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45話~友達以上恋人未満~

 俺が初芝……じゃなくて琴香さんに率直に告げると、彼女は口から漏れ出た戸惑いの言葉以降、一言も発しなくなってしまった。


 ……表情筋が固まってる。目線も一切動いていない。まるで気を失っているようだ。さすがにいきなり過ぎたな。



「あの、琴香さん? お〜い?」


「…………」



 だめだ。手を前で振ってもなんの反応もない。どうすれば良いんだ。



***

 


 …………え? あれ、告白は? お付き合いは? 婚約は? 結婚は? ……初夜は?


 私は今、人生最大の謎に立ち会っていた。私は空君に告白した。そしてその夜、家に誘われた。つまりはそういう事ではないのだろうか?


 しかし実際家に行って大事な話があると言われ、心の準備をしていたらいきなり、私が死んで精霊? として生き返ったのだと告げられる。


 いったいどういう事でしょうか? 言い間違い、聞き間違いとか、そういうレベルのものではありませんでしたし……。


 それよりも……私はフラれたのでしょうか? でしたら、私は……! 確かめなければ。私のことをどう思っているのかを……。



「空君……私のことをどう思ってるんですか?」



*** 



「琴香さ〜ん? 琴香さん、エッチなイタズラしますよ〜?」



 やばい、変なこと言っても全然反応がない! マジでどうしよう? ……ちゃんと心臓動いてるよな? よし、腕から脈を取ってみよう。失礼しまーす。



「(ピクッ)」


「うわぁっ!?」



 びっくりした〜! いきなり意識が戻るんだもん。でも、これでやっと話が進む。



「琴香さーー」


「空君……私のことをどう思ってるんですか?」



 ま、また話を遮られた。それはまぁ良いか。それよりも……どういう意味だ?


 精霊についてとかは詳しく説明していないが、「先ほどの言葉はどういう事ですか?」みたいな質問じゃないところを見ると……琴香さんは理解したと見て良さそうだ。


 つまりこの質問は、「私は精霊になってしまいました。あなたはどう思いますか?」という意味だな。



「俺は……どんな形であれ良いと思います。だって種族が変わろうとも、初芝……琴香さんは琴香さんですから!」



***



 ……はい? お、おかしいです。なんか噛み合ってない気がします。種族? ……一体なんの話を……?



「空君……一体なんの話をしてるんです?」


「え?」



 ……これは、確実に噛み合ってません!? お互いの主張をきちんと整理しなければ……!



「空君!」


「な、なんですか!」



 私はバンと立ち上がり空君の名前を呼ぶ。空君は私のいきなりの行動を驚いていますが、この押せ押せ態度の方が彼はいうことを聞いてくれるんです! それは牙狼が出たE級迷宮での出来事で知っていますから!



「はっきりと言います! 迷宮でも言いましたが、私は空君が好きです! あれは死に際の気の迷いでもなんでもありません! ……空君は、私のことをどう思ってるんですか……?」



***



「……」



 急に告白された。いや、正確には迷宮でされていたが……。そうだった。琴香さんにはこ、告白されたんだ。


 琴香さんが亡くなったこと。人を殺したこと。琴香さんが生き返ったこと。精霊になったこと。色々あり過ぎて、正直言って頭の中から抜け落ちていた。


 でも、そうだよな。俺は……生まれて初めて告白されたんだ。なら、きちんと返すのが筋ってもんだ。彼女がそれを気にしている以上、精霊とかは後回しで良い!


 て言うかデートの時みたいにエフィーがいて欲しいな。心強いし……いや、大事なことは極力頼らない方が良いし、やっぱり良いや。



「琴香さん……正直俺は、恋愛に興味はありません」


「っ!」



 琴香さんの眉が僅かに動き、瞳が輝く。



「琴香さんには言いましたね。俺は妹の治療費を稼ぐために探索者になりました。それ以外にも勉強とか……色々頑張りました。だから恋愛に当てる時間が無くて……恋については、よく分からないんです……」



 ……改めて、いやあらためなくてもこれ恥ずかしいな。つまり自分の恋愛観を全て曝け出したようなもんじゃん。



「……空君、いくつか質問をします。まず、私のことは嫌いですか?」


「そんな訳ないです。むしろ好きです。でも、これが恋愛感情としてなのか、単なる友達としてなのか、自分では判断できません」



 琴香さんと一緒にいる時間は楽しい。それは事実だ。……でもそれならエフィーも、翔馬も、北垣さんも当てはまる。恋愛って、なんなんだ……?



「……ふぅ、ではひとまず。空君、私と友達以上恋人未満の関係はどうですか?」


「え?」


「どうですか?」



 圧がすごいんだけど!? でもまぁ、悪い気はしないかな……?



「では……それで」


「はい!」



 なんか勢いに負けたけど……良いか。あ、話を最初の本筋に戻そう。



「琴香さん、では次に俺の話ですね」


「あ、すみません。自分の都合ばかり押しつけて」


「いえいえ」



 琴香さんが僕との関係が進展したことが嬉しいのか、謝りつつも口元がニマニマしていた。なんだろう、頭とか撫でたい気分……。



「今から起こることは、他の人には黙っててくださいね? 俺以外だと琴香さんが初めてです」


「は、ハジメテ……〜っ!」



 違う、そうじゃないと言いたい気分……。



「エフィー、出てきて」


「ふっ、主人の命令とあらば仕方がないのう」


「っ!?」



 そう言いながら俺の胸ポケットからエフィーが出てくる。琴香さんは目が点になってる。



「我の名前はエフィタルシュタイン! 元精霊王じゃ!」



 自分の絶壁を誇らしげに張りながら、エフィーは自己紹介をすませた。

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