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第25章 スーパーヒーロー

4人が地下室へ戻るとそこには魔女に何度もぶたれる桃の姿があった。

「いたっ!!!いたいよ!!!ママやめて!!!!」

泣き叫ぶ桃に魔女は容赦ない一撃をくらわす。

それを見た心琴は声を張り上げた。

「やめなさあああああああああい!!!!!」

「え!?心琴ちゃん!?」

桃は驚いた様子だった。

そして、海馬も鷲一も心琴に気が付く。

「・・・元の心琴に戻ってる・・・?」

「その・・・ようだけど・・・。」

「な・・・なんで戻ってきたんだよ、朱夏ちゃん!?」

「心琴・・・逃げろって言ったじゃないか・・・!!」

鷲一も海馬も殴られた跡がある。

男二人はかなり体を張っていた。

その目の前には杏と死神が悲しそうな顔で立っている。

「また・・・また不本意に死神君に攻撃させてたんだね!!許せない!!」

心琴が魔女をにらみつけた。

それを聞いた魔女は嫌らしく笑った。

「はぁん!?何しに戻ってきたのかなぁ?」

本当はエリの予知夢と逆の行動に出ているだけ・・・とは言えず、心琴は胸を張ってこう言ってしまった。


「・・・助けに来た!!!!みんなを!!!!!」


心琴は自信満々の笑顔だ。

ありったけの虚勢だった。

「はぁん!?あんたみたいな能力も持たない小娘が・・・何をするっていうんだね!」

そして、心琴は魔女を無視してこう付け足した。

「私・・・桃、あなたも助けたい!!」

「・・・え・・・?」

桃は魔女にぶたれた顔をさすった。

涙があふれてくる。

「はぁん?何を言い出すかと思えば・・・。」

魔女の手には首輪が握られている。

「まぁいい。あの方はD-15をご所望だ。丁度いい!!」

そして首輪を思いっきりエリに投げつけた。

「あ!!!」

「エリ!!!危ない!!!!」

咄嗟に体を張って、エリを守ったのは連覇だった。


ガコン


連覇の首に首輪が付いてしまう。

「はぁん?ガキに付いたか・・・まぁ、体を張って守るくらいだ・・・。きっとエリの事が好きなんだろ?」

「連覇!!!」

エリが悲痛な声で叫んだ。

「え!?えええ!?ナニコレ!?なんなの!?」

当の本人は困惑するばかりで一生懸命首輪を取ろうとしている。

「連覇少年!?」

「どうしよう!?連覇君が!!」

首についた首輪は外そうとするが全然取れない。

魔女は嫌らしい笑みを浮かべる。


「ねぇ、坊や。あんたの一番大切なのは誰だい?」


「え・・・・?」

途端に首輪から光の紐が出てくる。

「まずい・・・!このままでは三上の時の二の舞に!!」

皆がその光の行く先をエリだと思っていた。

エリもその光の紐が自分につくのを覚悟した。

・・・しかし、その紐は予想外の方向へ進んでいった。


「え・・・?連覇の・・・ポケット?」


連覇は慌ててポケットを探る。

そこには・・・・連覇の「一番大事なの」があった。


「ああああああああああああ!!!!!!レンパの!!!レンパの五芒星レッドがあああああああ!!!!」


「・・・・。」

「・・・・は?」

「・・・え・・・?」

皆が固まった。

連覇の首から伸びた光る紐・・・それは連覇の大事にしている五芒星レッドの首にぐるぐると巻き付いていた。

「は!?なんでおもちゃ!?」

「人でもない・・・。」

「生き物でさえないよね!?」

皆は意味が解らない展開にキョトンとするばかりだった。

しかし、これを見てこの首輪の「本当の力」に心琴は気づいてしまった。


「あああああああ!!!わかった!!!私、解っちゃった!この首輪の攻略法!!!」


心琴は大声で叫んだ。

「やめろ!!いうな!!!」

魔女は顔を真っ青にしている。

それでも心琴は大声でからくりを暴露する。

「この首輪が紐をくっつくのは・・・「大切な人」なんかじゃないんだよ・・・!!!」

「ど、どういう事ですか!?」

朱夏が驚いた表情で心琴に聞いた。

からくりが徐々に明らかになってくる。

「首輪が誰かについた時、つけた相手に必ず「一番大事な人は誰?」って聞いてたよね!!!」

「あ・・・確かに!!!」

