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100話~通訳ってめんどくさいね、本職の人感謝!~

 エルフの里は森の中に存在していた。今まで見た中で一番大きな巨木を中心として、周りに生えた木の中をくり抜き、その中に作られたログハウスが一番適した呼び方だろうか?



『アムラスたちは精霊様とその仲間の人族が1ヶ月、ここに滞在することを伝えよ。精霊様はこっちじゃ』



 サリオンさんがアムラス達にそう命令し、アムラス達は『分かりました』とだけ反応し、それぞれ里の何処かへと散って行った。


 サリオンさんとヘレスは残り、そのうちサリオンさんが主に琴香さんを手招きで呼び寄せる。そう言えば言葉は自動で通じるらしいが、1ヶ月とかの単位も反応を見るに、別の単位で通じてるらしいな。



「あの〜、私は初芝琴香ですので、精霊様ではなく初芝と呼んで欲しいんですけど……」


『む……それが精霊様のお望みとあらば……では、ハツシバ様と』


「あ〜、ではそれでお願いします」



 道中、サリオンさんと琴香さんとの間でそんな会話があった。琴香さん、精霊様って呼ばれるの嫌だったのかな……?



「サリオンさん、今向かっている所は一体どこなんです?」


『ワシ達エルフの長、族長と呼ばれる者じゃ。ソラ達におけるそこの男に当たる』



 サリオンさんが大地さんを指さす。大地さんはいきなり指を刺されて多少驚き身構えていたが、俺が事情を説明するとフゥ、と息を吐いた。


 それにしても族長か。サリオンさんも初老だし似たような役職に就いてると勘違いするけど、こう見えて戦士長なんだよな……。


 にしても族長と戦士長だと前者の方が多分偉いよな? なら、族長が俺たちを閉じ込める……なんて言ったら捕まってしまう可能性もある。気を付けておかねば……。



『そう気を張らんでも良い。族長とは言え、ワシから見ればこの里のエルフ達は皆等しく赤子じゃからの』


「っ……了解です」



 するとサリオンさんが俺の方を見ずにそんな事を説明してきた。俺の心の中を読まれた? そんなにも分かりやすかったのかな? いや、雰囲気とかでカマを掛けた可能性が高いか……。


 それより族長を赤子って……つまりサリオンさんに方が年上って事か? いや、実力の事を言っているのかもしれないな。


 どちらにせよ、形式的には族長の方が上だが、実際は戦士長サリオンさんの方が上……の可能性が高くなってきたぞ。



『人族、今から会う族長はこの里で5番目に偉い。丁寧に対応しろ』


「了解、エルフ族」


『あたしの名はヘレスだ!』


「俺の名前は空だ」



 ヘレスが高圧的な態度を取ってきたので、俺も似たような態度で返す。すると気に入らないと言わんばかりの表情で言い返してきたので、俺も同じように返した。


 て言うか族長なのに5番目なの? てっきりサリオンさんが1番で族長が2番だと思っていたけど……他にも誰かいるのか? いや、予測も何もできないし、今は置いておこう。


 それにしても、なんでこんなに彼女に腹が立つんだろう? ……あぁ、なんか藤森や松原を思い出すんだ。理不尽に高圧的な態度に面影を感じてしまう……。


 いや、ヘレスからすれば俺たちは侵略者だ。でも上の人間ーー正確には人間じゃねぇけどーーに無理矢理その人を自分たちの里に連れていかなきゃいけない。


 うん、まぁキツく当たってしまうのも無理はないな。でもだからってその態度をそのまま受け取るのは嫌だから、こうして言い返したのはありだったよな。



『ちっ……ソラ、くれぐれも気を付けるんだな』


「忠告ありがとう、ヘレス」

 

『ななっ!? ……ふんっ!』



 改めて名前を呼んでくれたので、普通にお礼を返すと何故かヘレスはあんぐりと口を開け、軽く頬を赤く染めながらそっぽを向いてしまった。何故だ? まぁ、先ほどまでよりはまともな扱いだし良いか。



「は〜、へ〜、空君って本当に……ですね〜」


「すみません琴香さん、なんて言ったのか聞き取れなかったんですが……」


「何も言ってないです! ただ……察してください」



 俺に一番難しい要求してきたよ!? 俺、ヘレスに対しておかしい対応したっけ? 確かに最初はキツく当たったけど、それはお互い様だし……。



「大丈夫です! 琴香さんにはあんな態度、絶対取ったりしませんから!」


「……は〜ぁ……」



 頭を抱え、俺を冷めた目で見てため息をついた琴香さんを見て、俺は多分間違った返答をしてしまったことだけ理解できた。



『ハツシバ様、ソラよ。もうそろそろ着く。そちらのリーダーとお主らの計3名を族長と会わせるぞ』


「ーーだそうです」


「了解した。残りの人たちは近くに待たせておけば良いのですか?」


「ーーだそうです」


『客間が用意されておる。そこに少しの間、待機しておいとくれ』


「ーーだそうです」



 いや、通訳疲れるんだけど……。自動翻訳を伝えるだけでこれだと、本職の人ってすごいなぁと実感できるよ。



『ここじゃ』



 サリオンさんの言葉で立ち止まり、俺たちは族長のいる場所へとだたどり着いた。

 受験生なんで不定期更新に変更です。ですが祝100話達成! と言うことで、明日も更新します。

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