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61話~VS弓使い~

 試験開始の合図とともに、山の中へと駆け出す。開始場所によっては急な坂の場所からスタートの組もあるかもな。


 幸い、俺たちは山の下あたりからスタートだった。これで中腹での挟み撃ちといった展開は無さそうだ。



「山って聞いてましたけど……あんまり急斜面はありませんね」


「その通りだね」



 2人の会話からわかるように、少し移動してみて分かった。これ山ってより(おか)の方が例えが合ってるな。ハイキングとかで使えそうなレベルだ。



「あ、2人とも! ドローンです!」



 琴香さんが少しだけ高めの声を出しながら空に指を刺す。その先には飛行する小型ドローンがあった。



「篠崎君、私ももう三十代だが、あれには正直心が揺れるよ」


「全くもって同感ですね! 自分でも操縦してみたいです! あれぞ男のロマン!」



 北垣さんとテンションを上げて会話していると、琴香さんがこちらを冷めた目で見ていた。別に良いじゃないか……。



「……止まってください!」



 俺の言葉で2人が足を止める。次の瞬間、足元に矢が3本突き刺さった。あのまま動いていれば確実に当たっていた。


 なるほど、弓使いか。おそらくはスピード系。放たれた位置はそれほど遠くない。他系統の探索者もいることから大規模の移動は無理。追いつける。


 いや、もしかしたら残りの2人とは別れて先行していた奴かもしれない。だが3人しかいない中、リスクは高い。なら、おそらくチーム全員ともいる。

 


「あのあたりに敵です。2人ともいきましょう。俺が先行します」


「分かった!」

「分かりました!」



 2人に告げて俺は矢が放たれた方向へと走る。放たれたのは右手に見える、木々が生い茂っている箇所だ。短剣を鞘から抜いて加速する。


 生い茂る木々に近づいた所で、もう1発矢が飛んでくる。急ブレーキをかけ、体を一回転させて避ける。



「嘘だろっ!?」



 そんな声が聞こえた。近いな。直後、タンク系の人が木々の隙間から姿を現す。タンク系はスピード系の天敵だ。


 特に同等級の場合、意識していれば肉体に直接攻撃をしてもダメージを与えることすらできないほど。そしてタンク系の人は弓使いを逃すための囮だろう。



「ここから先には行かせん」



 と言いつつ、タンク系の人の注意は後ろではなく右側にある。おっけー、右にいるのか。



「北垣さん、俺は右に行きます!」


「了解だ!」



 そう告げるや否や、俺は逃げた弓使いを追いかけるために走った。



「ま、待て!」



 タンク系の言葉が聞こえる。やはりこちらだったか。タンク系の速さでは追いつかない。彼も早々に気づき、琴香さんと北垣さんの足止めに専念するようだ。


 その事を横目で確認しながら少し走っていると、2人の人影を確認する。弓使いと……もう1人はサポーターだな。



「お、追いつかれたぞ!? 早く早く!」



 と弓使いがいい焦りながら指示を出していた。しかし早くと言いながらも逃げる素振りはない。つまり反撃をしてくるってことだ。


 ならあのサポーターは強化系で間違いないだろう。案の定、強化系探索者が弓使いを強化する。即座に矢を放ってくる。



「ふっ!」



 凄まじい速度で飛んでくる矢に短剣をぶつける。バキッと音を立て矢は真っ二つになった。だが、向こうも先程の攻防からこれで倒せるとは思ってなかっただろう。一瞬の間が空き、矢が再び飛んでくる。


 先ほど防いだ一撃のせいで俺の足は止まっていたが、その間を使って少しずつ歩みを進めていた。その分、矢の到達速度も速くなったがこうしておいて良かった。


 俺はそう考えながら、2発目の矢を1発目同様に真っ二つにし、その影に隠れた不可視の3発目を叩き斬った。



「なんで見えてんだよ!?」



 1発目と2発目の間に詰めておいた距離のおかげではっちりと見えたぜ。2発目の後ろに隠して打っていた不可視の3発目の存在をな!


 向こうの計算では確実に仕留められる一撃だったはずだ。北垣さんならやられていただろう。だが、俺には通じない! 切り札を破られ動揺している目の前の2人との距離を詰める。



「ここ、これでも喰らえっ!」



 それは弓使いのやぶれかぶれの一撃だ。狙いもクソも合ったものではない。ただの至近距離からのヤケクソ射撃だった。


 だが、近くでは当たる確率も高い上に、弓使いが近距離射撃といった動揺も誘えるだろう。向こうはそんな気などさらさらなく、ただ焦っただけという事実を差し引いたとしても……。



「無駄っ!」



 でも、俺には通用しない。俺なら最後まで諦めない。だから俺も戦う時は絶対に油断しない!



 飛んでくる矢の矢尻部分に短剣をぶつける。キンッと軽い音を上げて、ヒュルヒュルと舞いながら矢は見当違いの方向の地面へと落ちた。



「終わりです」



 弓使いの喉に短剣を突きつけて、俺はそう宣言をする。向こうも『くそ、負けた』と言いそうな顔をしながら「俺とこいつの負けだよ」と降参した。



「強いな君、戦ってくれてありがとうな! 俺はC級でこっちはE級だったのに。中継見とくぜ!」


 弓使いは自分を指さしながらC級と名乗り、E級強化系の人は悔しげにしていた。


 弓使いは悔しさをあまり表に出さず、そう言いながら強化系探索者の人とともにリタイアしていった。あとは北垣さんに任せておいたタンク系の人だけだ。



 ちなみに、負けた彼らも別の場所でスクリーンに映し出されるドローンからの映像を見れるのだ。すごいな……。

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