「だから、大切な人が真っ先に頭に思い浮かんだんだ!聞かれれば誰だって大切な人を思い浮かべるからさ。」

皆にも心琴の言いたいことが見えてきた。

「って事は・・・これって・・・。」

「そう!!首輪の紐が向かう先って、「一番先に思い付いた」物や人に反射的にくっついていただけなんだと思うんだ!!!!」

「ぐ・・・ぐむむ。」

言い当てられた魔女は苦虫を嚙み潰したような顔をしている。

「つまり・・・。人でもない、生き物でさえない五芒星レッドの人形に首輪をつけちゃえばさ・・・!!」

ここまで心琴が言うとみんなが一斉に口を開いた。


「「「誰も人質にならないで済む!!!」」」


魔女の顔は青ざめるのを通り越して真っ赤になりつつあった。

それを聞いた海馬が大声を出す。

「いいか、みんな!!!もし首輪を付けられたら、「五芒星レッド」を思い描くんだ!!!」

「あ!!!海馬お兄ちゃんヒドイ!!!僕のレッド!!!!!」

連覇のスーパーヒーローはみんなの生贄として捧げられることになった。

「すまん、連覇少年!!!レッドには僕らを守ってもらう!!許せ!!」

「う・・・うわーん!!!し・・・仕方がないなぁ!!!」

連覇は泣きながらも承諾してくれる。

「みんな・・・勝機が少しだけ見えたね!!!」

心琴がみんなに言うが、魔女はそれを一蹴する低い声でうなりを上げる。


「忘れてないかい?既に杏の首輪が・・・死神とつながってしまっている事をね・・・。」


死神は悲しい顔をした。

また命令が来るのは明らかだった。

「みんな逃げろ!!!首輪は気にしなくて良くなったけど・・・でも死神はマジで強い!!!」

先ほどまでボコボコにされていた海馬は焦ってそういう。

「命令されたら動かざるを得ないから!!!逃げて・・・お願い・・・。」

杏も祈るようにそう言った。

死神は無言で鎌を出す。


「桃・・・!!桃も行こう!?」

心琴は桃に手を伸ばす。

「わ・・・私・・・!!!」

桃は伸ばされた手を握らなかった。

「ママがいなかったら・・・独りぼっちだよ・・・。」

「そんな・・・。」

桃はがっくりと肩を落として床を見る。

「私の事可愛がってくれるの・・・ママだけだもん。」

「桃・・・。」

こんなに打たれても・・・桃の心にはいまだに魔女が住み着いている。

「今まで生きてきて、本当のお母さんもお父さんも私を気持ち悪がってた。でも、ママは私の事・・・最高だって・・・言ってくれたの。」

「そうよ・・・あなたは最高の娘。何度だって言ってあげる。」

魔女もその様子に満足そうにそう言った。

「だから私・・・ママの事・・・。本当のママだと思うようにしてたのに・・・。」

ここまで言って桃は魔女に向き合う。

「ママは・・・本当に私の事利用してたの・・・?」

桃色の瞳は真剣そのものだ。

うるんだ瞳はとてもきれいだった。

「桃・・・私の可愛い桃・・・。あなたはどっちを信じるの?ずっと一緒だった私?それとも昨日たまたまここに来ただけのそこのガキかい?」

魔女はこれでもかというくらい優しい声で桃に訴えた。

「ママ・・・。私・・・ママを信じたい。でも・・・」

そう言いかけた時、魔女はさらに言葉をかぶせてきた。

「私ならあなたをさらに最高にして上げれるわ。」

「さらに・・・?」

桃はその言葉に眉をひそめた。

「そこにいるD-15の能力をあなたに取り込むのよ!!!」

「・・・え・・・?」

思ってもみない言葉に桃の眉はもっともっとひしゃげていく。


「そしたらあなたは・・・もっともっと最高の娘になれるのよ!!」


魔女は最高のご褒美を捧げるような口調で桃にそう言った。

その一言で、桃は目が覚めた。

怒りがふつふつとこみあげてくる。

「・・・いい・・・。」

「え?」

「いい加減に・・・して!!!私はもう!!!あなたの実験台じゃない!!!!」

桃の髪の毛は地面と反対方向に逆立っていく。

「も・・・桃?」

魔女からしたら喜んでもらえると思ってた。

けれども、それは、桃にとっては拷問に近い非情な行為。



「私・・・今日で・・・あなたの娘辞めます!!!!!!」



桃は高らかにそう宣言するのであった。



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