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223話~そしてプロローグへ~

『む、ん? ……ソラ?』


「ハズク、起きたか」


『ここは……って臭いのっ!? 凄く臭いの! ソラお腹壊したの!? 消臭剤ぐらい使うの!』


「うう、うるせぇ! 開口1番原因を俺と決めつけんな! ちげぇよ!」


『でもソラ以外にこんな臭いする人いないの! いっつもいつも、産まれてから悪いこと全部にソラが関わってるの!』


「人間でこんな臭いさせてる奴いないわ!? てか俺だって好きで変な奴らと関わり持ってるわけじゃないし! あと起きるの遅いぞ!」


『む、むぅぅぅ! うるさいのぉ!』


「お主たち、いつの間にか仲良くなったのじゃ?」


「『よくない(の)!』」



 という訳で、オアシスに擬態したモンスターから逃げている最中に目覚めたハズクと軽い口論をしつつ俺たちは歩みを進めていた。何回も言うけど常人の何倍も進む速度は速いからな?


 最初は靴の中に砂が入る度に掻き出していたが、もう面倒くさいし慣れた。



「そうだ、確か日中じゃなく夜に移動するべきだって……」



 俺はなにかの本で見た知識を思い出し、丁度よくあった岩陰に腰を下ろして体力の消費を防ぐことにする。



『……つまりここが何処かも、どこに向かってるかも謎ってことなの……終わったの! 産まれて10日も経たずに人生終わったの! 人じゃないけど』


「うぉい! まだ終わらせるな! 夜にまた歩くと誰かに出会うかもしれないだろ!?」



 腰を下ろした俺は日が出てる間にハズクに状況を説明すると途端にグズりだす。気持ちは分かるが……俺だって泣きてぇよぉぉぉ!


 食料はともかく水は死活問題だ。オアシスを見つけた所で擬態モンスターの可能性が高いなんて酷すぎるよ。人も見かけないし……マジでヤバい。


 最悪の時は体力の消費を無視して全速力で走り抜けるつもりだが……まずは水場を手に入れないと。次に人だ。情報が何よりも欲しい。


 飲料水については今日開けた500mlペットボトルが半分と新品が1つだけ。新品は明日に残しておく。明後日以降は出会ったモンスターの血液でも(すす)るか? 食料も同じ時ぐらいに尽きるし。



「主ぃ、我はお腹が空いたのじゃ」


「え? ……あぁ、そうだったな」



 エフィーは精霊だ。食事は魔物から採れる魔法石。エルフの里ではともかく、戻ってきてからエフィーは魔石を食べていない。オアシス擬態モンスターのは回収してない。多分エフィーも遠慮しただろうし。


 魔法石は貯金のようにある時に食べさせていたが、そろそろお腹が空いてくる頃だったか。ハズクにはララノアちゃんがちょこっとあげてたらしいが……翔馬と一緒に居たらしいし、ララノアちゃんから貰うようなこともして無さそうだな。



『ハズクもお腹すいたの!』


「お前はちょっと前に食べてただろ~がっ!」


「我もお腹すいたのじゃ!」


「うるせぇぇぇ! 分かった、狩ってくるから待ってろ!」



 という訳でエフィーとハズクの全力索敵を使い、彷徨いていたバイソンのようなモンスターを狩りました。血を啜ってみると温くてあんまり美味しくなかったです。


 調理したら上手いかもしれないけど、やっぱり気分的になぁ。火は岩を削り出し牙狼月剣を使って興すことは出来るが、火種が無いな。と思ったがバイソンモンスターの皮が使えた。


 なので焼いて食べてみた。案外美味い! 火は通したし大丈夫だよな……血の方は飲み込まずに吐き出したから多分大丈夫。火も通してないから口を潤す? だけにしておいた。



「夜になったら移動する。各自、体力の消耗は避けてくれよ」


「無論なのじゃ」


『わかったの』



 玉の汗を拭いてしばらく待つと、日が沈み出す。日中は酷く暑かったのに、夜は体を冷やさないようにしないといけないのか。


 今は20度ぐらいか? 最高気温より30度近く下がりやがった。常人なら気温の変化だけで参ってしまいそうだ。まぁ日本でも歴代最高気温と最低気温を比べれば80度近い差はあるらしいけど。



「エフィー、ハズク。行こう」



 そして俺たちは再び動き出す。慣れた足取りで砂を踏み締めて足を進める。



「今のところ敵はおらんのじゃ」


「だな。でも警戒しつつ行こう」



 今はまだ夕陽が見え隠れしているので目が見えているが、完全な夜となればあたりは漆黒に包まれ何も見えないだろう。


 綺麗な星も既に見えているが……あれじゃあ明かりの代わりにはならないかな。とにかくモンスターの索敵は超重要事項だ。これは俺もだが、主にエフィーに任せている。



『全然暑くないの。最高なの』


「あぁ。働いてくれてサンキュー」



 ハズクは鞄のポケットでじっとしているが、コイツは日中の間に風を起こして砂を巻き上げずに俺たちを扇いでくれていた。あの暑さの中じゃ本当にありがたかった。まぁ、扇風機代わりみたいな──。



「痛ぁっ!?」


『なんか馬鹿にされた気がしたの!』


「してないよ! ……してないよ?」


『その反応は絶対にしたの!』



 ハズクに肩をつつかれて声を上げる。だがハズクの主張は正しいので否定できない。そうして主な活動時間を夜にして昼夜逆転生活を送ること3日が過ぎた。そして俺たちは……。



「右に見えますは~、砂漠でございまーす! 左に見えますは~、砂漠でございまーす! あははははは!」


「主が壊れたのじゃぁぁぁぁ!」


『もうダメなの。この3日間何も無かったの。もうすぐ夜も明けるの……お腹すいたの』


「おけまる水産! エフィー、一緒にひと狩り行きますわよ!」


「元に戻ってたもぉぉぉ!」


「うひゃひゃひゃひゃぁぁぁっ!!!」



 普通に壊れていた。別におかしいことは無い。ただ3日間も砂漠で遭難していればこうなるだろう。そして物語は、プロローグへと繋がる。

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