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180話~空VSアムラスVS琴香~

 急に迫ってきた最上のおっさんに氷花さんが驚いて思わず氷を放ってしまう。エルフの子供達はキャーキャー喜びの声を上げながら避難してた。


 しかし気力を失っていてモロに氷がぶつかり、そのまま互いに戦闘態勢に入った最上のおっさん達を放置して、俺たちは族長であるクルゴンさんの元へと向かう。



『皆、よくぞ儂の元へと帰ってきたの。……ヘレスも、一皮むけたようじゃな。以前とは眼も風格もまるで違っておるわい』


『ありがとうございます族長』



 クルゴンさんは俺たちを出迎えるとすぐに労いの言葉を述べ、自分の娘のヘレスを褒めたたえた。ヘレスは毅然きぜんとした態度で応じていたが、微かに耳が揺れているので喜んではいるのだろう。



『クルゴンよ。白霊草モーリュは精霊様……いや、コトカ様とソラが手に入れて下さった。むしろワシ達は足でまといじゃったぞい』


『族長、俺も同様の意見です。ララノアちゃんが治った暁には、何かしら褒美でも授与すべきかと』



 サリオンさんにアムラスも口を挟み、俺たちの功績について進言してくれる。



『ふむ……何かしらの褒美、か……』


『父上、ソラ達には申し訳ないですが、今はララノアに白霊草モーリュを服用させる方が先かと』



 クルゴンさんが2人の意見を聞いて考え込んでいると、ヘレスがララノアちゃんを先に治すべきだと告げた。


 その意見には俺も賛成だな。クルゴンさんはエルフ達の外聞を気にしているのだろうけど、ヘレスは早くララノアちゃんを治したいって気持ちがヒシヒシと伝わってくる。


 それはクルゴンさんの呼び方が『族長』ではなく『父上』となっている事からも、容易に想像がつく。



「クルゴンさん、俺からもお願いします」


「あ、私からもです! ヘレスちゃんのお願いですし、私もララノアちゃんには会ってみたいので!」



『ふむ。では精れ──コトカ様にサリオン、ヘレスの3人は即座に白霊草モーリュをララノアに。ソラ殿とアムラスはララノアの部屋周辺には近づかないように伝える役割を頼もう』



 ヘレスの意見に俺たち2人も賛成すると、クルゴンさんは一瞬思案した表情を浮かべ、その意見を採用した。


 思ったよりあっさりだな。琴香さんの言葉が響いたのだろうか? ……いや、違うな。クルゴンさんは族長故にララノアちゃんの対応を厳格にしただけだ。


 本音ではララノアちゃんを治したかっただろうに……。だから、恩人である俺達側から提案して欲しかったのだろう。


 そうすれば大義名分が出来て、堂々とララノアちゃんを助けることが出来るからな。そうせざるを得ない立場なのだ……。


 そうして俺とアムラスで話を伝えるために外に出たのだが、当然だったけどララノアちゃんの近くには誰も近づこうとしないのでほぼ意味は無かった。



「もうララノアちゃんの所に行こうぜ」


『そうだな』



 そう言って2人もララノアちゃんの元に向かうことにした。ちなみに先程、氷花さんから最上のおっさんを通じて帰宅したことやまだ手が離せないことを伝えてあるので知り合いには会えていない。


 現在ララノアちゃんがいるのは地下に隔離された部屋ではなく、族長の屋敷のまた別の離れにある。もうひとつの離れは人族の俺たちが使用中。



「──~!」


『──ぁっ!?』



 部屋に入ろうとすると、琴香さんとララノアちゃんの高い声が微かに聞こえた。俺とアムラスが顔を見合わせて何事かと突入する。



「えへへへ、可愛いですね! やっぱり女の子なんですから、こうして綺麗にした方が良いですよっ!」


『わ、私には、似合わないもん……っ』


『そんな事ないわよララノア!』



 眼前に広がっていたのはララノアちゃんを着せ替え人形のようにしていた女子二人の姿だった。ちなみにララノアちゃんは半裸である。そこに飛び込んだ男2人。


 幸いにして、3人は自分たちの世界に入っており俺たちが侵入したことには気づいていない。俺とアムラスは顔を見合わせて同時に頷いた。……この後の結果はお分かりだろう。


 俺はアムラスの背中を押し、その勢いを利用して3人にバレる前に姿を消してアムラスに罪を着せようと考えた。


 その間にアムラスは俺の足をひっかけて機動力を奪ってくる。慌てて攻勢に転じ、それをかわすと逆にアムラスの頭を抑える形で扉から出ようも必死に床を蹴った。


 しかし俺の肩に凄まじい速度で腕が掛けられる。アムラスが懸命に抵抗していたのだ。この手から逃れられれば俺の勝ち……。


 一瞬で計算した俺はわざと姿勢を低くして、肩を掴むアムラスの腕の力を緩ませた。その隙に再び床を蹴ってアムラスの最後の抵抗から逃れることに成功する。


 すまんアムラス、お前のことはちょっとの間だけ忘れないから……! 心の中でそう呟き、勝利を確信した次の瞬間、俺の肩に再び腕が伸びてくる。くっ、諦めの悪いや──。



「2人とも、なにしてるんですか~?」



 そこにいたのは般若……ではなく俺の肩を掴んでいた琴香さんだった。いつの間にか壁にぶつけられて部屋の隅で悶え苦しんでいたアムラスもいる。


 ヘレスはララノアちゃんを守るようにして抱き抱え、純白の綺麗な背中を自然と見せていた。



「……ごめんなさいわざとじゃないんです」


「遺言はそれですね。では死んでください空君のロリコンっ!!!」



 琴香さんの言葉を最後に俺の意識は途切れた。俺、ロリコンじゃあないもん…………。



***



「で、なんでお着替えとかしてたんですか?」



 俺はアムラスと共に正座させられた状態でヘレスに尋ねる。ジロリと鋭い目を向けられ、少ししてからハ~とため息を吐かれた。



『……あれは、母上が昔着ていた服だったの。だからご利益か何かあるかと思って……それだけよ』



 渋々と言った感じで理由を話してくれたヘレスだったが、その後に再び俺の顔を見てくる。どうしたのっ? 見惚れたっ?



『全く、なんでこんな奴をあたしは……はぁ』


『ともかく、今は族長の作る薬が出来上がるのを待つだけか』



 再びため息を吐かれた俺が密かにショックを受けていると、アムラスが話を戻す。アムラスの言う通り、今の俺たちに出来ることは何も無い。


 だからここにいる必要性もないのだが、それでもずっとララノアちゃんの近くにいることにちゃんとした理由なんて必要ないよな?


 そんなララノアちゃんは琴香さんと遊んでいるようだった。同じ精霊に苦しめられているララノアちゃんだが、琴香さんに対して敵対心などは見受けられない。


 悪い? のは闇の大精霊だと理解しているからだ。理解はしていても納得が出来なくて八つ当たりをする人もいるのに、ララノアちゃんはそんな事はしない。


 やっぱりララノアちゃんは強い子だな。琴香さんともその調子で仲良くしてて欲しい……あと、出来れば俺ともして欲しいんだけど……無理だよなぁ。


 あれ、そう言えば何か忘れているような……? 何だろうか、とっても重要な事のはずなんだけど……。



『そう言えばソラは精霊様……エフィー様に会わなくて良いの?』


「それだぁぁぁっ!」



 ヘレスからの言葉に俺は思わず立ち上がって叫ぶ。エフィーのこと、忘れてたぁぁぁッ!!!

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