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115話~風の精霊ソロンディア~

寝落ちしてたのでちょい遅れ……。

「サリオンさん、話とは一体?」



 俺は先ほどの出来事を誤魔化すように、サリオンさんの用件について尋ねる。



『そうじゃ……ワシの話は精霊様についてじゃのう。それで今からこの場に呼び出そうと思うが、構わんかの?』



 サリオンさんがそう理由を告げてくる。何でいきなり自分の精霊をこの場に出現させるのかの理由は不明だが……実は興味があるので否定なんてしない。


 だってやっぱり精霊みたいじゃん! エフィーとの琴香さんは人型……と言うか人と変わってる所なんて無いから見分けつかないし……。



「もちろんです」


『では……いでよ、風の精霊ソロンディア!』



 サリオンさんがそう唱えると、ブワリと球状の竜巻が発生する。手を突っ込んだら多分無くなる勢いだった。


 そして風が一気に晴れると、そこには1匹の(わし)がいた。顔から首周りまでは純白、それ以降は茶色っぽい黒色の毛並みをしていた。


 金色のくちばしと鋭く伸びた足の爪がキラリと光る。体長は1メートルも無いな。……まぁ、正確には鷲の姿をした別の生物……精霊だろう。だからエフィーみたいに大きさを変えられる可能性もあるが……。



『ふむ、俺を呼び起こすとはサリオン、何があった?』



 全く羽を動かさずに空中に浮かぶ風の精霊が、不機嫌そうな表情でサリオンさんを睨みつける。



『お久しぶりです、風の精霊ソロンディア様。今回呼び出した件は彼……の契約する精霊様についてです』



 いつもの年寄り口調が直ったサリオンさんが、俺とエフィーを紹介しながらそう言ってきた。



『はっ。俺は精霊の中でも格は上の方だと思っているが、まさか一精霊ごときに呼び出されるとはな』



 ついに顔だけでなく声や態度からも、不機嫌さを隠そうともしない感じと分かるだろう。だが、その態度はエフィーを一目見て変わった。



『それでどの精霊なん…………は? え……え?』



 風の精霊ソロンディアはエフィーを一目見て固まった。戸惑いつつも何かを言おうと口を開くが、出てくるのは言葉にならない音のみ……。



『やはり、そうですか……ソロンディア様の反応を見て確信しました。ソラよ、契約したそちらの精霊様じゃが……精霊王エフィタルシュタイン様に近しい存在じゃな?』



 サリオンさんが確信に近い重みのある言葉で問いかけてくる。……ほぼ正解だ。唯一違うのは……。



『違うぞサリオン。そして今すぐ俺共々頭を下げろ。地に擦り付けろ。ここにいるお方は……精霊王エフィタルシュタイン様本人だ……』


『は? ……な、なんじゃと?』



 風の精霊ソロンディアが空から地に足をつけ、頭をできる限り下がる仕草をして見せた。サリオンさんも最初は戸惑っていたが、ソロンディアの様子を見て慌てて真似をする。



『精霊王エフィタルシュタイン様とお見受けします。俺は風の精霊ソロンディアです。以後お見知りおきを……』


「ふむ、ソロンディアじゃな。覚えたのじゃ!」



 俺とサリオンさんを置き去りにして、なんか因縁とかそんな深い関係がありそうな2人が挨拶を済ませる。今は傍観者の気持ちで軽く聞いておくか。



『ありがたき幸せです……。して、精霊王エフィタルシュターー』


「やめよ。その称号は既に過去の物じゃ。今はこっちにいる空の契約者、エフィーを名乗っておる。正体を知られるのも困る。よって我のことはエフィーと、そう呼ぶようにじゃ」


『はっ、畏まりましたエフィー様!』



 何この光景……鷲が幼女と会話して謝ったりしてるんだけど……? それと敬称は別に許すんだね。



『それでは改めて……エフィー様、今頭の中には聞きたい大量の質問があります。ですがそれらは一度置いておき……よくぞ、戻ってきて下さりました……!』



 ブワァッと大量の涙をソロンディアが垂れ流す。鷲が泣いてるっ!?



「う、うむ……全ての精霊たちには心配をかけたと思うのじゃ。それよりも……主は我を恨んだりはしておらんのかの?」


『恨むなど! 絶対にあり得ません!』


「そ、そうかの……良かったのじゃ。我はてっきり、精霊たちからも反対し、恨まれている物とばかり……」


『そのような精霊や眷属の野郎がいたら俺がぶちのめします! そうだろサリオン!?』


『う、うむ? その通りじゃな……!』



 サリオンさんが急に話を振られ、戸惑いながらも肯定する。う〜む、事情はさっぱり分からん。とりあえず、精霊王だった頃のエフィーがなんかやらかして、それで精霊やエルフ達からは恨まれていると思っていた。


 でも、この反応を見る限りそんな事はなさそうだ。なら、何故エフィーは封印されていたのだろうか? そもそもこんなポンコツでも、結構慕われていただろう王でもあるエフィーを封印できる存在なんて一体……?


 結局俺はエフィーの過去が気になって、肝心の2人の話にはあまり聞き入ってなかった。人と通り話が終わると、俺が口を開く。



「所でサリオンさんの話って、エフィーが精霊王エフィタルシュタイン、もしくはその知人である可能性の確認だった……で合ってますか?」


『その通りじゃな。なんせ人族と契約した精霊様じゃ。怪しむなと言う方が問題じゃ』


「……その言い方。もしかして、普通は精霊は人族と契約できなかったりします? 出来るのは眷属であるエルフだけ……とか?」


「ほぼ正解じゃ。精霊様と契約できるのは眷属である我らエルフと、もう一種族……ドワーフを含むぞ』


「なるほど……ドワーフと、仲悪いんですか?」


『当たり前じゃ。どちらがより精霊様の役に立つのかなどと言い争った時もあったのう……』



 サリオンさんがしみじみしながら呟く。だが、悪いがそれに構っている余裕はない。普通、精霊と人族は契約が出来ないと聞いた……だが今の俺は出来ている。これは……エフィーが精霊王だったからか?


 この場合、精霊王って称号がたんなる格付けをするためのものなのか、実際に驚異的な力を与えたりする重要な地位なのかで色々と変わってくると思うが……。


 まぁ、どちらにしろ、俺がエフィーと契約してる事実に変わりはない。考えても無駄だな。


 その後も話し合いという名の雑談会は続いたが、あまり夜が遅くなると俺とサリオンさんが困るとの結論になり解散となった。



「所でエフィー、風の精霊のソロンディアは自在に現れたり消えたりできるみたいだけど、あれって出来ないの?」



 これでもし出来るとか言いやがったなら、今までの苦労とかを建前にすっごく酷いことしてやる。具体案はないが……。



「ふっ、今はその時ではないのじゃ」


「力が戻り切ってないから出来ませんって素直に言えよ」


「うるさいのじゃ〜!」

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