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六十八話:巨光弾と巨炎球

 □■□



(……魔流絶技、と来ましたか。フェンリルさんが使っているところを見た時も驚きましたが……まさかスルトさんまで、そんなものを習得しているだなんて……!)


 苛立ちを抑えきることも出来ず、確認と八つ当たりを兼ねてヨルムはまた一つの砲門からスルトに向けて光線を放つ。


「『カタストロフ・ライトニングレーザー』!」


〝カタストロフ・ライトニングレーザー

 魔法攻撃力:315

 威力階級カタストロフ:×32

 光属性補正:×1.2

 ヴァルキュリア補正:×1.2

 魔法威力:14515.2〟


 威力は勿論変わらず。

 それに対しスルトは、また光を纏いながら燃える拳を構える。


「見事だ、アタシにこの技まで使わせるなんてな。まあ一度見せたからにはもう出し惜しみしねえよ。――伴出。魔流絶技・破式七ノ型:激雷打震!!」


 そして、狙い済ました角度からの正拳突き。


 また純粋な魔法威力だけを見れば勝っているはずの炎に、ヨルムの光線は弾かれてしまった。


「……!」


 だが、ヨルムの眼帯に仕込まれている魔法数値透視魔器「ラタトスク・アイ」は連邦の最新式の特別仕様。

 本来威力数値化出来ない「魔流絶技」を疑似的に数値化して見ることが出来るのだ。


 その代物に通されたスルトの炎拳威力は、こうなっていた。


〝光変換:ソーン・フォールの炎

 魔法攻撃力:610

 威力階級ハイエクスプロージョン:×16

 光属性補正:×1.2

 魔法威力:11712


 魔流絶技・破式七ノ型:激雷打震

 推定魔法威力変換数値:+3000


 合計推定魔法威力:14712〟


 魔流絶技の併出により、本来の魔法威力に加えて別の固定値が加算されている。実際の魔法威力は変わらないものの、今の彼女の炎拳はこの数値までの相手魔法を破壊出来るということだ。


 この魔流絶技による「推定魔法威力変換数値」は数ある型によっても変わってくるし、個人の鍛錬度合や才能によっても大きく変動する(スルトは自魔法の強さのせいで見劣りするが、三千なんて値を叩き出せるのなら相当なものだ)。


 この絶技、何も自身の魔法と併出せずとも良い。ただ純粋な「技」として放てば、魔力消費もせずにこの「推定魔法威力変換数値」までの威力を出す相手魔法を破壊出来るようになる。


 このように魔法を撃ち破ることに特化した武術であるため、生体を如何に壊すかまでは目的としていない。人ならば致命傷だろうが、この技単体では魔物や魔人相手には大きなダメージは見込めないだろう。


 それでも、魔法が全ての戦いを掌握しつつある今の時代に、この「魔流絶技」を習得していることはとんでもないアドバンテージとなる。


「……本当に、あなたはこの期に及んで様々な芸を見せてくれますね。『レーヴァテイン』も無しにここまでやる方だとは思ってもみませんでしたよ。……だったらいいです、私も本気の本気ですよ。あなたが持つ小細工の中に――これを防ぐ術はあるのですか!?」

「……!」


 言葉通り、ヨルムもいよいよ全力だった。


 一際大きな反理の穴を開ける。そこから、今まで覗かせてきた砲門とは比べ物にならない程に巨大な大砲を一門呼び寄せる。


 もう、魔力消費量も知ったことではない。今から「これ」を一回撃つだけでも魔力を枯渇するだろうが、またマジックポーションを胃に直接流し込む覚悟など出来ている。


 そんなただの嫌悪の感情で動いていては、絶対に勝てる相手ではないのだと悟ってしまったのだから。


 ヨルムは、その大砲に向けて魔法司令を送る。


「大星主砲、駆動。魔力最大充填、絶対照準、臨界照射!! 光の大星砲を以て、あれの塵一つ残すな、『ブリュンヒルデ』!! ――『シリウス・ライトニングバースト』!!」


 発光。

 放ったこちらすらも一瞬目を閉じてしまう程の眩い光が、砲門より放たれる。


 輪郭が曖昧で大きさすらもよく分からない、だが少なくとも視界を埋めつくしてしまうほどの強大さを持ったその光弾は、凄まじい速度を以てスルトへと迫る。


〝シリウス・ライトニングバースト

 魔法攻撃力:315

 威力階級アルクトゥルス:×64

 光属性補正:×1.2

 ヴァルキュリア補正:×1.2

 魔法威力:29030.4〟


 ――威力階級アルクトゥルス。


 既に色々威力がおかしかった「カタストロフ級」の、更に上に君臨する威力階級。

 シラが切り札として扱っていた所を見たが、ヨルムにとってもこの威力階級が「ブリュンヒルデ」の出せる最大のものとなっている。


 これでも「ストーム」系のような全体攻撃魔法ではなく、単体攻撃魔法という扱いにはなるのだが、例え並の相手が束になって魔法を撃って対抗して来ても、これを撃ち破ることなどほぼ不可能だろう。


 だがそれに対し、やはりスルトは臆すること無く身構えているのみだった。


「……ふっ。良い、良いぞヨルムンガンド!! そう来なくてはな!! ならばアンタには――我が絶技の究極を見せてやろう!!」

「……!」

 

 まずスルトは、下の魔器竜に指示を出す。


「リンドヴルム! 『カタストロフ・フレイムインパクト』!!」

「バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 まずは、炎を纏った突進。しかしこれだけではヨルムの魔法には敵わない。

 

 だがその光にぶつかる前にスルトは、一緒に突進中だった真下にいるリンドヴルムの背中を鷲掴みにする。


「……ッ!?」

「……っ、らあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 リンドヴルムは、そのまま背中と羽を丸めてほぼ球体に近い形状となる。

 そこからの突進の主導権はスルトに握られる。


 その火炎鉄球と化した自身の魔器を持ったまま、彼女は空中で縦に何度も回転。突進の速度も加わり、更に鉄球は加速。

 更に、自身の身体に宿った炎の多くもその鉄球に移動させ、それが纏う炎は一際大きくなる。


 数回のきりもみの後、最高速度に至った鉄球の先にあるのは、ヨルムの放った巨光球だ。


 そしてスルトは巨炎球を振り下ろす直前に、この魔器竜との連携技を叫んだ。


「――伴出。魔流絶技・破式零ノ型:画竜点睛(がりょうてんせい)!!」


〝カタストロフ・フレイムインパクト(竜炎鉄球)

 魔法攻撃力:460

 威力階級カタストロフ:×32

 インパクト補正:×1.2

 他魔法による補助:×1.3

 魔法威力:22963.2


 魔流絶技・破式零ノ型:画竜点睛

 推定魔法威力変換数値:+7000


 合計推定魔法威力:29963.2〟


 ヨルムの光とスルトの炎は激しくぶつかり、周囲に膨大な魔力と甚大な被害をまき散らし。


 そして、相殺するのだった。

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