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69話~はぁぁぁぁぁぁっっ!?!?!?~

「あ、また空が映りました!」


「今度は……パワー系の人だ。でも奇襲をするようだね。慎重だ……」



 その後は綾辻さんの虐殺(殺してない)を除き、特に大きな動きは起きていない。しかしその言葉を聞き、私は再び意識を画面に向ける。



「空ってこんな風に闘うんですね……」



 C級にも引けを取らず戦う篠崎さんを見て、翔馬君が口からそんな言葉を漏らす。戦い方が上手いな。伸びた強さも際立つが、技術も半端ない。とても今年から探索者を始めた技量とは考えられないぞ……?



「うぉっ!? 綾辻が2人の方向に向かってるぞ! こりゃ面白い展開になりそうだ!」



 大地さんの言葉の通り、猛スピードで篠崎さんと……名前は最上と言うのか。最上さんが戦う場所へと向かっていく。



「……大本さん、これって……」


「えぇ、確実に手を組みましたね。先程まで倒し合いをしていたとは考えられない」



 綾辻さんの登場で、篠崎さんと最上さんが共闘して綾辻さんへと襲いかかる。篠崎さんは出鼻を挫かれるも、なんとか立ち直る。


 そして魔法系である綾辻さんの近距離まで近づく。だが、今度は綾辻さんの対応に驚くことになる。



「魔法系が、剣だと!?」


「……しかも、本職の篠崎さんを圧倒している……!」



 私は大地さんとそんな事を言いながら、その戦闘を見ていた。身体能力に差があるとは言え、あの動きは即席のものではない。


 篠崎さん同様に、長い年月が染み付いている。もし彼らの身体能力が同じなら、きちんと決着が付くのかすら想像もできないほどに、彼らの技術は拮抗していた。



「うわ、この女の人2人相手に互角以上ですね! ……空、勝てますかね?」



 翔馬君も綾辻さんの強さを見て、篠崎さんの心配をし始めた。



「いえ、確実に負けますね」

「いや、確実に負けるね」



 私と大地さんの言葉が重なる。だが、その言葉は事実だろう。相性としては良かったが、綾辻さんがあそこまで近接戦ができるとは思いもしなかった。


 それさえなければ1割程度は勝つ確率もあっただろうが、あれではまともな勝負にもならないだろう。だが、これ以上今回の試験で激しい戦いは起こらないだろう。


 この戦いが事実上の最終決戦と呼んでも過言ではない。そう、この時の私はそれを信じて疑わなかった。この後にそれと同等の戦いが起こるとは、思いもしなかった……。



「……はぁ。空、結局負けちゃいましたね」



 翔馬君が残念そうにため息をつきそう言う。結果として、綾辻さんが等級の差を見せ、2人のC級探索者(相当)に勝った。


 だが、それは当たり前だと言わざるをえない。それよりもすごいのは、ここまで粘った篠崎さんたちだ。



「はぁ、我と契約しておいて情けないの〜、主人は。じゃが、いずれは超えるじゃろう。それまでの辛抱じゃな!」



 この子、めちゃくちゃ篠崎さんに辛辣だな。お菓子幼女はまたもそれだけを言い、お菓子を食べに戻って行った。



「大本さん、俺は全員を取りますよ」


「……篠崎さんについては等級審査をしてからですがね」


「分かってますよ〜」



 大地さんが子供みたいに嬉しそうに宣言をする。こちらとしては別にそれについては問題はない。こちらとしても、S級迷宮から取れた魔道具などでは無かったと分かって一安心だ。



「綾辻さんって人、今度は初芝さん……空の仲間たちの方に向かいました」


「彼を倒した以上、残りは簡単に片付くだろうからね〜。それにもう、彼女とまともに戦える相手すらいなさそうだし、これは消化試合みたいなものだよ。あとは彼女相手にどれだけ粘れる人がいるかの観察と言っても良い……」



 翔馬君の言葉に大地さんがたまらなそうに呟く。しかしそれは事実だ。



「あ、初芝さんですね」



 綾辻さんに付いていたドローンに映る初芝さんを見て、翔馬君が呟く。見たところ、北垣さんと2人で綾辻さんのメンバーを倒したようだ。



「うわっ、D級を一撃……。規格外だな」



 北垣さんが一瞬で綾辻さんによって凍らされ、せめてもの思いで剣を初芝さんに渡してリタイアした。その光景に、規格外の人物がそんな言葉を漏らす。



「初芝さんは回復系。勝ち目は0でしょう」



 私がそう呟いた直後、初芝さんが剣を振りかぶり綾辻さんへと近づく。その速度は篠崎さんと同等……いや、それ以上だった。



「「はぁぁぁぁぁぁっっ!?!?!?」」



 私と大地さんの叫び声が響き渡る。その間に綾辻さんも驚いたのか距離を詰められていたが、なんとか初芝さんの足を止めることに成功する。


 だが、そこで私たちは信じられない光景を目にする。初芝さんは凍らされた足に剣を向け……自分の足を斬り裂いた。



「「「っ…………!?」」」



 その光景に翔馬君も加わり絶句する。綾辻さんも同様だ。初芝さんは痛みと叫び声を堪え、その間に瞬時に足を治し、再び近づく。


 なんて胆力だ! 信じられない。自分で自分を傷つけるなんて真似をするなんて……!? しかも治りの速度が異常すぎる。あれはD級レベルじゃない!


 おそらく……いや、確実にA級レベルだっ!!! 結局、綾辻さんが本気を出して初芝さんを倒すことには成功したが、彼女の疲弊は凄まじかった。


 目の前であれだけの惨劇を見せられたんだ。肉体的にはともかく、精神が参ってしまう。それでも、彼女はA級としての力を見せつけ、試験を一位で勝ち抜けた。


 だが私たちはそんな些細な、当たり前のことに気を取られることはなく、篠崎さんの再発現(可能性あり)が霞むほどの衝撃を、初芝さんは残して試験は終了を迎えた。

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