二十話:魔人逃亡戦
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「ユグノ・ブースト」の強化は移動速度も上げてくれるため、森の悪路でもかなりの速度で走ることが出来た。
巧みに木々で身体を隠しながら、信乃は逃げている。
だが、強靭な魔物の肉体を持つ魔人達を完全に撒くことは難しい。
見えているだけで二体、竜女と泥人形の魔人が信乃の後方から追いかけてきている。
「ビリガエルの退屈な長話の次は、追いかけっこ? 勘弁して欲しいわよ。さっさと諦めてくれない?」
「グフッ、ユウシャコロス、コロス!!」
走りながら、信乃は後方にガンドを向ける。
「『メガロ・バースト』!」
〝メガロ・バースト
魔法攻撃力:150
威力階級メガロ:×2
無属性補正:×0.8
魔法威力:240〟
放たれた魔法は泥人形を直撃。顔の半分を吹き飛ばされ、身体は転倒する。
「『サンドイート』」
しかし、急に周囲の土が浮かび上がり、身体にくっつく。草交じりの新たな顔となり、泥人形は瞬時に復活する。
「……くそっ、再生魔法か。厄介な壁役だな」
倒すには、一瞬で泥全てを吹き飛ばす必要がある。だが、今の状況の信乃にそれほどの火力を用意するのは難しい。
「足が緩んでいるわよ、ボウヤ。喰らいなさい、『ギガント・フレイムバースト』!」
「……ッ! 『ギガント・バースト』!」
〝ギガント・フレイムバースト
魔法攻撃力:120
威力階級ギガント:×4
魔法威力:480〟
〝ギガント・バースト
魔法攻撃力:150
威力階級ギガント:×4
無属性補正:×0.8
魔法威力:480〟
竜女のブレード・ガンドから放たれた炎弾を、信乃も魔法で相殺。
「まだまだ! お姉さんが優しく殺してあげるわ! 『ドラゴンサンダー』!」
しかし更に彼女はブレード・ガンドを持つ腕とは違う方――ドラゴンになっている手をかざし、大きな竜のような形をした雷を放つ。それは生き物のように、予測不能な動きをしながら信乃に迫ってきた。
「『エクスプロージョン・バースト』!」
〝ドラゴンサンダー
魔法攻撃力:120
威力階級エクスプロージョン:×8
魔法威力:960〟
〝エクスプロージョン・バースト
魔法攻撃力:150
威力階級エクスプロージョン:×8
無属性補正:×0.8
魔法威力:960〟
今度はガンドの最大魔法で何とか相殺。しかし、直後に今度は空から声が飛んできた。
「ははっ! 隙ありだ少年! 『メガロ・ロックマルクバースト』!!」
〝メガロ・ロックマルクバースト
魔法攻撃力:100
威力階級メガロ:×2
魔法威力:200〟
鳥男が空中からアサルト・ガンドで無数の岩弾を放つ。
こちらは強化された脚力で避けるものの、足元に岩が積み上がり、彼の行く手を遮る。
「『旋風蹴り』!!」
〝旋風蹴り
魔法攻撃力:100
威力階級エクスプロージョン:×8
魔法威力:800〟
次に飛んできたのは鳥男自身だ。足に発生させた竜巻で高速回転し、急降下で凄まじい速度の乗った回転蹴りが襲いかかってくる。
「ぐっ……!」
しかし、彼の蹴りは突然信乃の前に発生した透明な壁に阻まれる。
〝プロテクション・シールド
魔法攻撃力:150
威力階級エクスプロージョン:×8
無属性補正:×0.8
シールド補正:×2
魔法威力:1920〟
「ピンチプロテクト」。持っていれば防ぎきれない攻撃が飛んできた時、一度だけ自動的に防御魔法「プロテクション・シールド」を展開してくれる使い捨ての小型チップ形状の魔器だ。
(くそ、もうこれを消費するとは……!)
