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33話~VS大刺毒蜘蛛~

「変わります!」


「お、おう! 任せた!」



 一番疲れているように見えたパワー系の人とスイッチし、僕が代わりに攻撃の役割を請け負う。


 軽く踏みしめただけで地面が抉れる力を持った脚が僕に向かってくる。それを反復横跳びのように最小限の動きで左右に避ける。


 それと同時に地面を蹴り、攻撃を避けられた脚に短剣での一撃を加える。それからさらに追加で二撃加えたところで脚が再び浮き上がる。


 これを繰り返し、脚を斬り裂き本数を減らすことで魔法系の藤森、スピード系の人が大刺毒蜘蛛(おおしどくぐも)に攻撃をしやすいようにするのが僕と他の人の役割だ。



「針が来ます!」



 藤森の声と同時に、大刺毒蜘蛛から何本もの鋭い針が発射された。速い!? 脚とは比べ物にならない速さだ。


 僕は素早く動き回って避け、短剣で何本か針を打ち落としもした。しかし腕に二本、足に一本の針が刺さってしまった。


 それを意識すると同時に毒の効果が効いてくる。ちなみに等級が高ければ毒などの状態異常にも耐性ができるらしい。


 毒の巡りを一刻も経つためには針を抜かなければいけないが、素手で触ってはいけない。毒を無効化できる装備は回復系の初芝さんが持っていた。



「すみません、一旦離脱……」



 僕は抜けようと考えたところで気づいた。僕以上にもう1人のタンク系の人が刺されまくっていることに。


 僕は彼に目線で離脱するように訴える。彼はそれを理解し、初芝さんの元へと駆けていった。



「……集中っ」



 再び飛んでくる針を弾き、ゆっくりとだが大刺毒蜘蛛に近づいていく。ふと見るとスピード系の人も疲れているようだった。


 当たれば終わりのスピード系。今のところ彼だけが大刺毒蜘蛛の体に近接攻撃できる。でも短剣ではあまり決定打になっていないな。


 やはり魔法系である藤森の力が必要だ。なのにあいつ全然魔法を使わないな。スピード系の人が速すぎて上手く放てないとか言いそうだ。


 それに初撃の魔法もそうだが、明らかに魔法の火力が弱い。今までに見た全力の《炎槍》とは一回りほど弱体化している。……何が狙いだ?



「ふっ……うぉっ!?」



 そんなことを考えていると、不意に視界がぐらつく感覚に襲われた。そこに脚での攻撃が飛んでくる。


 まずいまずい! 集中とか言っておいて戦闘中に別の考えごとするとか馬鹿か僕は!? ってそんな事より早く攻撃を防がないとっ!


 迫り来る脚。だが僕に攻撃は飛んでこなかった。復活した北垣さんが代わりに脚を受けてくれたからだ。



「篠崎君! ここは私に任せて行きたまえ!」


「はい! ありがとうございます!」



 ありがとう北垣さん! でも後半は死亡フラグっぽいので言わない方が良かったかと……。



「篠崎さん、針を抜くので我慢しててくださいね。3・2っ!」



 初芝さんがすぐに駆けつけてきて、程度の毒を無効化できる手袋の魔道具を使って抜く。



「ぐっ!?」



 痛っ!? ……てか1どこいった? そんなことを考えている間にも傷はすぐに癒えていく。回復系って相変わらずすげーな。


 

「はい、もう大丈夫です! 次行きますね」


「初芝さん、ありがとうございますっ!」


「……こちらこそ、どういたしましてですっ!」



 初芝さんと2、3言話してから僕は大刺毒蜘蛛に再び挑む。そこからは順調だ。脚の攻撃は動きの慣れもあるだろうが、確実に見切っていた。



 これは多分、エフィーの行っていた体の慣れも関係しているだろう。こうして強敵と戦い慣らすことで、契約の上書きで成長するための体作りが仕上がっていく。


 皆が皆、必死に頑張って交代を挟みながらも大刺毒蜘蛛を攻撃していく。そして……。



「はぁぁぁぁぁっっっ!」



 スピード系の人がこれで最後だと言わんばかりに叫びながら、大刺毒蜘蛛の体の上を凄まじい速度で斬り裂いていく。



「皆さん、魔法を撃ちます! 離れてください!」



 藤森の言葉と共に、僕も含めた大刺毒蜘蛛に攻撃をしていた人たちが離れその次の瞬間、《炎槍》が放たれた。


 見事に大刺毒蜘蛛に《炎槍》は直撃。そして……カサカサと僅かに動きを見せたものの、そのまま生き絶えたように動かなくなった。


 ……勝った。……勝ったんだ。僕を含めたこの10人でD級迷宮を攻略した。……なんだろう、この気持ちは。胸が苦しい。……でも、とっても嬉しい気分だ。

 


「主人! 後ろじゃ!」


「えっ?」



 次の瞬間、エフィーの叫び声を聞き反射的に振り向いた僕の目の前に、《火球》の魔法が迫っていた。



「ぐっ、あぁぁぁぁっ!」



 僕は避けることが出来ず、短剣で《火球》を受け止めることになんとか成功する。しかしズルズルと足が地面を削りながら、後ろへと後退する。



「なめ、るなぁ!」



 それでも、なんとか僕は数秒にも及ぶ激しい攻防の果てに《火球》を退けることに成功する。そしてすぐに《火球》を放った主に怒りと戸惑いの視線を向けて叫んだ。



「何するんですか、藤森さん!」

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