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26話~D級迷宮~

 初芝さんからのお礼を受けてから3日が経った。その日、僕の元に組合から1通のメールが届く。



『篠崎様へ


 昨日未明、この近くにゲートが出現。計測の結果、D級迷宮と判断されました。明日のその攻略隊にあなたが推薦されました。受けてくださると助かります。


探索者組合近畿支部より』


「……え?」



 僕は自分風に噛み砕いたメールを何度も読み返しながら、そんな言葉を何回も漏らしていた。だってそうだろう、D級迷宮だよ? D級迷宮!?


 僕F級探索者。無理無理無理! 絶対に無理! 大本さんさすがにこれはやり過ぎでしょ!? 僕じゃなかったら死んじゃうよ!?


 でも、基本的に組合からの推薦は断れない。僕が受けたのは今回が初めてだけど、基本的に組合所属でD級以上の探索者は、基本的にリーダーとして一度はあるらしい。


 北垣さんも僕同様、パーティのリーダーには組合からの推薦だろう。初芝さんも実はあんな感じだけどある……かもしれないし、無いかもしれん。あったら事故起こしそうで怖いなぁ。



「受ける、よな……。受けなきゃだめだよな……」



 今のF級探索者なんて不安定な立場を支えてくれる組合を裏切るような真似はできない。過去一度だけ特に理由もなく断った人もいたらしいが、その人のその後は結構悲惨だったな。


 D級探索者だったその人は、断ったその日以降碌に依頼も回って来なくなり、組合に問い合わせるも『あなた以上に適任が居ますので』の一点張りだ。


 まぁ、所属して仕事を回してもらいながら、それを断るなんて失礼な真似をした方が悪いだろう。責任能力のない奴を使おうなんて考えないのが自然だ。


 以上のことから僕が受けるのは確定なんだけど……気は進まないなぁ。D級迷宮なんて一度しか行った事ないしなぁ。


 でも、エフィーと契約した今の僕がどこまで通用するのかは知りたい。牙狼はE級迷宮のE級モンスター。対して大牙狼はE級迷宮のD級モンスターの迷宮主。


 ……いけるだろうか? D級迷宮に、荷物持ちとしてではなく、戦力として、F級探索者の、この僕が……。


 ……はぁ、うだうだ考えてても仕方がない。行ける行けないの問題じゃないな。……行く。



「エフィー、ちょっと聞きたいんだけど……なに、これ?」



 僕がD級迷宮に行くことを決意し、エフィーに尋ねたいことがあったので彼女のいる部屋を開ける。


 そこに広がっていたのは、水浸しになった壁と床だった。そして壊れた蛇口と、オロオロと壊れた蛇口の回し口の方を持つエフィーの姿だった。



「あ、主人!? ち、違うのじゃ! 断じて我ではない! ……そう、大牙狼じゃ! 通りすがりの大牙狼がこの前やられた腹いせに現れて、蛇口を牙で破壊していったのじゃ! 決して、我がちょこ〜っと力を込めて回したらバキンと外れたわけでは無いぞ!」



 はい、無事に自供を確認しました。エフィー、お前の血は何色だ? ……本当に何色なんだ?


 とりあえず僕とエフィーは急いで布巾で床を掃除した。



「はぁ、なんで幼女の力加減で蛇口が壊れるのさ?」


「そ、それはじゃな〜……って、我ではなく初芝じゃ!」



 蛇口やった人変わってるけど!? どんだけ慌ててんだよ!?



「んで、続きは?」


「ひゃう……わ、我自身の力が戻ってきたようなのじゃ」


「……まじ?」


「まじなのじゃ……」



 エフィーの力が戻ってきてる?



「もしかして、僕が契約を維持するために渡していた魔法石のおかげ?」


「おそらくは。余剰な魔法石の摂取量が、そのまま我の力を解き放とうとしているのじゃろう。力加減を間違えたのは、その些細な変化によるものじゃ」



 ふむ、なるほど。蛇口が壊れた理由はわかった。でも……



「それって……良いことなのか?」


「うむ、メリットは多いぞ。主人との契約を強くするためには、主人自身もそうじゃが、我自身も強くならねばならぬ。今は我の方が格が上じゃから契約の更新は簡単に成功したが、いずれ主人が我に追いつく日もくるはずじゃ」



 へぇ、エフィーの力を2割3割とより多く借りようと思った場合、エフィー自身も強くならなきゃいけないと言うことか。



「……分かった。蛇口については不問にするよ。実際そんな理由じゃしょうがなかったしね」


「〜っ! 本当かのっ?」


「うん、でも嘘ついたから今日のデザート無しね」


「主人ぃ〜〜っ、許してたも〜〜っ!!!」



 エフィーの悲痛な叫び声が部屋を幾へにも反響して響いた。

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