そんな信乃の内心の焦りとは裏腹に、攻撃を防がれた鳥男は感嘆の声を発する。
「ほう、これも防ぐとは。勇者の名は伊達ではないらしい。……だが、攻撃はまだまだこれからだ。私の急降下は、その地点に目標がいることを知らせるようなものでもあるからな」
「……っ!?」
「ははっ! なるほどそこかゲロ! 『ギガント・ボルトレーザー』!」
「視認。死ね。『ギガント・ウインドレーザー』!」
〝ギガント・ボルトレーザー
魔法攻撃力:90
威力階級ギガント:×4
魔法威力:360〟
〝ギガント・ウインドレーザー
魔法攻撃力110
威力階級ギガント:×4
魔法威力:440〟
再び鳥男が飛び去ると同時、今度は魔人ビリガエルとヒドクヘビの声と、二本の光線が二方向から正確に飛んでくる。これもまた、避けられそうにない。しかも、ガンドの魔法では位置的にどちらか一つしか迎撃が出来ない。
「くそ……『ディヴァイン・サンクチュアリ』!!」
〝ディヴァイン・サンクチュアリ
魔法攻撃力:150
威力階級ディヴァイン:×128
光属性補正:×1.2
スフィア補正:×1.5
魔法威力:34560〟
今度は、神杖の全周防御魔法で余りにもオーバー過ぎる数値で防いでいた。当然それが攻撃魔法のように反撃をしてくれることもない。
(あまり、こいつの魔法は使いたくないんだよ……!)
逃げ始めてから、結構魔法を使ってしまった。
神杖の魔法は強力である分、魔力消費も凄まじく激しい。神杖が独自に貯蔵してくれている魔力を消費するとはいえ、それでも一度の使用でごっそりと持っていかれる。連続で使用し続ければ、あっという間に魔力が底を着いてしまうだろう。
その前に、この状況をどうにかしなければならない。
相手は魔人五体。壁役、近接攻撃役、偵察役、遠距離攻撃役二体。それぞれの役割を担い、連携も取れている。対するこちらは、神器では補助魔法しか使えないサポーター。初めから勝ち目などなく、逃げきるしかない。
(なら、少しでもその陣形を崩す為にも一体は貰っていく)
攻撃を防いだ衝撃で起こった土煙の中、信乃は瓶に入った青い液体であるマジックポーション――魔力の回復薬を素早く飲み干してから、全力で駆け出す。
狙いは魔人ヒドクヘビ。さっきの魔法が撃たれた方向へ進む。
鳥男の偵察も厄介だが、こちらの持つ魔法「毒炎」も厄介だ。
炎を森に広げられれば逃げ道が減る上、炎に混じった毒素は身体の動きを鈍くさせる。神杖の回復魔法で治せるが、それだけの為に使うのは致命的だ。
「驚嘆」
ヒドクヘビの姿を補足。すぐにガンドを向ける。
「あら、どこに行くのボウヤ? やっと戦う気になった?」
「ウガガ、マッテマッテ」
しかし、行く手に竜女と泥人形が立ち塞がる。この土煙の中、信乃の動きをしっかりと見ている。
「……どけ」
手に持っていたスイッチを起動。するとさっきの魔法で予め泥人形に付けていたチップ形状の小型魔器――「タイムボンバー」から、「エクスプロージョン・バースト」の大爆発が起こる。
「ゴゴゴー!?」
「な……っ!? ちぃ……!」
泥人形の上半身は吹き飛び、近くにいた竜女も爆風に巻き込まれ動きが止まる。
その脇を通り抜け、再び信乃は魔人ヒドクヘビにガンドを向けた。
「『ギガント・バースト』!」
「『毒炎』!」
〝ギガント・バースト
魔法攻撃力:150
威力階級ギガント:×4
無属性補正:×0.8
魔法威力:480〟
〝毒炎
魔法攻撃力:110
威力階級ギガント:×4
魔法威力:440〟
少し離れた距離から魔法を撃つが、これはほぼ相殺で防がれてしまう。だが、それも想定済みだ。
信乃は、さっきのタイムボンバーとは違うスイッチを押した。
すると、ヒドクヘビ付近で防がれた魔法を中心に、ピンク色の瘴気が発生する。
先程の魔法に乗せて飛ばしていた使い捨て魔器「タイムスリーパー」の補助魔法、「スリープ」。神杖の強化により、範囲も通常より広くなっている。
魔法の効果としては、名前通りだ。
「……!? 不、覚……」
崩れ落ち、眠りにつく。完全に無防備になったヒドクヘビへ、とどめを刺した。
「『ギガント・バースト』!!」
爆発と共に、ヒドクヘビは消し飛ぶ。しかし、直後に横から声が聞こえた。
「ヒドクヘビ!? おのれよくもやったなゲロ!! 『ビリねんえき』!!」
「……っ!?」
振り向くも、時は既に遅し。
想像以上に近くに迫っていたビリガエルから、魔法を受けてしまった。




