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4話~銀髪幼女~

本日4話目です。

「ーー! ーい! ……おい! 起きんか!」



 声が聞こえる。透き通るように綺麗で、でも無邪気でわんぱくそうな女の声だ。



「……うぇ?」



 意識が戻った僕がうっすらと目を開けると、そこには銀髪の幼女がいた。幼い……8歳ぐらいだろうか?



「やっと目覚めおったか」


「あ、えっと……君は、一体?」



 僕は幼女に尋ねた。ここは迷宮。それなのにこんな幼い幼女がいることなど普通はありえない。



「精霊王エフィタルシュタイン。知り合いは我の事をそう呼んでたぞ」


「精霊、王? ……君が?」



 幼女は厨二病設定を丸出しにして誇らしげに自己紹介をする。僕はそんな冗談など今は受け流すこともせず、真実を知りたいと思いさらに問いかけた。だって精霊にも王に見えないんだからしょうがないよ。



「なっ、我の発言を疑うとは失礼なやつじゃな! まぁ良い。痛みはないか?」



 腕を組んでプク〜っと頬を膨らませる。



「痛み……? そうだ、僕、怪我しーー……え?」



 幼女の発言に慌てて肩や足を確認すると、そこには何事もなかったのように肩は治り、足も復活していた。


 ゆっくりと動かしたり、触ったりしても見た。……本物だ。幻覚でも、取ってつけた人工物でもない。……ぬくもりも感じる。



「なんで? ……っ! 君、もしかして回復系の発現をした探索者なの?」



 僕は幼女に狼狽えながらも尋ねる。発現者は身体能力や魔法の異能を使うアタッカーと、回復や補助の異能を使うサポーターの2種類に大きく分けられている。


 だから僕は彼女のことをサポーターだと判断したのだ。しかしそうではないらしく、彼女は首を横に振った。



「我は精霊王じゃ!」



 だめだ、話が通じない……!



「えっと……君が僕の傷を治してくれたの?」



 質問の仕方を変えてみる。彼女の正体についてはひとまず後だ。まずは目の前の事実を確認しなければ……。



「あぁ、その通りじゃ! あの状態ではまともに話もできんからの」



 話は通じないけど、この子が僕を助けてくれたことが分かった。



「そっか、ありがとうね。えっと……エフィなんだっけ?」


「エフィタルシュタイン! 我の名前を覚えんとは何事じゃ!」



 エフィタルシュタインが口を大きく開けて怒る。しかしその見た目では微笑ましいとしか言いようがなかった。可愛い……。



「ご、ごめん。……長いからエフィーって呼んで良い?」



 見た目と性格的の印象的にもそっちの方が合ってる気がするしな!



「なっ!? ……まぁ良い、久しぶりの話し相手じゃからな。特別に許可しよう!」



 顔を赤くして驚くエフィタルシュタインだったが、コホンと咳払いをし、僕に向けてにこりと笑いながら許可を貰った。



「ところでエフィー、ここには僕以外に誰もいなかった?」


「ん? ここにはずっと我以外おらんかったぞ? お主がここに来るまではじゃがな!」



 僕は眠る前、最後に見たあの綺麗な女性について尋ねるが、エフィーは知らない様子だった。……ん、待て待て今なんて言った?



「エフィー、今ここにはずっと、って言った?」



 ずっとここにいた……? こんな所に? いやそれよりも、僕が見た女性を見ていないだと……? 腕は違ったが、あの女性は幻覚だったのか? そう思い、僕はエフィーに尋ねた。



「そうじゃぞ? 我はここに……おそらく何百年も封印されていたのじゃ!」



 エフィーは僕の質問に肯定しつつ、さらに衝撃の事実を口にする。何百年……ってことは、エフィーは僕よりも年上……?



「封印って、もしかして瓶に?」



 僕は眠る前の記憶を呼び起こし、一番可能性の高いものを上げて確認を取る。



「あぁ、ぬしが助けてくれなければ、我は一生閉じ込められておった」



 その通りだそうだ。つまり、彼女こそ僕が最後に見た女性……? いや、どう考えても見た目の年齢的におかしい。白銀の髪色は同じだが、体の凹凸が違いすぎる!


 でも、それならエフィーが嘘をついていることになる。だがそんなことは無いだろう。なら考えられる答えを一つずつ尋ねよう……。



「もしかして、君って姿を変えたり……見た目の身長や体重を変えることが出来たりするの?」


「できるぞ」



 僕が恐る恐る尋ねると、エフィーは頷きながら短く答え、直後に体が光に包まれる。光はエフィーの幼く小さな体を今より大きな、僕が眠る前の最後に見た女性の輪郭へと変貌し、発光が解けると共に女性になった。



「どうじゃ?」



 フフンとドヤ顔で僕の方を見るエフィーだったが、そんな質問は耳に入らなかった。ただ、その神々しい姿に目を奪われていたから。



「……君、本当に精霊王なんだね」


「信じておらんかったのか!?」



 僕が信じられないと言った顔で小さく呟くと、エフィーは目から涙が出そうなくらい驚きと落ち込みを見せながら食い気味にツッコんでくる。


 その反応から僕は改めて、エフィーが精霊王……かは分からないが、少なくとも普通の人間ではないと感じ取ることになった。


 エフィーはもしかしたら発現者の可能性もあるだろう。僕みたいな底辺が知らないだけで、姿を変える異能もあるのかもしれない。でも、僕はエフィーの言うことを信じてみたい。


 彼女が嘘をついてるようには見えないし、なによりも怪我を治してくれた。……悪い子はそんなことしない……!



「まぁ、正確には元、精霊王じゃがな」


「元?」



 エフィーが忘れていた事を思い出したかのように、しんみりとした雰囲気を放ちながら僕に報告をしてくる。僕はそれに対して、気になった事をすぐに質問する子供のように尋ねた。後で気づいたが反省だ。



「うむ、ちょっとヘマをしてな。ここに封印されてあったのじゃ。今頃はおそらく新しい精霊王がいるじゃろう」


「へぇ」



 エフィーは恥ずかしそうに、しかし悔しそうに呟くが、あまり僕には関係無い。僕の命を救ってくれたのは、間違いなく目の前にいるエフィーその人物なのだから。……人かどうかは曖昧だけどねっ。



「ま、まぁ良い。それよりもお主……我と契約をせんか?」



 突如、真剣な顔をしてこちらを見てくるエフィーが、手を伸ばしてそんな提案をしてきた。……契約って何?

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