にできたばかりの妹で趣味を知りたいというので教えただけですわ。
リオーラは私の母違いの妹で、父が昔使用人に手を付けて生ませた子です。
最近浮気がわかりこの子を引き取りたいといって、母は怒り、父と離縁し、うちはめちゃくちゃでした。
リオーラには罪はないので、私は姉としてコミュニケーションをとろうと……。
「お前の変な趣味をリオーラに押し付けようと!」
「理解はされないものと知っているので押し付けたりはしませんわよ」
「もういい! 言い訳はいい! お前と婚約破棄する!」
私は別に婚約破棄でもいいかなと思ってはいと頷きました。殿下は筋肉が全くないので私の趣味ではないので……。
リオーラが殿下の後ろで楽しそうに笑っています。
うーんあなたの好みだとそういえば言ってましたわね。
「お前を断罪し、辺境に!」
「辺境なら、魔物討伐の騎士たちがいる騎士団寮がいいですわ!」
「は?」
「あそこなら!」
「わかった、そこに送る!」
面倒くさげに殿下が手を振りました。私、殿下のこと嫌いじゃなかったですわ。だって陛下が好みの筋肉だったので将来ああなるかもと期待はしてましたの。
私はわかりましたと頷き、家におとがめはないですわよねえと聞くと、ないないと殿下が首を振りましたわ。それならいいですわと私は辺境行の馬車に乗ったのです。
「飯、早くこっちも!」
「俺も!」
「はい、これ、取りに来て!」
私は流れる男くさい汗、そして服の上からでもわかる筋肉に囲まれ至福に満ちていました。
今は騎士団の寮母、つまり世話係をしています。
男だらけに女一人放り込んで、変なことをされたらいいとか思っていたようですが、彼らは紳士です。だって騎士がそんなことをしたら、身分をはく奪されることくらいはわかっていますし。
元々貴族の三男から下がつくことが多いですから、紳士が多いです。
「ビオラ、これつくろっておいて!」
ああ、シャツを投げてよこす騎士、その盛り上がった筋肉、上腕二頭筋! ああ素晴らしい。
私の視線を気にもせず走り去っていく騎士様達、世界って素晴らしい!
「……なんで伯爵令嬢がこんなところに?」
「妹いじめの罪ですわ」
騎士団長のリックさんに私は笑いかけます。シャツの汚れがひどかったので繕う前に洗濯をしていたのですが。
「伯爵令嬢が家事全般できるのも謎だが」
「貧乏な家の長女をしていたら、こうなりますわ」
伯爵といっても爵位だけ、領地から入ってくる収入は年々減っていって、私が王太子殿下の婚約者になったとき支度はどうしようとお父様泣いていましたもの。
お母さまの家からある程度の援助があったのでなんとそれも打ち切り。
お母さま、基本的にお父様には興味なかったので、私のために離婚しなかったのもあったそうで。
「リックさんは、確か子爵の家の四男だと聞きましたが」
「ああ四男なんて本当に金なんてかけてもらえないし、ここにくるしかなかったな~」
私は良い筋肉を愛でながら、洗濯をしています。素振りをしながら話せるなんて器用ですわリックさん。
「悔しくないのか? あんたの妹は今王太子の婚約者様だが」
「ああ多分、自滅するのも近いですし」
「え?」
「あの子、うちのお金のなさをきちんと知りませんの、私が婚約者だったからまだお父様、婚約者としてふさわしい支度ができる予定だったので」
私は洗濯物を干しながら笑います。ああ、空が青いですわねえ。大殿筋も素晴らしいですわ。
ちらっと下半身を見て私は堪能します。
変態とそういえば妹に言われたこともありますが。どうも性癖というものは変えられませんわ。
リックさんは私のことを気にかけてくれていました。乱暴しようなどというやつがいたら! と皆さんを脅されてましたし……。まあそれはないから安心してもいいですわよ。
「あんたの妹、婚約破棄されたそうだが……」
「思ったより早かったですわね」
私はじゃがいもの皮をむきながら答えます。リックさんは何か支度ができないとかなんとかお金がないとか言われたそうだ、あと王妃様を怒らせたと言います。
「ええ、お父様から連絡がありましたわ。婚約者としての支度は妹が相手ならできないと母の実家に言われたそうです当り前ですわよね」
「支度さえできない家の婚約者なぞ認められるかと陛下が一喝されたそうだ、王妃様へ不敬も働いたとか」
「もともと陛下はそのつもりでしたわよ?」
「え?」
「だって私がここに行くように最初にいってくださったの陛下ですし」
私は殿下が婚約破棄などと馬鹿なことを考えているということを陛下から聞いていました。
なので現実を見せてやってくれと頼まれたのです。
「そうなのか」
「殿下は私と婚約破棄を陛下の許可をとらずにしたことにより廃嫡ですわよね?」
「ああ」
「陛下も悪ですわよね、第二王子のほうが出来がいいから殿下を廃嫡する機会を伺っていたなんて」
私はふんふんと鼻歌を歌いながら、ジャガイモをむいていきます。
自業自得なのですわよねえ。あれって。
「……これ、厨房までもっていってくださいな。リックさん」
「ああ、わかった」
私は素晴らしい筋肉ですわとちらっとまたシャツの上から盛り上がる美しい筋肉たちを見ます。
リックさんは理想の筋肉の人ですわあ。
ここに居られて幸せですとにっこりと笑うと、なぜかリックさんの顔が真っ赤になったのでした。
お父様はお金がなさ過ぎて、借金を抱え込んで、寝込んでいるそうですわ。お母さまも戻るつもりはないそうです。妹は王妃様を怒らせた罪で辺境送りになったそうですわ。何を余計なことを言ったのでしょう。あの方沸点が低いのに……。私とて怒らせないように注意をしてましたのよ。
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