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ランチはミックスフライ定食

 

 せっかく人間界へ来たのだから、ランチを宮殿近くのお店で食べた。

 入り口の食券販売機で券を買うシステムや氷水が入ったピッチャーに驚かされる。世界観が脅かされる。

 八六〇円のミックスフライ定食で、ご飯とお味噌汁のお代り自由。さらには明太子と生卵が食べ放題とは……街が潤っている証拠だ。魔王様がミックスフライ定食一つだけ御注文され、それをおすそ分けしてもらった。

 店員に見つからないよう、ソーサラモナーと私もたらふく食べた――。これは「一杯のかけそば」と同じだ。冷や汗が出る……古過ぎて。


「少し気になる事がある。宮殿へ行き聖王と話をするぞよ」

「ええ、私も来た時から気になっておりました」

「……?」

 魔王様とソーサラモナーが急にシリアスな顔でそう言うと……なんか悔しい。私には魔力がないので魔法に関して鈍感なのだ。

 ――霊感スポットで一人だけ何も感じず鼻歌混じりで歩ける鈍感なタイプなのだ。

「フッ、私などは……ここに来る前から嫌な予感がしておりました」

 これはリアルだ。

「……それとこれとは話が別だぞよ」

 怒られてしまうとは……。


 村人が去り一人もいなくなった宮殿内では、イケメン聖王が一人せっせとモップ掛けをして掃除をしていた。真面目か――。イケメンが真面目に働き出したら、読者の好感度が上がってしまうではないか。冷や汗が出る。

「感心感心。そうやってせっせと仕事を続けていれば、いずれは宮殿内にも人が集まって来るぞよ」

「――貴様、魔王! と首無しのデュラハン!」

「――首無しと言うな! せめて『顔無し』と呼べ!」

 首無しではどう突っ込んでいいか分からないから――。「首無し」って有名なキャラいないから~!

 ……ソーサラモナーは覚えてくれていなかったようだ。前に来た時は女子高生のコスプレをしていたから……プププ。思わず思い出し笑いをしてしまうぞ。

「思い出し笑いはスケベの証拠だぞ」

「お前に言われたくはない」

 ソーサラモナーのせいだ。


「いったい何の用だ。もうここには食料も金銀財宝も……無料(フリー)Wi-Fiもないのだぞ」

 手を止めずにモップ掛けを続ける聖王。着ている服も作業着だ。……ネイビーグリーンの作業着だ。恐らくW〇RKMANで買った作業着だ。上下揃いでイケメンが着ると格好いい。

「冗談はさて置き、宮殿の地下にいったい何を隠しておるのだ」

「古の装置よりもっと危険な気配を感じる」

「……さて、なんのことだか我にはぜんぜん」

「――とぼけるな。正直に言った方が身のためだぞ」

 私もなんのことだかせんぜん分からないのだが、剣に手を掛けて本気なのをアピールする。モップを持った聖王相手に、白金の剣を抜けるはずがないのだが。

「待てデュラハンよ。トサカに血が上った鶏のように血走るな」

「御意」

 ニワトリって酷いぞ。トサカどころか頭も無いのに。

「知らないというのなら、宮殿の地下を勝手に調査させて貰うぞ」

「どうず」

 ……「どうぞ」と言えと突っ込みたいぞ。



 宮殿の地下へと続く階段を下りていくと広い洞窟へと続いており、さらに進むと巨大な扉の前に辿り着いた。


 扉というよりは……ダムのようにそびえ立つ壁だ。

 扉の前には木っ端微塵に壊されたWi-Fiのルーターが落ちている。前作でサッキュバスが壊したのだろうが、あまり見ないでおこう。LANケーブルとか光ケーブルの行先を辿っていくと、収拾がつかない恐れがあるから……。剣と魔法の世界は、情報と通信の世界ではないのだ。

「ブツブツうるさいのお」

「お恥ずかしい」

「……」


 封印された大きな扉には、「この扉、開けるべからず」と書かれており、誰かが何度も開けようとした引っかき傷が付けられている。サッキュバスもたぶん、一度や二度は開けようとしたのではないだろうか。財宝目当てで。……峰不〇子ちゃんか! と言いたくなる。冷や汗が出る。

「この奥から強大な力を感じるのだ」

「ええ、ぜったいこの中に何かいます」

「それは私も最初から気付いていました」

 魔王様がポンポンと肩を叩いてくれた。

「なんども言わなくてもよいぞよデュラハン。正直じゃなくても予は怒らぬ」

「……御意」

 魔王様は寛大でいらっしゃる……。鼻水が出そうになる。鼻が無いから出ないけど。


「封印を解くぞよ。開けゴマ!」

「――!」

 それで封印って解けるの――。

「言い換えれば、オープンセサミ!」

 セサミって……なんで胡麻なの――! 冷や汗が出る。古過ぎて。


 ゴゴゴゴと響く重低音に思わずウーハーとなる。いや、ならない。


「誰だ、我が眠りを妨げるものは――!」

 ――!

「うお! いきなり険悪モード!」

 両目がカッと赤く光るが……暗くて見えないぞ。負けじと私もカッと目を光らせる――!

「顔ないやん」

「……そうでした」

「いや、余裕をぶっこいている場合じゃありません魔王様! こ、こ、こいつは……」


 ――ドラゴンです――特大の――!


読んでいただきありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 聖王様への好感度…… あがりましたとも! 真面目に働くイケメン良き…… しかし、何かくしもってたんですかぁっ!? ……あ、別に隠してるわけではないんですかね? これは次回が待ち遠しいで…
[良い点] ミックスフライ定食からの大ピンチじゃないですかっ( ゜Д゜;)!?
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