112話~VSサリオンさん《後編》~
本日2話目
2度目の契約上書きの際、俺は新しい力……エフィー曰く精霊魔法? ってのを手に入れた。名前は【縮地】。簡単に説明するなら、とにかく一瞬だけ速くなることのできる魔法だ。
「これは身体の感覚が少しだけ狂う。じゃから【縮地】を使うときは注意するのじゃ」
と、エフィーに忠告もされたな。今の俺は素の身体能力はA級下位〜中位ぐらいだろう。だが、これを使えばA級上位、もしかしたらS級並みの速さを手に入れることができるらしい。
契約は前と同じスピード系だったが、それに相応しい精霊魔法だろう。最初にサリオンさんと出会った時はどんな相手かどうかも分からず使うのを躊躇ったが、その一瞬でやられてしまった。
だからこそこれは、リベンジマッチと呼んでも良いだろう。この精霊魔法で俺は、サリオンさんに勝つ!
試験で実力は見せたし、どうせ再鑑定の約束はしてしまったんだ。力を見せるのはもう構わないだろう。でも、エフィーのお陰ってことは隠し通さないとな……。
「うぉおォォォォォっ!?!?」
地面を蹴る。足の靭帯に少しだけ痛みが出た。まだ一度も実践では使ったこともなかったし、【縮地】に身体が慣れてないんだろう。
だが、それを差し引いてもすごい能力だわ。だって……勢いがつきすぎてサリオンさんを通り越しちゃったんだもん。変な声出た。
俺は慌てて足を止める。それだけで辺りに砂埃が舞う。くそ、制御できなかったぁ! 師匠には絶対「練習で出来ないことが実践でできると思うな!」って叱責されてたな。
『今のは……まぁ、細かいことはどうでも良い、楽しくなってきたのじゃ。見た感じ扱いきれてはおらぬようじゃが……次はこっちからいくぞ?』
サリオンさんがこちらへと近づいてくる。凄まじく速い。一番最初に出会ったときと同じくらい……本当の本当に本気なんだ……。
だが、前回とは違いブワッと消えて見失うようなことはなかった。今ならサリオンさんとも戦える!
「【縮地】っ!」
再び【縮地】を使う。これを使って速くなれるのは一瞬なので、長時間の戦闘には向かないだろう。
お互いに最高速度で加速した勢いを短剣に、拳に加えて一撃を放つ。その余波が強風を吹かせ、弱目の衝撃波が周りへと散弾する。
「……すご、い……。あの動き、兄貴と同じ、くらいかも……ううん、瞬間的には、多分、上回ってるかも……」
氷花さんが何か言っていたが、内容なんて耳には入ってこない。一瞬で数撃の攻防が行われ、俺は慌てて後ろに下がる。
「【縮地】! がぁぁぁぁあっ!」
『ぬぅぅぅっ!』
再び【縮地】を使う。拳を短剣で受け流してから突きを放つ。足を巧みに使い避けられた。サリオンさんがグルンと体を捻って蹴りを放ってくる。肘と膝で挟むように受け止めた。
「縮地!」
『ぬっ!?』
そして、俺は再び【縮地】を使……わなかった。声に出しただけだ。一瞬だが隙が生まれる。サリオンさんの感覚やタイミングがズレた。
ズレたタイミングで放たれた中途半端な拳の打ち込みを短剣で叩き落とす。続けて叩いた勢いで跳ねた短剣の切先をサリオンさんに向けて放つ。
『……致し方あるまい……〈鎌鼬】!』
鋭く尖った短剣の切先は、このまま行けばサリオンさんの心臓を貫く流れだった。もちろん寸止めはするつもりだったが、そんな必要はなかった。
「……づっあぁぁっ!?」
サリオンさんは小さくそう呟いたかと思うと刹那、俺の短剣を持つ方の腕を主として風の刃が走った。切断などをされるには至らなかったが、無数の切り傷ができ、ビシャッと少し遅れて血が噴き出す。
「くっ!」
『甘いっ!』
「が、は……っ!」
慌ててもう片方の手で殴りかかるが、サリオンさんはその腕を掴んだか思うと、柔道のように俺を投げ飛ばして地面に叩きつけた。殴る時に【縮地】使うの、忘れてた……。
『ほっ! ……これで、ワシの勝ちじゃな……』
「……うぅ、負けました〜……」
サリオンさんは最後に拳のストレートを俺の顔の横の地面に放ち、幾重もの亀裂を入れた所で終了となった。




