エピローグ:たとえ失われゆく世界でも
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「えーん! うえーん!!」
倒壊した村で、あちこちで火の手が上がる中で、八歳の少女ユナは燃える家の前で座り込み、泣き喚く。
突如現れた巨人の光線が村を巻き込み、父も、母も、兄も、他の村人達もみんな死んだ。
この世界は、一瞬で地獄と化した。
「ぐすっ……、嫌だよ……死にたく、ないよ……」
ユナも足を怪我していて動けない。もう、助からない。
そんなことは分かっていたはずなのに、それでも両親から貰った、勇者の伝説が記された本を抱きしめながら彼女は叫んでいた。
「助けて……助けてよ、勇者様……!」
家が倒壊する。燃える木材が、彼女を押し潰そうと――
「――手を伸ばせ!!」
「……え?」
顔を上げた先に、光があった。
馬車に乗った黒い少年が、疾駆する馬の手網を右手で握りながら、必死に身を乗り出してこちらに左手を差し出している。角の生えた白い少女が、その少年の身体を必死に支えている。
「……あ」
――間違いない。きっとユナは、この二人のことを出会う前からずっと知っていた。
この日、全てを失ったと思っていた。
だが、希望は、未来は、確かにまだそこに残っていた。
もう、物語の続きは始まっていた。
「……なんだ。やっぱり、いたんだ……」
彼女は、泣きながら笑って、その光の方へ手を差し伸ばして――
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十数人を載せた馬車が、ひび割れていく大地の中を駆ける。
「……また、勝てなかった……」
荷台の前方で馬の手網を引きながら、少年が俯き、血を吐くように呻く。
「また、多くの人を殺した……!! 何が……これのどこが勇者だ!! ふざけるな!!」
「……」
座り込んでいた少女は、ゆっくりと少年の背中へと近づいていた。
手網を強く握り締める手に、自身の手を添える。
「……でも、確かにあなたに救われた命がある。この戦いに、きっと意味はあった。あなたは、それでも誰かの勇者になれた。……それは、私にとっても」
もう一つの手を彼の肩に添え、乗り出した身体を彼の背中に預け、囁いた。
「あなたが救ってくれた私も、今ここにちゃんといるよ。もうあなたは、一人じゃないよ。……だから、もう一人で泣かないで……シノブ」
崩落する世界を背に、それでも彼らは行く。
多くの悲しみと絶望を抱え、それでも希望と救いを求め、再び明日へと進む。
【第一章・完】
これにて一章完結です!
しかし勇者と魔王の戦いはまだ始まったばかり。
次からは二章「帝国ビフレスト降下作戦」編が始まります。
人を殺し続ける『帝国』。突如動き出す第三勢力『連邦』。そして、『血盟四天王』の生まれ変わり達。
二人は、これらが目論む陰謀に巻き込まれていくことに。
――それでも、彼らは勝利への引き金を引く。
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