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5章SS

 密林の中、開けた場所に蜂の巣のような城が存在した。それが蟲王の拠点だった。



『殺された? 豚人族に潜ませていたアイツらが?』


『はい……』


『ちっ、使える奴らの死亡報告数が最近多い。5年前の侵攻も、3年前にも時期幹部候補だった奴も殺されたし、いずれ幹部に進めるはずだった奴も生まれた直後に殺された。今回の暗躍も失敗して……クソ! なんなんだ一体!』



 蟲王が悪態をつく。3年前と最近殺された幹部になるはずだった虫人族は共に元EX級第2席、日本の英雄である探索者組合本部長、平塚輝久(ひらづかてるひさ)によって殺されていた。


 そして獣人族同士で内戦を起こさせ、どさくさに紛れて領土などを奪う手筈だったがこれも空によって失敗している。蟲王の計画はことごとく潰されていた。



『龍王め! 何がそろそろ時が来た、だ! 俺達には戦力だけ出させてまともな報酬も出さなかったくせに、何が再びだよ! ムカつく! ムカつくムカつく!』


『王よ、落ち着いて下され。本命の計画は順調です』


『分かっておるわ! ……ちっ、他の王達にはバレておらんな?』


『えぇ、おそらくは』


『くく、龍王どもめ、我々を舐めてちゃんとした扱いを受けさせなかった罪は重いぞ。最初に行くぶんの利益程度、貰ってる事がバレようが文句は言われまい』



 蟲王はそう言ってニヒルな笑いを浮かべつつ、計画が大詰めに入っていることを喜んだ。



***



『龍王様、よろしいのですか?』


『……構わんよ。雑魚が実力を測る物差しになってくれるんだ、安いもんさ。後で奪えば良い』



 エルフの里からドラゴン達の巣、それらが集合した王都へと帰還した光輝龍レンドヴルムは、龍王に蟲王が計画していることを伝えた。


 しかし龍王は聞いての通り、まともに反応することなくむしろその事に産生の胃を示したのだ。レンドヴルムにとって龍王の判断をわざわざ疑う必要もなく話は終わった。



『そうです。1つ、お耳に挟みたいことが』



 レンドヴルムがエルフの里での出来事を軽く話す。と言っても異界の門を通り向こうの世界へと逃げ込んだことを伝えると龍王もすぐに興味を無くした様子を見せた。


 異世界人の強さもレンドヴルムの話を聞く限り、大した障害にもならないと判断したからだ。



『いかなる、処罰でも』


『いらん。それよりも……精霊王の封印が解き放たれたと言うのは本当か?』


『真偽は不明、ですが、王から下賜された封印の壺が、破壊されたと言う噂が、広まっております』


『はっ、精霊王か。史上最弱にして史上最悪の愚か者……馬鹿なことをしたものだな、と言いたいが……計画が500年余り遅れたことは事実だ』



 パキステラの森がパキステラ砂漠に変わったことなど、この星の資源が枯渇しかけたことは口に出さずとも理解していた。


 それらを立て直し、今度こそ邪魔が入っても確実に計画を遂行できるよう、着実な準備を持って5人それぞれの王達は動いている。


 ただしその後のことも考え、裏で暗躍をする王がいることもまた真実。彼らへの牽制もしつつ、気づけば500年余りの時が過ぎていたというわけだ。



『精霊は強力。そして何よりも、眷属と契約した際の強さは跳ね上がります故。ですが、生き残りもほんの僅か。契約する眷属の数も絶滅寸前……計画を邪魔する者は、居ないと言っても過言ではないでしょう』


『確かに……むしろ他の王達が邪魔だ。蟲王なんかは馬鹿みたいに動き回るから鬱陶しい』


『巨人王にも、何やら動きがあるようです』


『ギガンテスの奴がか? ……まぁ良い。早く計画を進めるとするか』



 龍王がついに、本腰を入れて計画の決行を考え始めた瞬間だった。



***



『ねぇ北垣』


『王よ。その名は人に化けた時の仮の名です』


『でも君たちはいつも使徒って呼ばせるじゃないか。なら名前でもあった方が良いよ』


『我々使徒に固有名詞は不要です。王よ、あなたは全ての王なのです。全ての生みの親……あなたの選択ひとつで全てが決まる。つまり私は今から正式名称北垣と名乗ります』


『素直にそう言いなよ全く』



 最近の王は楽しげに見える。理由は恐らく……。



「篠崎くんの存在だよね。あの人間のどこが良いのか全然分からないけど」



 それでも王が楽しいのなら、私はどうでも構わない。なんだろうと構わない。



『あ、えっ? そっち!? ……ふふ、やっぱり君は面白いね~』


『そうですね』



 篠崎空の様子を一瞬だけ確認した王が何やら予想外の反応を見せる。また自分の想定外の出来事があったようだ。……楽しいのだろうか? 楽しい……楽しいとは、何なのだろうか?


 私は王に創られ、王のために存在する眷属、使徒。 全ては王のために……そのために生きる存在。さぁ、王よ、次の命令を……。



***



 アメリカテキサス州郊外付近……。



『な、なんだありゃ……!』



 そこには世界で確認された中でも最大級のゲートが出現していた。



『む……強力な魔力。楽しめそうだ』



 それをホテルの窓から眺め見たマテオ・キングの言葉に周りの人々は気を抜き、同時に思うのだ。彼ならば何が起きても必ず解決してくれるからと。



***



 あれ、私は……ここは? 体が、動かない。一体なぜ? どうして……そうだ、確かS級迷宮に、空君と一緒に、そして、北垣さんが現れて、エフィーちゃんが……。



「さぁ起きて、琴香さん……しょうがないなぁもう、キスしないと起きないんだっけ?」



 ダメですまだ歯磨きとブレスケアとか色々準備があるのでちょっと待ってくださ──!



「っ……ここは? そうだ、空君っ!」



 初芝琴香が目覚めた。

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