現実2
ノートを閉じた。
「なぁなぁなぁ、それ日記?」
びくっと肩を震わせ、声の主の方へ振り返る。
「……居たんだ?今日も」
「もう、すぐ忘れるんだから、お前は。俺、2時間前から居た」
兄は、けろっとした顔で卓袱台のところに居た。
「千宏さ、最近、何悩んでんの?」
「え?」
これを見られた?……まさか。そんなことは。
「進路の悩み?人生の悩み?それとも恋の悩み?!」
この質問から、見られていないと判断し、そっと胸を撫で下ろす。
「今んとこ、千宏には俺しか居ないんだからさ、……言ってみろって」
兄の眼をじっと見てみた。
……今にも泣きそうな顔すんなよ。
視線を外して、ベッドに腰掛けた。
「別に、何にもないよ」
実際、そんなに深く悩んでることなんて、なかった。
ちょっと、笑ってみた。
「そっか。それなら、いいんだ」
そう言って、兄は部屋から出て行った。
机の上にある煙草の箱から1本取って、火をつけて、銜えた。
主流煙を肺に入れ、副流煙を外に出す。それの繰り返し。
「……また煙草?」
そう言って、また兄が来た。
「また来たのかよ?……おっ?!」
兄の手には、レアチーズケーキとマグカップが2つずつ載ったトレイ。卓袱台に置く。
「夜食べると太るんだけどなー」
そう言いつつも、そそくさとちゃっかり皿を寄せ、愛用している水色の柄のフォークを握って座った。
「ホント、ゲンキンな奴だなぁ、お前。……って、火消したか?」
「あ」
そのまま灰皿に置きっ放しだったのに気が付き、慌てて揉み消す。
「火事になるかもしんねぇんだからさ、気を付けろよ」
「はーい。いっただっきまぁす♪」
一口食べる。
「んー美味い!これ、どこのケーキ?」
「俺が作ったんだけど」
「ほほぅ!流石翔兄だねぇ!うん、いい主夫になれるよw」
満面の笑みであろう妹を見て、兄も満足している様子だった。