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十四話:虎穴のヴァーナ

 ガルドル大陸の国配置をざっくり言うと、真ん中に巨大なアース帝国があり、その周りをぐるりと別の国々が囲っている。何とも、帝国の侵略には都合がいい。

 今回もまた、帝国の外側を囲うように赤いバツが――魔人の目撃地点を示す印がびっしりと並んでいる。


「分布としては、前とあまり変わらないようです。スヴァルト王国、ムスペル共和国、ニブル王国。帝国とのどの国境沿いでも魔人の目撃情報が多く寄せられています。本当に、帝国の魔の手はどこにでも伸びていますね。アルヴ王国なんて、帝国領となったミズル王国との国境もあるからもっと魔人が増えてしまいましたし。これでまた全国ツアーですよアルマ様。馬車、手配しておきますね」

「まあ結局赴くのは国境だから、その国の観光もしていないし、実際それぞれがどんな国なのかってのもまだ全然把握出来てはいないんだがな」


 そんな会話をしながら地図を見ていると、信乃はふとあることに気が付いた。


「……ん? この国だけ、また魔人目撃情報が少ないな。たまたまだと思っていたが、そう言えば今までもここではあまり魔人討伐しなかったような。……『ヴァーナ連邦』?」


 地図に書かれた、ガルドル大陸の最西端にある帝国の次に大きい国の名前を読み上げ、首を傾げる。するとリナが説明してくれた。


「ああ。亜人さん達が作った統一国家ですね。エルフ、ドワーフ、獣人、鬼人、色んな方がここにはいますよ。……あ、そうか。シラ様はヘル公国の竜人だから、亜人と言ってもこことは関係ありませんよね」

「……あ、ああ(そう言えばそんな設定だったな)、その通りだ。俺もよく知らない。それで、なぜこの国には魔人の目撃情報が少ないと思う?」

「うーん、長い間ミズル王国やアルヴ王国等の人の国との関わりを絶って来たし、私達にもどんな所かよく分からないんですよね。ここのギルド協会支部もそれほど活気はないから、あんまり私達にも情報が流れて来ないですし。……ただ、ロストエッダ直後を知る私達より上の世代の人達の中で時折、こんな話が囁かれるんです」

「……何と?」


 やけに勿体ぶった言い方をするリナに怪訝な顔で聞き返してやると、彼女は真顔を近づけてこう言った。


「『虎穴のヴァーナ連邦』。そこは、アース帝国ですら手を焼く超軍事国家。帝国が魔人なんていう驚異的な兵士を抱えているにも関わらず、未だ本格的な大陸の侵略を行わないのは、常に彼らを見張っているヴァーナ連邦という唯一にして最大の脅威を抱えている為。……なのだそうですよ」

「……ッ!?」


 流石に、信乃は驚く。ずっとこの大陸では帝国の一強だと思っていた認識が、覆されそうになっているからだ。

 帝国の侵略が緩やかだったのは何か考えがあったのではなく、単純に抑止力があったからなのだと――


「まあ、近年は連邦にも全然動きがないし、確たる事実を掴めている訳では無いので、あくまでジジババが言っている噂です。……ただ、その噂によりますと……」


 そして、彼女はこう続けた。


 ロストエッダ直後、魔人達を率いた帝国の進行は、今よりも活発なものだったらしい。それこそ軍隊を率い、本気で国の領土を取りに来ていたようだ。

 そしてそれは約十三年前。各々の国が必死に防衛する中、その魔の手は例外なくヴァーナ連邦にも及んだ。

 帝国軍六万。聞いているだけでも卒倒しそうな数の魔人達がここに攻め込んだものの――


「……全滅、だったそうですよ――帝国軍が。しかもその直後に連邦軍は帝国へ報復。帝国の一部の領土を、ほぼ全壊にまで追いやったそうです」

「……馬鹿げている。撤退ではなく? あの怪物共が、全滅だと? しかも、そのまま反撃まで……?」


 思わず食い気味に信乃は聞き返したが、リナ自信も信じられないのかただ首を振るばかりだ。


「私も当時まだ幼い子供だったのでよく分かりませんでしたし、所詮は噂で聞いているだけでしかありません。言った通り、ヴァーナ連邦の亜人さん達は人との交流を絶っていて事実を聞けません。……でも、丁度その頃からだそうです。帝国が、今のような少数魔人達による密かな侵略に切り替えた時期が。それはまるで、何かに警戒して帝国の守りだけは磐石にするかのように」

「……」


 再び、地図に目を落とす。

 噂に惑わされるというのも馬鹿な話だ。

 だが事実として、付けられているヴァーナ連邦での魔人目撃情報が、帝国からの侵略がここだけ少ない。

 これが意味するものとは。

 もしも本当に彼女の話が事実だとするのなら――


(……じゃあ、なんで)


 信乃は地図上のその国を睨みつけながら、拳を握り、歯を食い縛っていた。

 今の話を聞き、真っ先に出てきた感情は希望でも羨望でもなく、怒りだった。


(本当にそれだけの力が有るのなら、あの侵略すらも止められる可能性があったのなら。なんであの時、お前達は来なかった? それだけじゃない、これまでの侵略があった中、何をお前達は呑気に国に引き篭って……!)


 八つ当たりに近かったが、信乃のこの国への印象は最悪だった。

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