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122話~白霊草モーリュ~

『確かに、あるにはあるのじゃが……』


「っ! 教えてくれ!」



 あると言ったクルゴンさんの言葉にあまり乗り気じゃないサリオンさんの反応、おそらくは一度もしくは数度失敗したのだろう。


 地球なら並のS級探索者以上になれる実力ですら無理だったのだ。俺が1人増えたところで何かの力になれるとは思わないが……。



『この森の近く──近くといっても歩いて2日ほど離れてあるが──に、ある薬草が生えてあるのじゃ。その薬草があれば魔力への耐性……闇の大精霊様の力をララノアが耐える事も出来る……かもしれん』


「なるほど……それで、近くにはサリオンさんでも倒せない化け物がいる……ってことですね?」



 くそ、サリオンさんと他のエルフ達の実力差のバランスからA級迷宮って予想してたけど、そのモンスターがいるならS級迷宮に入るかもしれないな。それに多分、そいつが迷宮主だろう……。



『ソラ、それは違うわ』



 するとヘレスが否定してくる。どう言う事だ?



『そこにモンスターがいる事は間違いないわ。でも、実力だけならソラでも倒せると思う』


「実力だけなら……一体何があるんだ?」


『そいつは悪夢を見せてくるの。とっても強烈で、悪趣味な……ね。エルフ達の誰も、それを突破できないの』



 あぁ、そんな特殊なタイプか。前に潜ったD級の迷宮主、大刺毒蜘蛛おおしどくぐもも似たような分類にされるな。あれは毒だったが、今回は悪夢で、強さは関係無いと……。



「……地形やらに問題はなく、モンスター自体の驚異度は低い。厄介なのはその悪夢とやらだけ……。悪夢の種類や発動条件は?」



 そう尋ねると、おそらく経験者の3人が色々と語り出した。まとめよう。俺たちがやる事は悪夢に打ち勝ち、あとは奥にいる迷宮主を倒して、奥にある薬草を採取する。


 モンスターの実力はサリオンさん、俺でも倒せる程度。だがサリオンさんは悪夢に負けたらしい。そんなに酷い物なのか……。


 悪夢はそのモンスターの撒き散らす鱗粉みたいな粉を吸い込む事で発動する。ちなみに風の精霊ソロンディアの力を借りて、こちらには来ないようにしているらしい。


 だが、ソロンディアで鱗粉は飛ばせても、迷宮主の近くには鱗粉が染み付いているので舞っているのを飛ばしても意味がないらしい。


 そして一番恐ろしいのがその悪夢の効果だ。その悪夢は、悪夢に罹った者の中の一番辛い記憶を呼び起こすものらしい。ヘレスが悪趣味と言った意味がわかる。最悪だな……。



「…………わかりました。なら、俺も挑戦します」


『っ! ソラ正気なの!? あれは……最悪の気分になる悪夢よ? あたしや戦士長でも無理だったのに……」


「大丈夫、行かせてくれ。妹を助けたいって気持ちは痛いほどよく分かるからね……」



 多分、ここに烈火さんが居たら話も聞かずに突っ込んだんじゃ無いのかな? 



『……ならば十日後、そこに向かおう。そこでソラ、ワシ、ヘレスの3人で……薬草を採取するのじゃ』



 サリオンさんがそう宣言した。クルゴンさんは俺の言葉に泣くのを我慢しているのが見える。きっと、色々な感情が蠢いてるんだろうな。俺じゃあその気持ちを推し量る事はできないけど……。



「そうだヘレス、俺ばっかり聞いていて忘れてたけど、俺があそこにいた理由も話すよ」


『えぇ、教えてくれる?』


「あぁ、俺とエフィーは闇の精霊の分霊に呼ばれたんだ」


『なんですって!? ……父上』



 やはり驚きの内容だったらしい。ヘレスは神妙な顔でクルゴンさんを見る。



『うむ……おそらくだが、もうすぐララノアの体に限界が来る。それを知らせようとして、エフィー様の契約者のソラの元に現れたのだろう』


「……なるほど。サリオンさん、決行日は変わらずで?」


『変わりはないが……絶対に失敗できないぐらいにはまずいのじゃ』


「なら問題ありません。……必ず成功させますよ」


『そう言ってくれると助かる……』



 サリオンさんが威圧感のある声から、本当にやばい状況だと再認識させられる。俺は自分を奮い立たせるためにそう言うと、クルゴンさんが微笑して頭を下げた。



「そうじゃ、その見た目や薬草の名前は何かの?」



 急にエフィーがそんな事を尋ねてくる。見た感じ怒ってないようだし良かった……。


 て言うかこいつ、もしや成功したら薬草がどんな味がするんだろう、とか考えてないよな? そこまで食い意地張ってないよな? 良薬は口に苦しだぞ?



『そうね。間違えないためにも簡単に説明しておくわね。見た目はクリスタルのような半透明な花が咲いているわ。大きさは大体15センチほどらしいけど……」



 ヘレスが簡単に説明していく。その花が最後に見られたのはもう何百年も前で、今じゃ誰も見た事がないらしい。これも言い伝えられてきた情報だ。だが、俺はその情報を聞いているうちに驚愕の表情に変わっていく。



「待て……待ってくれ。その情報は……もしかして……!」


『ど、どうしたのソラ? 何かおかし──キャッ!』


「名前は、その薬草の名前はなに……?」


 俺はヘレスの両肩を掴み、鋭い視線で食い気味に尋ねる。



『い、痛いわソラ』


「ぁ……ごめん、冷静さを欠いていた……」



 慌ててヘレスの肩から手を離す。少しだけヘレスの顔が赤かった気がするが、それはいきなりで驚き心拍数が増大したからだろう。悪い事をしたな……。



『い、良いわよ別に。名前でしょ? ……白霊草はくれいそうモーリュ……そう伝えられているわ』


「白霊草モーリュ……やっぱり……。やっと、やっと見つけた……!」



 俺はそう呟いた。思えば魔力の抵抗を高める。薬草のその効果を聞いた時点で気づくべきだった。白霊草モーリュは……水葉の永眠病を治すために必要な素材、2つのうちの1つだ。

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