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エピローグ:たとえ失われゆく世界でも

 □■□



「えーん! うえーん!!」


 倒壊した村で、あちこちで火の手が上がる中で、八歳の少女ユナは燃える家の前で座り込み、泣き喚く。


 突如現れた巨人の光線が村を巻き込み、父も、母も、兄も、他の村人達もみんな死んだ。

 この世界は、一瞬で地獄と化した。

 

「ぐすっ……、嫌だよ……死にたく、ないよ……」


 ユナも足を怪我していて動けない。もう、助からない。

 そんなことは分かっていたはずなのに、それでも両親から貰った、勇者の伝説が記された本を抱きしめながら彼女は叫んでいた。


「助けて……助けてよ、勇者様……!」


 家が倒壊する。燃える木材が、彼女を押し潰そうと――


「――手を伸ばせ!!」

 

「……え?」

 

 顔を上げた先に、光があった。

 馬車に乗った黒い少年が、疾駆する馬の手網を右手で握りながら、必死に身を乗り出してこちらに左手を差し出している。角の生えた白い少女が、その少年の身体を必死に支えている。


「……あ」


 ――間違いない。きっとユナは、この二人のことを出会う前からずっと知っていた。

 

 この日、全てを失ったと思っていた。

 だが、希望は、未来は、確かにまだそこに残っていた。

 もう、物語の続きは始まっていた。


「……なんだ。やっぱり、いたんだ……」


 彼女は、泣きながら笑って、その光の方へ手を差し伸ばして――



 □■□



 十数人を載せた馬車が、ひび割れていく大地の中を駆ける。


「……また、勝てなかった……」


 荷台の前方で馬の手網を引きながら、少年が俯き、血を吐くように呻く。


「また、多くの人を殺した……!! 何が……これのどこが勇者だ!! ふざけるな!!」

「……」


 座り込んでいた少女は、ゆっくりと少年の背中へと近づいていた。

 手網を強く握り締める手に、自身の手を添える。


「……でも、確かにあなたに救われた命がある。この戦いに、きっと意味はあった。あなたは、それでも誰かの勇者になれた。……それは、私にとっても」


 もう一つの手を彼の肩に添え、乗り出した身体を彼の背中に預け、囁いた。


「あなたが救ってくれた私も、今ここにちゃんといるよ。もうあなたは、一人じゃないよ。……だから、もう一人で泣かないで……シノブ」




 崩落する世界を背に、それでも彼らは行く。


 多くの悲しみと絶望を抱え、それでも希望と救いを求め、再び明日へと進む。

 



【第一章・完】

これにて一章完結です!


しかし勇者と魔王の戦いはまだ始まったばかり。

次からは二章「帝国ビフレスト降下作戦」編が始まります。


人を殺し続ける『帝国』。突如動き出す第三勢力『連邦』。そして、『血盟四天王』の生まれ変わり達。


二人は、これらが目論む陰謀に巻き込まれていくことに。


――それでも、彼らは勝利への引き金を引く。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


いいね、ブクマ、☆☆☆☆☆等いただけると本当にとても嬉しいです!

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