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十八話:謎の槍使い

 □■□



「な……!?」


 見上げると、外壁の上に奇妙な恰好をした少女が座っている。


 一言で表すのなら、出来損ないの道化ピエロだ。


 全身を黒いボロボロのローブですっぽりと覆い、フードを被った顔にはピエロのお面をつけている。

 体格的には信乃達よりも年下に見える。全身のほとんどを覆い隠しているその少女は、フードから零れる長い金髪と甲高い声が無ければ、性別すら分からなかっただろう。


「お、お前は……!?」


 信乃は、その人物を覚えている。

 召喚された日に、王都でぶつかっていた少女だ。


 あの時と違うのは、ローブからはみ出ている緑と黒の縞模様の長手袋で覆われたその手に、大きな銀色の槍を握っていたことだった。


「キャハ! 久しぶりだね信乃クン! そして仲間の諸君は初めまして! ボクの名前は『ヴィーザル』! 今日はとてもいい天気、絶好の道楽日和だよネ? そんな辛気臭い特訓じゃなくてサ、ボクと遊ばなイ?」

「……まさかそれ、ロストエッダ前の武器型魔器? 今時、そんなものを持っているなんて……あなた、何者? ここに何の用?」

「アハハ、やーだなぁ。こんな物騒なものを持って現れる理由は一つしかないと思わナーイ?」


 ロアの問いに、その道化はあざ笑う。


「善良なアース帝国の尖兵として、勇者様、いただきに来ちゃいマシター!」


「『メガロ・バースト』!!」

「『メガロ・フレイムレーザー』!!」

「『メガロ・ボルトバースト』!!」


 問答無用、と言わんばかりにロア、カイン、キノの同時魔法が道化に炸裂し粉塵を上げる。防御魔法も唱えた気配はなく、直撃だ。魔人といえども無事では済まない攻撃だろう。

 しかし、奇襲に成功したにも関わらず、ロアは深刻な表情をしていた。


「……帝国にバレていた、信乃のことが。でもどうして、確かにあの魔人ケルベロスの口は封じたはずなのに」

「――もー、酷いことするね。こんなにか弱い女の子に問答無用で魔法ぶつけてくるだなんてサー。それと安心していいヨ、勇者のことを知っているのはまだボクだけだから」


 四人の顔が曇る。

 煙から落ちてきたその道化は、無傷だった。

 魔法の当たった部分の外壁が崩れ、彼女は軽やかに村の内側へ着地。そのまま何事もなかったかのように話を続ける。


「だから慌てないデ、そんなマジの怖い顔しないでボクの話を聞いてヨ。というわけでハイ、ルールの説明をするネ! なーに、とってもシンプルだヨ! ボクとキミ達が殺すか殺されるかだ! キミ達がボクを殺せれば勇者の情報は再び秘匿される。でもボクがキミ達を殺しつくしちゃったら勇者クンは帝国へ連行する。どォ? ボクとそんな世界の命運をかけた()()をしようヨ、キヒヒッ」

「……ッ。結局、あなたを殺せばいいんでしょうが……! 信乃、早く強化を!! あいつ、不気味過ぎる!! 速攻で片を付けるわ!!」

「あ、ああ! 神杖よ、勇者の名の元に神秘をここに具現し、かの者達に万夫不当の力を与えよ――『ユグノ・ブースト』!!」


 道化の言葉に顔を顰めたロアの鋭い声に応え、信乃は神杖を構えて強化魔法を唱える。

 三人が黄光に包まれるのを見て、道化は感嘆の声を漏らした。


「わーオ! 君達の色んな力が格段にあがっていくのを感じるヨ! これが神杖の勇者、信乃クンの力なんだね。スゴイスゴイー!!」

「そうやって余裕ぶっていられるのも、今のうちよ! この強化された最強魔法の一斉攻撃でぶっ飛びなさい! 続いてカイン、キノ……!! 『エクスプロージョン・バースト』!!」

「おうよ! 『ライジング・ボルトバースト』!!」

「いきます~! 『メテオ・フレイムレーザー』!!」


 信乃の強化を受けた三人は、それぞれ三属性の、先ほどよりも強い魔法――彼らの魔器が出せる最大威力魔法を放つ。


〝エクスプロージョン・バースト

 魔法攻撃力:154

 威力階級エクスプロージョン:×8

 無属性補正:×0.8

 二丁持ち補正:×1.2

 魔法威力:1182.7〟


〝ライジング・ボルトバースト

 魔法攻撃力:150

 威力階級エクスプロージョン:×8

 魔法威力:1200〟


〝メテオ・フレイムレーザー

 魔法攻撃力:150

 威力階級エクスプロージョン:×8

 魔法威力:1200〟


「ぐっ……!」


 後ろにいる信乃ですらその魔力の余波で顔をしかめる。一つ一つがすさまじい威力数値だ。しかもこれらが同時に当たれば、ほぼ足し算となる。その純粋な威力は3000オーバー。魔人一体など軽く消し飛ばすどころか、確実に後ろの外壁も粉々に破壊してしまうだろう。


 だが、それらの魔法を前にしても道化は悠然としていた。


「おおー。これは確かに人間達が出すにしてはいい火力ですネー。イイヨイイヨー、そう来なくっちゃ! くふふっ……じゃあ、いこうか――『ブリューナク』」

「……っ!?」


 信乃は神杖を持ち始めてから、どうにも魔力というものをより第六感的に感じられるようになってきた。

 だからこそ彼は、突如彼女より溢れ出したその莫大な魔力量に愕然とする。


 銀の槍を右手の片手持ちで横に構え――その詠唱を唱えて振るう。


「『ハイトルネード・ウインドスラッシュ』」


 風が、荒れた。


 周囲にあった空気が、気を抜けば一緒に吹き飛ばされてしまいそうなほどに激しく動いている。

 その発生源は、槍より突如あふれ出た小さな、莫大な魔力を孕んだ竜巻によるものである。


 そうして放たれた、暴風を纏う槍の一閃。


 その一撃だけで、三人の放った魔法が全部一瞬で消し飛んでいた。


〝ハイトルネード・ウインドスラッシュ

 魔法攻撃力:400

 威力階級ハイエクスプロージョン:16

 魔法威力:6400〟

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