35話~藤森との出会い~
藤森と向かい合いながら、僕は彼と初めて出会った時のことを思い出していた。
***
「はい、これで探索者として登録されました。それではまたのご利用をお待ちしております」
探索者組合の受付の人にそう言われ、晴れて僕は探索者となった。と言っても、最底辺のF級探索者なんだけどね……。
はぁ、ずっと憧れてはいたんだけど、やっぱりF級と書かれた探索者証を見ると憂鬱になるなぁ。ちなみに探索者証は免許証みたいなものだ。
「そこの君」
「……なんですか?」
落ち込んでいると、僕に話しかけてくる人がいた。長い髪の男の人だ。サラリと髪を弄っている。
「その様子、見たところE、もしくはF級探索者だろう? 私はC級探索者の藤森。どうかな? 私たちとパーティを組まないかい?」
「あ、これはどうも篠崎です。それとパーティについてですが……本当によろしいんですか? 僕はF級探索者ですよ?」
何故僕なんかに? わざわざF級探索者を連れて行くメリットはなんだ?
「えぇ、ですから私は声をかけたんですよ。今私たちは雑用を探していましてね。平たく言えば君をそれとして雇いたい」
「僕を? ……あっちの席で詳しく話を聞かせて欲しいです」
僕はそう言って机と椅子が用意された場所を指さす。
「先程の荷物持ちについて、具体的な話を聞かせてもらいたいです」
この誘いが本当ならありがたい。元々僕は組合所属の探索者になろうとしていたからな。組合所属になれば、魔法石を収めることで最低限の給金は保証される。
その代わり半分強制的に仕事を振られることになるけど、願ったり叶ったりだ。
だけど、自分で組合を作ったり、数人でのパーティを作ると言った物もある。目の前の藤森さんは後者だ。
この場合、自分たちの資金を使ってゲートを獲得しなければならない。しかし取り分は山分けだ。つまり一攫千金を狙うなら藤森さんみたいになる人が多い。
それは強い探索者ほど傾向が強い。探索者組合に所属する人は大抵が低等級の人だ。まぁ、何が言いたいのかと言うと、僕を誘う理由が分からないと言うことだ。
「えぇ。私は今、パワー系のD級探索者と2人でやっていたのですが、最近荷物や解体などの工程が面倒くさくなってしまいまして……私たちがそれをしている間、モンスターを倒せる時間が減ってしまうのです。そこで、それを低等級の人に一任したいと思ったのです」
なるほど、僕なら安く雇えるな。それでも組合と同程度、もしくはそれ以上の金額を雇うつもりなのだろう。
「これは金額はもちろん、他にもメリットがあります。まず、僕たち先輩の戦い方を見れます。そこで色々な工程を学ぶこともできます。つまりはよりレベルの高い実地訓練です。どうでしょうか? 金額は探索者組合の基本給金の1.2倍出しましょう。ちなみに3ヶ月契約です」
……これは、良いのでは? 金額はもちろん、僕自身も全てを学べる。護衛となる等級の高い藤森もいる。
それに組合では全てを自分でやらなきゃいけないと言う。それを教えてもらえるのは良いだろう! むしろ乗らない方がおかしい!
「ぜひ、お願いします!」
「ありがとうございます! それではこちらのパーティ加入の紙にサインをしてください」
「はい!」
こうして僕は藤森の奴隷となった。
今年の更新は今回で最後です。次回更新は1月1日。展開的にも日付的にもちょうど良いので一挙6話更新です! それでは皆さん良いお年を。




