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50話~強くなれ~

今日から二章開始。

 赤、紫色の禍々しい雰囲気を放つ空間に俺はいた。現実に存在していいのか? と疑問を浮かべるようなグチャグチャと音を立てる不思議な物質で世界は覆われている。


 スライム? 溶けたような肉塊? いやヘドロか? しっかりとした言葉は見つからないが、そんな感じだ。



「……どこだ、ここ」



 俺は確か、床で寝てたはず……。じゃあこれは夢か? いや、さすがにこんなリアルに覚えてる夢なんて生まれてこの方一度もない。


 逆にじゃあ現実か? と問われても肯定はできない。現代において、こんな空間が存在など……迷宮でしかしていない。


 ポチャンッと雫が落ちたような音が立つ。ピチャピチャと水溜りの上を歩くような足音が近づいてくる。

振り向こうにも、体が動かない……。


 後ろから現れた謎の人物……いや、人かどうかも怪しい存在は、俺の後ろで立ち止まり耳元に口を近づける。



『強く……なれ。そう、しなければ……世界は、終わる……。精霊……うまく、使え』



 は? 世界が……? どう言うことだ? てか精霊って、エフィーのことか?



『たしかに……伝えた。あとは、お前次第、だ……』



 合成音のような声を出してそれだけを言い残し、その存在は一瞬で消えてしまった。


 なっ、おい待てよ! そう考えるも声は出ない。そして、俺の意識は遠のいていった。



***



 チュンチュン、と鳥の鳴き声で目を覚まし、うっすらと目を開ける。窓からは日が差している。もう朝だ。


 ……それよりも、あの夢? ……は、一体何だったんだ? 精霊を使って強くなれ。そうしなければ世界は終わる……か。


 …………うん、分からん! 夢だ夢! 要するに強くなれってことだろ? そんなこと言われなくても分かってるんだよな!


 水葉を治すために、俺は探索者になったんだから。……そう言えば、さっきから体が重たいんだけど何がどうなって……。


 体を起こそうとしても何かが乗っかっていて動けない。その方向を見て、俺は思わず息を呑んだ。


 エフィーと琴香さんが俺の上に乗っかっていたのだ。いや、正確には俺が布団に入り込み、その上に二人がいたと言った方が正解か。


 あれ、琴香さんって意外とむ、胸がある……なるほど、エフィーが見た目に騙されるな的なことを言っていたのは、こう言うことか!


 ふむ、とりあえず脱出しよう。昨日あんだけ言っておいて変態扱いはごめんだからな……って抜け出せねぇじゃん!? どうしよう!?



「ん……ありぇ、空君……?」



 はい終わりましたぁぁぁぁぁ!!!!! 



「……はー、へー、ふ〜ん、空君もやっぱり男の子なんですね〜」



 琴香さんが口元に手を当てて俺を優しげな目で見てくる。違うと否定できないので若干心にくる。それよりもバレたならもう良いだろう。重たいので退いてください……はさすがに言っちゃいけない気がする。



「……朝ごはん作りたいのですが」


「あれぇ? ……あ、はい分かりました」



 琴香さんが俺の上から退く。どうやら期待した反応と違うようだ。なに? 俺に純情的な反応でも期待したのかな? いや、結構我慢したんだからな?



「さて、昨日の残りはこれぐらいか。じゃあ少しだけ追加で作ろうかな」



 冷蔵庫の残りの量を確認し、俺は食材を新たに出していく。するとピンポーン! とインターフォンが鳴る。



「あ、私が代わりに出ますね」



 いつの間にか着替えた琴香さんが扉を開けようとする。たしかに今の俺は料理から手が離せない。しかし、もし知り合いだったらどう言い訳をしようか?


 ……まぁ、俺のところに訪ねてくる友人と呼べる存在なんて一人しかいないけどな! 多分宅配便とかだろう!



「は〜い、今出ま〜す!」


「え? 今女の人の声がしたような……」



 琴香さんストップ! 多分今の声、俺が思ってた存在の一人だと思うから!


 ガチャリ、と無常にも扉は開けられた。



「あれ? 部屋間違えた? ここって空の家じゃ……」


「合ってますよ! 空君の友達ですか?」



 翔馬が戸惑って部屋の番号を確認しようとする前に琴香さんが肯定した。



「よ、よぉ翔馬〜」



 俺は急いで手を止めて引き攣った笑顔で挨拶をする。



「空、誰この女?」


「女っ!?」



 と、まるで恋人が浮気をした時に言うようなセリフを吐いた。琴香さんも驚きで声が漏れている。


 あっれぇぇぇぇぇ? なんか翔馬が眉間に皺を寄せて怒ってるんだけど、何故?


 なんかいきなり修羅場が始まった。

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